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ゲオルグ=レオンハートの鹿野慈によるシングルピンナップクリスマス2019(縦)
ゲオルグ=レオンハートの鹿野慈によるシングルピンナップクリスマス2019(縦)
イラストSS
氷の崩れる音がした。
夜。窓から覗く外の光景で流れ星が瞬いた気がして。
しかしその光景は――夜も深くなり、うつらうつらとしつつある羊のジークの目には留まらぬ。
ゲオルグ=レオンハート。
ウィスキーを片手に、弄ぶ様に傾ける彼の世界にだけ映った刹那。
ああ、今宵は良い日だ。
シャイネンナハトの祝福の日であるが故か――? 気分もどことなく高揚する。
たった一つのランプを隅に。部屋の暗闇を楽しんで。
氷の崩れる音を耳に、喉を潤す。
彼の眼前にはザッハトルテ。皺一つなき完璧な塗装のチョコレート・ケーキ。
口に運べば芳醇で。かつてなき程の絶品で。
「――ふ、む」
ふと。ジークの鼻をつつく。手のりサイズ程度の羊の彼も一口食してみないかと。
眠気が勝るのか、少し揺れるだけでその瞼は開きそうにないが。
「全く。残念だな」
今日と言うこの日を堪能出来なくて、と言葉を紡ぐ。
一年に一度。冬の祭典、祝福の日。とびっきりのザッハトルテもここにあるのに。
安眠の価値を知ってしまったか。睡魔に溺れるも、まぁ悪くはない事だが。
「――」
もう一度ウィスキーを口に運ぶ。今度は口の中で、少し楽しみながら。
喉に、運んだ。
外を見る。輝かしき外を。誰もが安寧の中にある外を。
また一つ。流れて消える星が――瞬いていた。
※担当『茶零四』