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新田 寛治の佐東敏生による2人ピンナップクリスマス2019(縦)
新田 寛治の佐東敏生による2人ピンナップクリスマス2019(縦)
イラストSS
●喧騒/静寂
頭上には星。
ちらつく輝きは冷たい結晶、触れれば消える皮肉な影。
「――――」
地上よりずっと空に近い神殿で嘆息すれば、細やかな吐息は静かなる聖堂に刹那の白を彩るのみ。
……十二月二十四日が地上でシャイネン・ナハトと呼ばれている事は知っている。元は遥かな昔、混沌の凍土で長く続いた聖女の奇跡のお伽話であると。得意気な『彼』は繰り返し私に教えてくれたものだった。
――なあ、ざんげ。シャイネン・ナハトだぞ。
そんな日なんだ。だから街もすごいんだ。
毎年聞かせるものだから諳んじる事さえ出来るような物語を、毎年趣向を変えて聞かせてきた。瞳を輝かせた少年(かれ)の声色は楽しく、聞いているだけでそれが人々にどれだけ特別なものか良く分かった。嬉しかった。
――だから、俺と行こう。
繰り返された結びの言葉を一体何度聞いただろう。
曖昧に笑って、首を振るしかなくて――彼に降り積もる失望を何度見ただろう。
しんしん、しんしん、しんしんと。
もう二度と――きっと、二度と。
あの少年の訪れる事は無い伽藍に思い出の雪が積もる。
「……何時から、だったでごぜーましょうね」
きみが、こなくなったのは。
何となく唇を突いて出た言葉は、私の懺悔。
ざんげの懺悔は本当に。馬鹿馬鹿しくなる位に遅過ぎる。
※担当『YAMIDEITEI』