イラストSS

　幻想王都メフ・メフィートの喧噪も息を潜める、シャイネンナハト。
　ジルバプラッツの大通りからサンミシェルカフェを左手へ。
　細い通りへ足を踏み入れると、特徴的な飴色の石畳は素朴な灰色へと移ろいます。
　あちこちのお店にリースが飾られていますね。
　窓からこぼれる優しい光は、雪に濡れた石畳を暖かな色に染めています。

　遠くに見える大きなツリーは、エイミル子爵夫人の自信作。
　今年は少しだけシックな装いで、きっと雪化粧がよく似合うように――

　レストランの入り口に、小さな雪だるまが見えます。ほら。にっこり。お父さんに似せたのでしょうか。
　親子連れが出て行きます。家族で食事を楽しんでいたのでしょう。
　男の子がはしゃいで、今夜は素敵なプレゼントがもらえるといいですね。
　ドアに飾られたリースが揺れて「またのご来店をお待ちしております」なんて。

　おやおや、猫が駆けていきますね。何か見つけたのでしょうか。
　裏口から手が伸びて――レストランのお父さんですね、だって雪だるまにそっくり。
　握っているのはターキーの骨のようです。ずいぶんお肉がのこっていて、素敵なお裾分けになりそう。
　猫が骨を咥えて一目散に走って行きます。きっとこれから家族の団らんを楽しむのでしょう。



　幻想の街角から

　 ―終―

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※担当『pipi』