イラストSS

　聖夜の賭け事（ふせいぎ）は案の定リゲルの完敗である。
「やっぱり、お強い――いえ、分かっていたのですが」
　案の定、不正義の分も含めてコテンパンにやられたリゲルは疲労困憊ながら満足気ですらある。寒空の下、少年の顔を覗かせる彼と彼のリクエストを受け止めたレオパルの手には約束のチキンが握られている。
「立ち食いだからこそ、美味しいと感じることもあるのです。
　幻想で学んだことですが……不思議ですよね」
「まぁ、今日は咎めないでおく事としよう」
　否定も肯定もせず鷹揚に頷いたレオパルは年若く未熟な聖騎士を目を細めて見守っていた。
　時間は確かに穏やかなものであり、リゲルにとってみれば格別のものだった。しかし、晴れやかな気分に影を落とす気がかりは一つだけ。
「……その、失礼は承知なのですが。疑う事が不正義とも理解しています。でも」

　――レオパル様は、魔種にはならないで下さいね……？
　　　貴方までそうなってしまったら、俺は……

　父を想い、友を想い。
　どうしても口に出さずにはいられなかった『愚か』にレオパルは嘆息した。
　憤るでは無く、咎めるでは無く。
　不安気に瞳を揺らめかせた若獅子に云った。
「迷うな。惑うな。卿は我が背中を見ていれば良い」
　言葉は短く、端的で細々に応じるものではない。
　だが、言葉は短く、端的で、何とも絶対だった。
「――はいっ！」
　表情を輝かせたリゲルの返事にレオパルはもう一度嘆息する。
「未熟だな、卿は」
　だが、彼の表情は厳しくも――温かかった。

※担当GM『YAMIDEITEI』