イラスト詳細
オーガスト・ステラ・シャーリーのhoujohによる2人ピンナップクリスマス2019(縦)
オーガスト・ステラ・シャーリーのhoujohによる2人ピンナップクリスマス2019(縦)
イラストSS
古びた墓標の下に誰が眠っているのか、語られることもなく。
傍らにひっそりと佇む屋敷に気付く者は少ない。
ただ一面の白に覆われた、その夜――シャイネンナハトはこの辺境にだって等しくやってくる。
今宵、魔女の屋敷に居るのは二人。
窓の外に降りしきる雪と冷気は、室内までは届かない。
暖炉が時折ぱちりとはぜながら、暖かな空気を冷えた窓まで運んでくる。
揺らめく炎の灯りが二人の影を窓ガラスに踊らせていた。
かすかにたゆたうのは紫煙と茶葉、それから薪の燃える香り。
ページをめくり字面を追う。読んでいるか否かと言えば、読んではいた。
ふと。オーガストは書にぼんやりと落としていた視線を上げる。
カップに指をかけ。金環を戴く秋摘みの香りに、まずは人心地。
背に感じるのは、すいと息を吐く音。
それから――頭の後ろに感じるほんの少しの体温。安らぎに抱かれるような幸福感。
永遠に続くかと思える柔らかな静寂は、心地よく。
「そこ、寒くないですか?」
「いや、問題ない」
「そうではなくて」
さりっと紙巻きの火を消して、クライムが僅かに肩を寄せる。
静かな夜はゆっくりと更けゆくまま――
※担当『pipi』