イラストSS

　ゆる、やかに。
　流れる時の中で過ごすというのはどれ程の心地か。
　軋む音はベッドに重きを預ける音。
　鳴とジェック。二人が一つの所に在りて。
　横に成りながら組んだ足が――艶めかしい。

　ベッドのすぐ近く、隣に置いたツリーの輝きがシャイネンナハトの色を伝え。
　部屋を微かに照らす光ともなる。
　此処には。この空間には二人しかおらず、小さな衣擦れの音すらその耳へ。
「――」
「――」
　吐息。声。
　二人の手の内にあるは煌めく装飾。輝く刹那。
　――今宵だけの。今宵が全てのモノ達で溢れている。
　鳴の尾が半周し。
　ベッドの上に散っていた一つを跳ばした。
　転がるソレの音が軽やかに。おっと、という表情を鳴がすれば。
「――」
　ジェックがガスマスクの奥底で笑みを携える。
　雪降る最中、二人だけの空間が。誰の邪魔も入らぬ一時が此処に。
　穏やかにしてゆる、やかに。
　時計の針が進む音がゆる、やかに。
　夜が更けていく。
　崩した足をまたも交差させ。向き合う二人の視線が共に。
　如何なる言を交わしたか。如何なる時を過ごしたか。
　それは誰ぞが知る事はなく、二人の記憶の中にだけある。
　永久の果てに至りても。
　今宵を過ごした二人だけの中に。

　時が過ぎる。
　ゆるやかに。
　ゆる、やかに……

※担当『茶零四』