―――風の向くまま、気の向くまま――― 幌が被せられた馬車、扉替わりの扉を開ければ保存食や水の入った大きな樽といった旅のお供から、所有者の意外な一面ともいうべきか、荷台の片隅には少量の本が積まれている。
その所有者である少女は机に伏したまま浅い眠りについている。君が来たことに気づいたのか、うっすらと目を開けるとすぐに大きなあくびをして少し身体を動かした後、君の方を向いた。

「ふぁ～・・・んんーーおはよう」

そう言いながら、彼女は君に駆け付け一杯とお茶を差し出す。

「ようこそ、”幌の家”へ」