イラストSS

　そこはまるで、お伽噺を切り取った世界のようでした。
　二人の少女が、お揃いのドレスに身を包み、手を取り合って歌を歌っています。
　お姉さんのタントちゃんは決して上手ではないけれど、楽しそうに元気に歌います。
　その手を繋いで鈴のような音色を披露するのは、妹のシュテルンちゃん。妹の方がお姉さんより色々おっきい気がしますが気にしてはいけません。
　二人が歌うのは、祈りの歌ではありません。誰もが知っている童謡のようなものです。だからでしょうか、二人を包む空気は厳かなものではなくどこかほんわかしていて、春先の陽だまりの様に暖かいのです。
　
　やがて、シュテルンちゃんがタントちゃんを導くように最後のフレーズを歌い終え、聴衆のいない合唱が終わりました。
「素晴らしい歌声でしたわ！！！！」
「おねえちゃん、も上手、だったよ！」
　姉妹は揃って互いの歌声を褒め称えます。褒めレース、とでも言えばいいのでしょうか、それはどんどん加速していき、髪型から容姿、果てには身に着けている衣装について褒めちぎっています。同じの着ているんですけどね。
　そうしてひとしきり互いを褒めた後は、また二人は手を取り合って歌を歌うのです。
　とろけそうな最高の笑顔を浮かべながら。

※担当『澪』