ギルドスレッド Doctor's Lab 【第一次】幻想具現部屋・戦闘記録【シグ】 【艦斬り】 シグ・ローデッド (p3p000483) [2017-10-04 17:02:06] ――荒野の中独り。シグ・ローデッド見据えるは、地平線の彼方に広がる、黒い影。「ふむ…これまた、見慣れた光景ではあるな」 まるで白昼に取って代わるべく突き進む夜の帳が如く、少しずつ、「帳」は彼の居場所へと近づいてくる。 見慣れた、と言うのも当たり前か。この光景は彼の――いや、彼の中にある『魔剣ローデッド』に残された、古の記憶なのだから。「さて、再現性は――如何なる物か」 元々、術者である彼は自らこの幻影の中に入るつもりはなかった。 だが――有体に言えば、暇なのである。 誰も利用者が居ない術式を維持するのはつまらないものだ。故に、いたずら心が、彼にこの行動を決断させた。 先頭の影が、その腕を槍のように変化させ、一直線に突き出す。 シンプルだが、最短距離を通過する高速の一撃。その軌道上へと、シグは右腕を差し出す。 キンッ。 金属と金属のぶつかり合う音。 凡そ『腕と影』がぶつかったとは思えない音。 それもそのはず。硬化した影の『槍』に対し、シグの右腕もまた、銀に輝いていた。「……体内に武器があると言うのは、こう言う時に便利でね」 その腕が歪み、変化する。 銀の腕刀が一閃し、眼前の影が上下二つに分断される。 だが、すぐさま次の影たちが後に続き、影から変化した無数の黒い刀、剣、槍、棍が、雨霰が如く、シグに降り注ぐ。「む…これは流石に……」 防ぎきれなくなり、後ろに押されるシグ。彼は元々『戦士』ではなく『研究者』。 能力があるとは言え、近接での格闘はいささか分が悪い。 追ってくる影の一撃に、金属の腕をぶつけ、大きく距離を取る。 近接戦に於ける優勢に味を占めたのか、更に追いかける影たち。「……優勢になった際こそ、より一層警戒をすべき…なのだがな」 シグの金属の腕が元に戻る。と同時に、彼は軽く、メガネを押し上げた。「ここからは『研究者』の戦いをお見せしよう」『――再現(リカーレンス)』 言葉と共に、無数の数式が空に現れ、シグの周りを取り囲む。 そして彼は、荒野のどこでもあるような小石を、空に蹴り上げる。『――狂想異論・加速性摩擦(マッドネスセオリー・アクセルフリクション)』 一瞬にして、小石は弾丸と化し、影の1体を貫いた。止まる事無く…寧ろ貫く毎に速度を増しながら、次々と影たちを打ち抜いていく。「考えた事はないかね? もしも摩擦が、減速ではなく、加速方向へと作用するとしたら? 面白くはないかね?」 まるで子供に教える先生のような口調で、彼は影たちをからかう。 そのようなジョークを理解できる精神を相手が持たないと知っていても、そうせずにはいられなかったのである。 影たちは一撃で貫通されないよう、すぐさま散開する。 そして、その腕を弓、パチンコ、銃、砲…考えられる限りのあらゆる武器に変化させ、一斉にシグのほうに向かって撃ち放つ。「やれやれ…」 降り注ぐ弾丸の雨を前に、シグに慌てる様子はなく。『――幻想理論・磁力誘導(ロジックイリュージョン・マグナガイダンス)』 彼の周りに浮かんだ数式に、矢弾が触れた瞬間。 それは一斉に向きを反転させ、放った影たちの方へと向かっていく。 ――影たちの反応もさるもので、すぐさま後ろに居た者たちが前に出、体の一部を巨大な盾に変化させ、襲い来る矢弾の嵐を遮断する。 だが、それは致命的な隙をシグに晒す事になった。巨大な盾はダメージと共に視界をも遮断し、シグの行動を彼らから隠蔽していたのだ。「受身になるべきではなかったな。問題であれ戦術であれ、私は『解決する』方が得意でね」 展開した数式が、一点に集まる。『――幻想理論・重力激化(ロジックイリュージョン・グラビテイクシード)』 荒野のど真ん中に現れた黒い点に、一瞬にして影たちは吸い込まれ、跡形もなく消え去った。「……本来の物であれば、この程度で根絶するのは不可能だったのだがな」 魔法陣の限界とも言うべきか。敵味方共に、あまり強い力、大きな数は再現できないようだ。 だが、娯楽としては十分なのだろう。「さて、試運転はこの程度で十分。新たな客人を迎えるとしようか」 そう言って、魔法陣の部屋につながる扉は、閉じられたのであった。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
「ふむ…これまた、見慣れた光景ではあるな」
まるで白昼に取って代わるべく突き進む夜の帳が如く、少しずつ、「帳」は彼の居場所へと近づいてくる。
見慣れた、と言うのも当たり前か。この光景は彼の――いや、彼の中にある『魔剣ローデッド』に残された、古の記憶なのだから。
「さて、再現性は――如何なる物か」
元々、術者である彼は自らこの幻影の中に入るつもりはなかった。
だが――有体に言えば、暇なのである。
誰も利用者が居ない術式を維持するのはつまらないものだ。故に、いたずら心が、彼にこの行動を決断させた。
先頭の影が、その腕を槍のように変化させ、一直線に突き出す。
シンプルだが、最短距離を通過する高速の一撃。その軌道上へと、シグは右腕を差し出す。
キンッ。
金属と金属のぶつかり合う音。
凡そ『腕と影』がぶつかったとは思えない音。
それもそのはず。硬化した影の『槍』に対し、シグの右腕もまた、銀に輝いていた。
「……体内に武器があると言うのは、こう言う時に便利でね」
その腕が歪み、変化する。
銀の腕刀が一閃し、眼前の影が上下二つに分断される。
だが、すぐさま次の影たちが後に続き、影から変化した無数の黒い刀、剣、槍、棍が、雨霰が如く、シグに降り注ぐ。
「む…これは流石に……」
防ぎきれなくなり、後ろに押されるシグ。彼は元々『戦士』ではなく『研究者』。
能力があるとは言え、近接での格闘はいささか分が悪い。
追ってくる影の一撃に、金属の腕をぶつけ、大きく距離を取る。
近接戦に於ける優勢に味を占めたのか、更に追いかける影たち。
「……優勢になった際こそ、より一層警戒をすべき…なのだがな」
シグの金属の腕が元に戻る。と同時に、彼は軽く、メガネを押し上げた。
「ここからは『研究者』の戦いをお見せしよう」
『――再現(リカーレンス)』
言葉と共に、無数の数式が空に現れ、シグの周りを取り囲む。
そして彼は、荒野のどこでもあるような小石を、空に蹴り上げる。
『――狂想異論・加速性摩擦(マッドネスセオリー・アクセルフリクション)』
一瞬にして、小石は弾丸と化し、影の1体を貫いた。止まる事無く…寧ろ貫く毎に速度を増しながら、次々と影たちを打ち抜いていく。
「考えた事はないかね? もしも摩擦が、減速ではなく、加速方向へと作用するとしたら? 面白くはないかね?」
まるで子供に教える先生のような口調で、彼は影たちをからかう。
そのようなジョークを理解できる精神を相手が持たないと知っていても、そうせずにはいられなかったのである。
影たちは一撃で貫通されないよう、すぐさま散開する。
そして、その腕を弓、パチンコ、銃、砲…考えられる限りのあらゆる武器に変化させ、一斉にシグのほうに向かって撃ち放つ。
「やれやれ…」
降り注ぐ弾丸の雨を前に、シグに慌てる様子はなく。
『――幻想理論・磁力誘導(ロジックイリュージョン・マグナガイダンス)』
彼の周りに浮かんだ数式に、矢弾が触れた瞬間。
それは一斉に向きを反転させ、放った影たちの方へと向かっていく。
――影たちの反応もさるもので、すぐさま後ろに居た者たちが前に出、体の一部を巨大な盾に変化させ、襲い来る矢弾の嵐を遮断する。
だが、それは致命的な隙をシグに晒す事になった。巨大な盾はダメージと共に視界をも遮断し、シグの行動を彼らから隠蔽していたのだ。
「受身になるべきではなかったな。問題であれ戦術であれ、私は『解決する』方が得意でね」
展開した数式が、一点に集まる。
『――幻想理論・重力激化(ロジックイリュージョン・グラビテイクシード)』
荒野のど真ん中に現れた黒い点に、一瞬にして影たちは吸い込まれ、跡形もなく消え去った。
「……本来の物であれば、この程度で根絶するのは不可能だったのだがな」
魔法陣の限界とも言うべきか。敵味方共に、あまり強い力、大きな数は再現できないようだ。
だが、娯楽としては十分なのだろう。
「さて、試運転はこの程度で十分。新たな客人を迎えるとしようか」
そう言って、魔法陣の部屋につながる扉は、閉じられたのであった。