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俺の家

俺と三弦の眼鏡を飾る場所

眼鏡置き
眼鏡を飾るショーケースってのをさ、
召喚前に見たんだけどあれってどんなやつが買うんだろな?

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 日高三弦は説明が下手だ。
 要領よく物事をかみ砕けない。順序立てて説明しようとすると私見が入る。そして手にした情報に対して感情移入しすぎる……元の世界ではそれが原因で卒論でトチりかけ、会議で何度も失敗しそうになった。然るに、彼女にとって最愛の相手というのは恋人や特定の相手といったものではなく、プレゼンソフトの類だった。
 口に出すとどうしても順序が狂う話を頭の中で整理し画面で纏めあげ、伝えたい順番通りに構築することで話し手が大体何を言っているのか分からなくても、雰囲気で分かって貰える。ここに表計算ソフトなんかでデータでも投げてやれば、大体物わかりの悪い上司も納得して貰える。
 問題点があるとすれば、それは自分の説明下手を補強するだけで自分が賢くなったわけではないという一点。
 「君はもう少し愛想というものを学んだらどうかね?」と上司が言うので、彼の言う『愛想のよい部下の例』というやつを(表計算ソフトで。所謂表計算書類である)纏めて人事部に突き出して黙って頂いた。
 まあ、そんなことをしても彼女が口頭での説明下手なところは直らず、却ってビジネスソフトへの依存が加速した。
 口に出さずとも考えているだけで何か伝えられるならどれほど良いことか。プレゼンソフトのように全て――私の好意さえも――説明できたのなら、人付き合いで成功した例もあったのだろうか。鞄の中、化粧箱に入ったまま朽ちるのを待つペアリングの『重さ』を感じた束の間、彼女は後ろからの衝撃で線路上に投げ出されていた。
 次に気付いた時、三弦は聖職者然とした口の悪い女から説明を受けていた。
 何事か、2~3パターンの抗弁を思い浮かべたが口から出るには拙すぎ、結局口にする前に彼女はローレットの前に立っていた。
 それからまた説明を受けたが、「好きに生きて良い」ことと「世界を護りたい」という話し手の麗人の熱意しか頭に入ってこなかった。
 まあ、理由はどうあれ存在そのものを求められたのは人生で確か3度目(親と『重たがられた』相手、それからギルドマスターである)だったので彼女は苦も無くそれを受け入れた。
 それから口下手が問題になりギフトがまんまビジネスソフト然としており胸をなで下ろしたのは、まあ笑い話だったが。

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