イラストSS

「──ピンク・ホワイトな夜ね」

　隣に座っていた女が不意にそう呟いた。視線を送れば、まず目につくのは鮮やかなドレス。下から視線を上げていくと──おっと、このような場ではあまり凝視するものじゃない。
　意識的にそこを通り過ぎると、シャイネンナハトらしいブローチ──いや、チョーカーのアクセサリーだろうか──が目に入った。女の髪は深い緑で、柊の髪飾りが耳の上で煌めいている。美人な幻想種の女性だった。
　ピンク・ホワイトな夜？　と言葉を反復すると、彼女は頷いた。
「こんな夜くらいはね、エジプシャン・ブルーなことを忘れてしまうのよ」
　また彼女の口から不思議な言葉が出てくる。恐らくは色彩の名前だろうが、それが何を意味するかまでは正確に読み取れない。
「サックス・ブルーね」
「え？」
「あなた。そんな表情をしていたわ」
　いや誰がじゃなくてどういう意味かの『え？』だったのだが。だがしかし彼女は気にした風もなかった。
「あの、あなたは一体……」
「私？　私はプルー。しがない情報屋よ」
　こんなにも個性の強い人物、一体何者なのか。問えばプルー・ビビットカラーはさらりと返した。ようやく最初から最後まで理解できる言葉である。
　ああ、もっと話しやすければ良いのに──。

※担当『愁』