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だいすきな貴女へ
だいすきな貴女へ
イラストSS
肌を刺すような冷たい空気も。
身に降りかかる些細な不幸も。
ヤオ・リウシェンにとって、今は何も気になりはしなかった。だって今宵はシャイネン・ナハト──とても、とても大切な日なのだから。
何が似合うだろう。何を喜んでくれるだろう。
ヤオは友達になれそうな、小さき少女を思い浮かべて店をめぐる。貴族令嬢だけれど、驕ったところがなくて──曝け出した自分を認めてくれた少女。彼女の喜ぶものを選んであげたかった。
不意に思い出す、彼女との外出。強い望みで人参のヘアピンを購入したが、あれは兎の人形へ着けるためのものだった。
手当たり次第だったヤオの足取りが先ほどより明確になる。プレゼントの方向性が決まったのだから、あとはそれらを置いていそうな店を回ってみるしかない。
普段も何気なく使えるものがいい。それでいて、貴族令嬢が持っていても差し支えないもの。そして彼女に似合いそうなものだ。
夜の帳が落ちるまで探し回ったヤオは、掌に小さな箱を乗せて笑みを浮かべる。今から少女の元へ行っても十分間に合う時間だ。
「……喜んでくれるでしょうか」
ええ、きっと。そう応えるようにヤオの頭上で星が1つ、周りより先に駆けていった。
※担当GM『愁』