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六年分のありがとうを天に~思い出此方より~
六年分のありがとうを天に~思い出此方より~
イラストSS
彩乃は一人、外を見ていた。
日差しを失った庭の景色はぼんやりと。
大切な友を思い出す和装の屋敷の中、そっと縁にもたれかかる。
締め切られたガラス張りの引き戸の向こうでは微かに散らすような雪がぽつぽつと降りている。一人、ギュッと抱きしめるは、もう会えない大切な友達の形見。
吐く息が少し白く、廊下の冷たさは一人の自分を引き立てるようで。
やや視線を上げる。緩慢な動きと共に視線をあげれば、曇りが買った空に彼を見えるような気さえした。
ボロボロになった黒い鞘に収められた反りの控えめな打刀が、木製の床に軽く当たって鳴った音は、寂しく屋敷の中に消えていく。
華やかな一日とは決して言えない。しかし、きっとそれでもいいのだ。
この聖夜は争いの消えることを願った聖女の日。
華やかなりし輝く夜だけが、シャイネンナハトじゃない。
これもまた、その在り方だ。
こつんと石突き部分にひたいを当てて、少女は静かに祈るように目を閉じる。
もう会えない、大切な彼に向けて――六年分のありがとうを。
※担当GM『春野紅葉』