2＝W=Heroは夢の中

これは遠い遠い過去の記憶、
それは暗い暗い闇の幻想。

独占と慈愛。嫉妬が映した夢物語。
さようなら、哀しい過去よ。

秋から冬に変わるある日、女は啓示を受ける
季節が一巡りすれば望みの子が生まれるでしょうと

女は喜び神に感謝した
愛しい一人娘をありがとうと。

そして一巡りした雨の日
女の望んだ子は生まれ、恵まれた力は子と共に水を与えられた芽のように育まれるだろう
鉢に根を張り養分をその身に蓄えて。

愛された子は嫉妬を瞳に宿して育つ、
全てを与えられればさらに求めるものなのだ　欲しい、欲しい、頂戴と。

女は望んでいたものを得るために望まぬものも得なくてはいけなかった
光持たない物、ただのもの、自分がそうであったように女はそれを疎み咎める

それを慈愛で受け止めその思いを独占することになったただのもの。

慈愛と独占、嫉妬
同じはずなのに同じではない、嫉妬は輝き
慈愛と独占が見つめるだけ、慈愛と独占は月になれない。

季節は巡り十六回。
嫉妬は美しく輝き愛されていた
慈愛と独占はただ平凡に世界の中で生きていた

十二月の雪の日、慈愛と独占は愛を知った。

慈愛と独占は愛を隠し大事に大事に育てて芽吹きを待つ
嫉妬はただ美しく輝き続ける

二月の愛の日、慈愛と独占は嫉妬に嫉妬する
嫉妬は慈愛と独占から独占する。

愛しき子は美しく輝かなければならない、それは世界の望みである
ただのものは養分となるべきである、それが世界の礎となるのだから
女も世界もそれを是とする、それが美しきこの世界のルールだから。

なにも不幸なことではない、幾万とある英雄譚の一つでしかないのだから
喜べ、英雄と血を分かち合えたことを
そして生きろ、世界を受け入れ道を歩め。

富を収めた男は嫉妬を欲する、世界はそれを許さない
女は代わりを用意する、世界はそれを許すのみ
慈愛と独占は嫉妬に染められる。

愛しい嫉妬を抱きしめ男は笑う
愛と嫉妬はそれを祝福し、女は微笑む
抱かれた嫉妬は微笑み祝福の鐘は鳴り続ける。

世界がそれを願うならきっとそれは
哀しい。

…流転こそ世界の理、流れた歯車は水車のように孤独に廻る
それは奇跡と呼ぶのだろうか、
それは世界が許したのだろうか、
流転こそ万物の理、ゆりかごから落ちた子は新たなる世界を知る。
＝＝＝＝＝＝Ｗｅｌｃｏｍｅ　ｔｏ　Ｐａｎｄｏｒａ！＝＝＝＝＝＝

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