イラストSS

　薔薇の迷路に気をつけて。
　人も、そうでないものも迷ってしまうから。
　青薔薇の姫には気をつけて。
　触れる誰かをみんなみんな喰べてしまうから――

「馬鹿な子。そんなに隙だらけで、そんなに可愛い顔をして」
　切れ長の瞳を細めたリーゼロッテは頬を上気させたレジーナにからかうような言葉を投げる。
　幻想の毒花――まことしやかに語られる不名誉の数々を彼女は普段イレギュラーズに見せる事はしない。
　だが、聖夜。
　雪の散る薔薇の庭園で、冴え冴えとした月光に照らされる彼女は、成る程――元来の魔性を何時もより強く発揮して『迷い込んだ客』に相対している。
「あ、あの、その――」
　レジーナの胸を突くのは強い憧憬であり、畏れであり、渦巻く激情のようである。
　胸の内を饒舌なる言葉にする事は難しく、通り一遍の愛を語る事さえ、目の前の魔性は簡単に許してはくれない。
「……っ……」
　弄ぶ猫の瞳（アーモンド・アイ）に呑まれれば、顔の熱を一層増したレジーナは言葉に詰まらざるを得ないのだから。
「貴方は、薔薇がお好き？」
「……はい」
　薔薇の迷路に気をつけて。
　人も、そうでないものも迷ってしまうから。
「紅茶もお好きよね。では、真夜中のお茶会なんて如何かしら？」
　青薔薇の姫には気をつけて。
　触れる誰かをみんなみんな喰べてしまうから！

　※担当GM『YAMIDEITEI』