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イラスト詳細

雪村 沙月の伊砂によるシングルピンナップクリスマス2019(横)

作者 伊砂
人物 雪村 沙月
イラスト種別 シングルピンナップクリスマス2019(サイズアップ)
納品日 2019年12月24日

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イラストSS

 目が冴えるほどに、キリッとした冷気が頬をうつ。
 まだ陽が昇ったばかりの早朝。雪村 沙月(p3p007273)は静々と摺り足で縁側を歩いていた。

 某所にある日本庭園。そこには活気に満ちたシャイネン・ナハトの喧騒も、深雪に音が吸い取られて届かない。

 しんとした静寂の中、耳をすませば時折聞こえてくるのは、そこに息づく自然の音。
 空を飛び交う鳥の鳴き声。木の上から雪が落ちる、籠ったような落下音。今しがた聞こえてきたのは、庭池に張った薄氷が陽射しに溶ける音――かもしれない。

(こんなにも気を張らずに過ごせるのは、いつ振りでしょう)

 師走の頭頃に女王イザベラが『大号令』を発してからというもの、幾度も海洋へと出向き、時に身を危険に晒しながらも、凛として困難に立ち向かい続けてきた沙月。

 そんな彼女が束の間の休息に嗜んだのは日本茶だった。
 煎茶の適温は80度。沸騰したままのお湯では熱すぎて、茶葉が思うように開かない。
 お湯を湯飲みに入れて縁側へ運び、湯冷まししてから急須の方へ。
 後は振らず回さず、お茶の甘味と旨味が広がっていくのを、庭園の景観を楽しみながらじっと待つ。

 嗚呼。この空白の時間こそ、最高の贅沢。

 口にしたぬるめの一杯は、優しい甘さをもって沙月を癒す――。

※担当『芳董』

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