イラストSS

「なにこれ」
　ルフナが漏らした第一声はそれだった。
　なんだ、これは。わからない。理解ができない。
「うわぁ先輩ステキ！ とっても似合ってるよ！」
　鳩尾からパカダクラを飛び出させた姿を似合うだと？ そんなわけないだろう？ え、本気で言っているのか？
　後から後から湧き出してくる感情は、にこやかな善意100%笑顔のフランに言えるわけもない。
「………………うん」
　か細く捻り出した、ありがとうの言葉が溶け出す。
　というか。
「そっちもそっちでセンスがおかしい……！」
　クリスマスカラーだ。
　フランの着たセーターは赤い。襟口なんかは緑色で、それだけならきっと彼女に似合っただろう。だがそこには、デフォルメをしくじったトナカイの顔面が張り付いていて、白抜きされたツリーにあちこち刺繍されたMERRY CHRISTMASの文字。
　極めつけは、電飾だ。
　セーターに電飾？ どうつけたの？おかしくない？
「先輩まさか……気に入らなかった……？」
　だが言えない。何故ならこの二枚のセーターは、フランの母が拵えたものなのだ。
　言えない。
「べ、別に、そんなこともない」
　彼は今日、思いやりの嘘という事を、強く学んだのだ。

※担当『ユズキ』