イラストSS

　シャイネンナハト。と、名を付けられた夜の街でした。
　月を隠す厚い雲が空に広がっていて、そこからふわり、ふわりと、粉雪が散っています。
　雪の結晶が街灯にきらめいていて、こういった光景を幻想的だ、と、そういうのだと思いました。
「……ふふ」
　思わず漏れた声に、繋いだ手からぴくりとした感触が伝わります。
　見上げる視線を隣に向けてみると、翠の瞳がこちらを覗いていました。その顔は微笑みです。
「リディアは今、楽しいかえ？」
「勿論です、今、とっても楽しいです」
　ええ、楽しいのです。
　雪の降る街を、こうして、誰かと手を繋いで歩く。
　それだけのことが、たまらなく楽しく感じます。
　計画を立て、お買い物をし、これからカレンさんのお屋敷でパーティーですから。ええ、今も、これからも、楽しいのは間違いないのです。
　だから。
「──あ」
「お」
　弾みかけた足が、固い感触を得ました。と、同時に、勝手に足が前へ滑ります。
　頭が倒れて、一瞬の浮遊感を感じ、それから。
「っと、危ないぞ？」
　繋いだ手を、強く引かれ、転ぶ前に救われました。
「えへ……ありがとうございます」
「クリスマスに風邪をもらうわけにはいかぬからな、気を付けるのじゃ」

※担当『ユズキ』