イラストSS

　窓の外に雪がしんしんと降り積もる。雪は全てを白き静寂に塗りつぶす。それは総て遍く平等に、隔て無く降り注ぐ。どこかの隙間を風が吹き抜けたのか、か細いフルートのような音が遠くで聞こえた。
　今日はシャイネンナハト。真か偽か、聖女が祈りによって戦いを終わらせたと伝わる夜。願いを捧ぐ聖なる夜だ。そして同時に、混沌に権現し、自我を得て、既知を憎悪し、常に嗤いを湛え、恐怖を形作る『物語』が発生した日だ。愛らしく、魅惑的な肉と、機知に満ちたユーモアを持ち、穏やかな笑みを浮かべ、愛を綴る『人間』が誕生した日だ。
　今宵、ジョセフとオラボナ、愛し合う二人は黄金色の光灯る暖かな屋内で穏やかな時間を過ごしていた。細かなビーズが詰められた柔らかなクッションの上、身を寄せ合い甘いケーキに舌鼓を打つ。
　炎柱の緑の瞳は赤い月を鷹揚に見つめ、突き匙に乗せた甘味を差し出す。魅惑の肉はどんなクッションよりも軟く、身を支え包み込む。
「あいしてる」
　ケーキよりも、地上のどんな甘味よりも、甘い言葉を紡いだのはどちらからだったろうか。

　輝かんばかりのこの夜に！
　人間よりも古く、人間よりも生きながらえる定めの古の儀式のように、この愛を育み続けますように。

※担当『ゴブリン』