イラストSS

　夢の中で、これは夢だな。とわかる夢がある。
『麗しの王子』クリスティアン＝リクセト＝エードルンド(p3p005082)は、自らの従者であるクラエスが満たすカップの中に夢特有の揺らぎを見た。
「どうぞ、お召し上がりください」
　そう言って、自分の斜め後方の定位置に控えようとするクラエス。
「ああ、ありがとう」
　と、何気なく答えたのはいつのことだったか。
「元気でやっているか。父上と母上は？」
　記憶の通り、斜め後方からクラエスの声がする。
「恐れながら、現在お二方のご健勝を確かめる術がございません」
「なんだと！？」
　この忠実な従者が両親の不興を買うなどありえない。なら、自分の失踪が原因で辞職。よもや殉――。
「国元ではないどこともつかない場所におりまして。おそらく殿下がお召しくださったのだと思っております」
　にもかかわらず。と従者は首を垂れる。
「お待たせして申し訳ありません。必ずや、おそばに――」
　いい夢だと思える夢。あわいめがはかなくほどける夢。
「そうか。では、そのようにしてくれ」
　必ずや。と、従者は消える。
　目が覚めると口の中には、たしかに紅茶の味が残っていた。

　※担当GM『田奈アガサ』