イラスト詳細
アニー・メルヴィルの伊砂による2人ピンナップクリスマス2019(縦)
アニー・メルヴィルの伊砂による2人ピンナップクリスマス2019(縦)
作者 | 伊砂 |
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人物 | アニー・K・メルヴィル 零・K・メルヴィル |
イラスト種別 | 2人ピンナップクリスマス2019(サイズアップ) |
登録されているアルバム | |
納品日 | 2019年12月24日 |
10
イラストSS
●カイロスの祝福
時の流れというのは実に無情だと思う――零とアニーは大変に楽しく聖夜を過ごし帰路につかんとしていた。
名残りは余りにも惜しく、唯の友人で済ますには余りにも親密な彼女との別れは惜しい……それでも過ぎ去る時に逆らわず。
もう帰ろう――そう零が持ち掛けた時だった。
「……少しだけ」
その時、零の背にアニーはしがみ付くように顔を埋める。
寒くないように、と買ってあげて、今も大事にしてくれているコートの袖を頼りなく、微かに震える手で掴みながら。
「あとちょっとだけ……このままでいさせて?」
この一時の温もり、一時の身体と心の温もりを、未だ離したくない……時よこのまま止まってしまえと。
それでも無情にも深まる夜の冷たさを埋めるように、しがみ付かれ頬を微かに染めていた零は手袋を外すと、袖にしがみ付くアニーの掌に自らのそれを重ね。
「……」
幾億の言葉よりも、手袋の隔たりを剥いだ素手の温もりと、微かに打ち合ったお揃いの、薄黄色石の腕輪の音は零の穏やかな微笑みの言葉を強く語る。
大丈夫、行かないよ――と。
深まっていく聖夜の時、刹那すらも惜しむようにより深くアニーは零の背に顔を埋めていき。
過ぎ去り往く時は、何処までも穏やかに優しく二人を見守っていく。
※担当『表川プワゾン』