イラストSS

　夜空を舞う。緋色の翼が――シャイネンナハトの夜に。
　それはカイトだ。冬の夜空も鷹の獣人たる彼の身にはさほどの負担でなく。
　愛しき者――リリーを連れ添って空を自在に。
「わぁ……！　きれい……！」
　防寒着に身を包んだリリーから感嘆の声が漏れる。
　下を見れば街の灯りが。上を見れば星々の輝きが。遠くに在りしは――月が。
　どこを見ても美しく。どこを見ても麗しく。
「これが、カイトさんのみているせかい、なんだね……！」
「ああ――驚いたか？」
　そして彼の腕の中で目を煌めかせる彼女のなんと美しい事か。
　共有したかった想いがあった。他の誰でもない彼女と。
　この一夜を、貴方と共に。
「おっ、と」
　瞬間、風が吹く。
　カイトは風の変化には慣れたもので、遥か天の変動であろうと微動だにせず乗り切るが。
「――わっ」
　リリーは必ずそうとも限らない。
　突風に体が反応。カイトにしがみつく様に、その身を更に寄せて――
　さすればそこに在ったのはカイトの嘴。
　彼の、口元。
「――」
　ふ、と。リリーはただふと自然に。

　ありがとう。

　その一言を呟いて、己が唇を彼へと。
　瞼が閉じられる。一瞬の時間が永遠とも感じられ。
　二人だけの世界が――ここに在る。

　今宵はシャイネンナハト。皆の生に祝福を。
　そしてこの空の世界に。
　二人の世界に……祝福を。

※担当『茶零四』