イラスト詳細
今日はクリスマスパーティー!/傾 千悠によるクリスマスピンナップ2019(横)
イラストSS
冬の寒さに冷えた指先にあたたかな空気を感じる。ほんのり漂うヴァニラやチキンの香り。照明に照らされて明るい室内は、黒薔薇が姉妹と暮らす大切な場所。
「真っ赤な♪ お~は~な~の~♪」
きらきら色彩豊かなオーナメントで飾られたツリーに紅薔薇が飾りをひとつまたひとつ、増やしていく。真珠のような清楚な光放つまぁるい飾りをわくわくと枝につけ。あどけない翠玉の瞳がピュアな輝きに満ちて楽しそうにして、黒薔薇の帰宅に気付いてパァッと振り向いた。
「黒薔薇姉さま、おかえりなさい!」
赤いリボンがひらりと揺れて金色のツインテールも愛らしく、紅薔薇が声をあげれば、買い出しから戻った黒薔薇が艶やかに銀髪を揺らして頷いた。
「姉さま、お星さま! 買えた? あった?」
「ええ、あったわよ」
駆け寄って袋の中を探し出しそうな妹に先んじて黒薔薇が大きな金色の星を差し出した。
「姉さまありがとう! あとは、キャンディケインに金色の林檎に~」
「紅薔薇……」
大きな星に目を輝かせて黒薔薇に抱きつく紅薔薇。黒薔薇は妹にぎゅうと抱きしめられて紫水晶の瞳に妹への愛しさとすこしだけ焦りを浮かべる。
(プレゼントが)
――妹のためのクリスマスプレゼントを隠しているのが、バレてしまいそう。
と、そこへ鈴鳴りの笑い声と甘いお菓子の香りが意識を奪う。
「あらあら、ひとつずつ順番に」
「! 白薔薇」
「白薔薇姉さま!」
エプロン姿の白薔薇が焼きたてのクッキーを運んでにこにことしている。
「紅薔薇ちゃん、ツリーとっても華やかになりましたわね」
すごいですわ、と優しく労う姉に紅薔薇は嬉しくて堪らない様子で満面の笑みを浮かべ、ツリーの傍に猛ダッシュ!
「えへへ! 見て~、ここに飾った白い飾りはね、白薔薇姉さまでね、隣の紫のが黒薔薇姉さま!」
「真ん中のは紅薔薇ちゃんですのね、三人仲良し、素敵ですの」
ふんわりと砂糖菓子のように微笑みながら白薔薇が黒薔薇に目配せをする。今のうちにプレゼントをお部屋に隠して、という合図だろう。黒薔薇はそっと部屋を出て自室に向かった。
今日は楽しい楽しいクリスマスパーティー。
妹は何日も前から指折り楽しみにして、今日は朝から大興奮で飾り付けをしている。
部屋を華やかに彩る明るく可愛らしい装飾はあたたかで、妹が一生懸命に飾ったのだと思うと愛しさがこみあげる。このあとは、三人水入らずで姉の料理に舌鼓を打って家族の時間を過ごすのだ。――年に一度しかない、特別なクリスマスの時間を。
そして、そして。
――お姉さま、サンタさん今年もくるよね? おおきな靴下を置いておかなきゃ!
純真な妹の声が脳裏によみがえり、愛しげに頷いた姉の顔を思い出し、とっておきのプレゼントを見つめて。
「良い子には、プレゼントをあげないといけないわね」
常はクールな黒薔薇の声に隠しようもない愛情がじわりと滲み、部屋がふわりとあたたかみを増したよう――、
白薔薇の料理がテーブルいっぱい広げられ、紅薔薇の歌声が明るく響く。
「ク、リ、ス、マ、ス~♪」
もうすぐ始まる楽しい時間。期待に弾むお子様の声がはやくはやくとはしゃいで、特別な夜を待っている。
※担当『remo』