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カイト・シャルラハの南極れごによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
カイト・シャルラハの南極れごによる2人ピンナップクリスマス2019(横)
イラストSS
「おまえに見せたいものがあるんだ」
日が落ちて街にポツリポツリと明かりが点り始めた頃、沖へと漕ぎ出す船が一隻あった。
世間はシャイネンナハトの祝いで忙しいようで、彼らには気づかない。
いや、むしろそれは好都合だ。
船が流されぬように錨を下ろした彼はニヤリと笑った。
普段は体験できないような、特別な輝かんばかりのこの夜。
目の前できらきらと目を輝かせている彼女は果たして、正しく理解しているのだろうか。分からなかったらそれはそれでいいのだけれど。
さぁ、そろそろ食事にしよう。
せっかくの特別な日。特別華やかで、美味しくて、楽しいディナーを。
彼女の口許にソースがついているのを優しく拭いてあげれば、彼の胸元にこぼれ落ちた野菜を指摘して『おたがいさまだね』と笑いあう。
船室を照らすろうそくの明かりと、大切なあなたの笑顔さえあれば、寒さなんて感じない。
幸せだ、とても。
けれど今回の目的は海上でのディナーではないのだと彼は言った。
さぁ、甲板に出よう。コートとマフラーはしっかりしたかい?
風に飛ばされないようにしっかりと捕まっていて。
「わぁ……」
開いた扉、その先には満天の星が夜空に明るく光輝いていて。
静かな水面は心地いい波の調べと共に、まるで鏡のようにそれを写し、手を伸ばせばもしかしたら届きそうなほどだった。
「輝かんばかりのこの夜に」
「うん……、うん! だいすきだよ!」
彼の頬に寄せられた小さな温もりを、二人はきっと忘れない。
※担当『樹志岐』