ギルドショップ
歌う廃墟
小さな小さな軒下で
『どなた様も大歓迎!』とばかりに開放されている扉の脇に、背の高い棚が置かれていた。
だいぶ年季は入っているものの、質素ながらしっかりとした造りのそれは食器棚だろうか。
廃墟と比べると驚くほどに状態が良い。
入口の扉と違って金具などが錆びている様子もなく、戸棚に嵌め込まれた硝子も綺麗な状態だ。
つまり、雨風に晒されたこの場所にあることは不自然である。
長らく放置されている建物に、明らかに人の手が加えられている痕跡だった。
硝子戸の取手に掛けられた札には、こう書かれている。
『拙いですけれど、ひとつひとつ丁寧に手作りしたものです。
よろしければお手に取ってご覧になってください。
お気に入りが見つかりましたら、購入していただいても構いません。
お代は引き出しの中の貯金箱へお願いいたします。
集まったお金は、ささやかな恩返しとして、この教会がこれ以上崩れないよう保存するために使用いたします。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
居候・閠』