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リースリット・エウリア・ファーレルの綾瀬 みゆきによるシングルピンナップクリスマス2019(縦)
リースリット・エウリア・ファーレルの綾瀬 みゆきによるシングルピンナップクリスマス2019(縦)
イラストSS
シャイネンナハトの喧噪も届かない、町外れの教会。
細やかな装飾の施されたステンドグラスは、至極華やかでありながらも、同時に肌を刺す外の冷気を存分に教会内に伝える凶悪さを兼ね備えている。
美しく、静かで、冷え切ったそこで。
リースリットは跪き、目を伏せ静かに祈りを捧げていた。
床に付いた膝は布に覆われていないが故に、祈れば祈るほどその身体を冷たく蝕む。それでも彼女は身じろぎ一つせず、頭を垂れ祈り続ける。
その祈りには、己のことなど一片もなく。
祈りは全て、レガド・イルシオンの東部――きっと今頃は聖夜に大賑わいの故郷、ファーレル領の民と、家族の為にあった。
(領民の皆さんは、息災でしょうか。
王都では流行病もあると聞きます、どうかお気を付けて。
お父様、盗賊退治も程々に――怪我などなされないように)
領主自ら賊を討ちに行く父の姿を思い出せば、祈りにほんの少し笑みが零れ――直後に浮かんだ顔に、唇を噛み締める。
腹違いの兄、姉、そしてきっと自分を疎ましく思う義理の母。
それでも、祈るは『健やかであれ』と。
そして、何より祈るのは実母――『風詠み』アスティアの無事。
(お母様、今何処にいるのでしょう)
行方の知れぬ母に、せめて聖夜の祈りを。
――輝かんばかりの、この夜に。
※担当『飯酒盃おさけ』