イラストSS

　すぽぽーん、と本当に何もかも脱ぎちらかしてしまいそうだったソアを必死で止める時、ノースポールの頬は赤みを帯びるのを禁じ得なかった。
「あーっ、そういえば水着だけは着ておくんだったっけ」
「そうして下さい……どうせ隠れることだとはいえ」
　小声で、嘆願するように囁くノースポール。どうして自分がこんなことに巻き込まれたのかは今でもさっぱり判らないけれど、どこかで妙なことを耳にしてやってみたがった言いだしっぺがどういうものか解ってないのは、それ以上に困惑させられる。
「まあノースポール様。ソア様は人間界を学んでらっしゃる最中なのですから、多少のことは目を瞑って差し上げるのも立派な騎士様の勤めですわ？」
　借りてきた練達製の魔導カメラの前で、シスター・テレジアがそれらしいことを言う。なるほど……と思わず納得しかけて、ノースポールはテレジアの手が、ソアが完全に一糸纏わぬ姿になるのに備えてシャッターボタンに伸びたのを見咎める。
「ダメです。そんなことを許したら、ソアさんの写真を無加工で闇市に流しそうなシスター様がいますから」
「ちぃっ、ですわ！」
　そんな遣り取りをするノースポールとテレジアの言葉の意味を、ソアはまだなんとなくしか解らなかった。でも……何やら楽しそうだということと、けれども彼女らも服を脱いでくれなくちゃ、自分の計画が進まないことだけは理解している。
「二人とも、早く、早く！」
　胸の中の期待を御しきれずに急かす。二人も応じてソアへと続く。
「待ってください……今、準備します」
「わたくしは……一瞬ですわ！　はいバサァ！」

　三者三様の際どい水着姿に身を包んだ三人は、改めて魔導カメラの前に立った。それだけでも随分と露出度の高いものだが、それがカメラを通した後は、水着の部分だけが塗り潰されて、全裸のように見える写真になるのだ。
　人類の生み出せし神秘に興奮を隠せない者。恥ずかしさと興味深さが綯い交ぜになる者。それから、どんな風に映れば写真が高く売れるかの検討に余念がない者。三者三様の表情とポーズを見つめるものは、やけに複雑な機構で実現されたセルフタイマーがカウントダウンを続ける、魔道カメラのファインダーのみ。
　ほんの僅かのはずの待ち時間が、やけに長いもののようにも感じられた。期待と不安が混ざり合うせいだろう。
　……でも、その一瞬だけは最高の笑顔になるように意を決し。

　３、２、１……パシャッ！！！

※担当『るう』