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煌めく街夜空
イラストSS
シャイネン・ナハトを讃える歌が流れている。眼下の街の色んな場所から聞こえてくる。楽しそうな話し声も、幸せそうな笑い声も、聖歌に乗って、嫌でも耳に届く。
しんと静まり返った暗く寂しい木の上で、リオーレはひとり、枝に腰掛けてイルミネーションの光に彩られた街を見下ろしていた。
胸の中には捨てなければならないものがたくさんある。その大きさにたじろぎ、リオーレは夜空を仰いだ。
ああ、孤独を囲う少年に、聖なる星の座標は尋ねないでほしい。
その数字は宇宙最古の謎だ。
追い求めるならば、すべての悲しみと秘密を集め、月と星の間に広がる深い闇に沈めてなくてはならない。
リオーレは温もりを求めて眼下の街へ腕を伸ばした。
光の粒を掴んでも、手を開いてみると何もない。指の間をむなしさが漂う。
(「ひとりぼっちで時間だけがどんどん失われていく。ボクがボクでいられる、暖かい場所はどこにあるの?」)
夜明け前の薄闇を宿す目が、星の瞬く空を彷徨う。
「寂しいよ」
ぽつりと泣いた。
遠い星から届く風が、リオーレの頭を優しく撫でる。ひとりぼっちじゃないよ、キミはひとりぼっちじゃないよ……と。
「おーい、そこのガキ。そんなところで何をしている。風邪をひくぞ」
慌てて指で涙をぬぐい、下を見た。
子ロリババアを連れたあの丸眼鏡は……情報屋……だったけ?
何度か見かけたことがあるけど、一度も話したことはない。
「なんだ、リオーレじゃないか。降りて来い。一緒にローレットでケーキを食おうぜ。一人で食べるのは寂しいって思っていたんだ」
「なんでボクの名……ふ、ふん。しょうがないな。可哀想だから一緒に行ってやるよ」
街からシャイネン・ナハトを讃える歌が聞こえてくる。
でも、もう気にならない。
意味の曖昧な歌を歌いながら、ローレットへ行こう。ボクがいるべき場所へ。
※担当『そうすけ』