PandoraPartyProject

ギルドスレッド

大いなる暗夜

姿無き闇が為に

ムドニスカが祈りを奉げる場所。
或いは独白、或いは懺悔、或いは感謝。
出入りは自由です。放っておいても勝手に喋る事でしょう。

→詳細検索
キーワード
キャラクターID
迂愚たるは人故々ゆえユエ、幾年を経ても未だ、世界を隔てても未だ――
暗夜よ、我らの夢が届かぬか……夢裡で語り明かそうと届かぬか……。
嗚呼、然し我らは毎夜、毎夜貴方の元へ誘われる事であろう。
瞳を、耳を、脳を捧げ、現世へ喉だけを残して。
それは慈悲だ、素晴らしき闇だ、その世界では全てが映し出される。
暗夜よ、今宵もまた、語りマSHOウか。
ハハッ、ハハハッ、ヒィーヒハハハハァァーーー―――!!
(偶像の残骸を薙ぎ倒し、開いた天井の瞳に語り、狂喜のままに笑い続けた)
 何を嗤う、男よ。
(声が聞こえる。若い女の声。その続けざまに「咀嚼音」。目を向ければ其処には瓦礫に座る女が映るだろう。脚には鉄球が繋がれた枷、手には噛み千切られた蛙の死骸を持った明らかに異常と見える存在が。)

 愚生は空腹である。
寄越せ、寄越せ、寄越せ。
嗤う理由を。隠す食物を。

( 血溜まりのように真っ赤な瞳をぎょろりと男に向け、女の形を成したソレは問う。要約すれば、えらくご機嫌なのは何か隠し持っているだろう。それを私に来れ、と。ーーーただの「たかり」である。)
(見開かれた四白眼は僅かに閉じる事もなく、交信を遮った少女の隅から隅までを凝視せんと、その瞳孔を這い回らせた。笑声は一転し哀れむようにトーンを落とす。“ギフト”により広げられた仄暗い空間は闇に闇を重ね、男の声をより通すようにさせる)
――ハァ、嗚呼、アア、ああ……欠如の少女ヨ。

脳を欠き胎を欠き、胃の腑に呑まれた少女ヨ。

飢えているのデスネ? いいでしょう、暗夜は包み込み、満たすものデス。

しかし。ワタクシは未だ大いなる暗夜に届きまセン。一時の渇きを潤すしか出来まセン。
(『お食べなサイ』 そう言う男は女の異常性を気にも留めず、蝿の集る家畜の、牛の死骸を指すように手の平を向けた。既に貪られた痕は在れど、ほぼ原型を残した、最初の犠牲)
( くん、と鼻を動かすと立ち上がる。どうやら嗅覚は存在するらしい。手に持った蛙の亡骸を放り捨て、ドス黒い空間を鉄球を引き摺って近付く。)

 肉だ、血だ、臓物だ。
欲する、愚生は欲する。貴様の云う「闇夜」を喰らおう。
( 蝿が集っているのも目もくれず、無様に、汚らしく、無我夢中に牛の死骸に喰らいつく。まるで獣、いや其方の方が行儀が良いか。ガリッ、グチュリーーー生々しい音が暗闇に響く。)
(粘着質の強い音を立て聖堂に落ちる蛙に鼠が群がる。主以外の弱者を貪るように)
然しシカシ、悲しいかなななな此の世に暗夜は満ち足りりまセン。
アナタ様の腹も満たされない事でショウ、欠如の少女。
あ、ワタクシ、暗夜司教が一人、ムドニスカと申しマス♪
(大袈裟に両腕を広げるは好意的な物を見せ付けるが様)
心半ばにこの世界に導かれてしまいまシタ。
ええ、至極無念ではありマス。きっと偉大たる我らが主は世を暗夜に沈めまショウ――
(偉大性を語る口は次々に続く。妄信甚だしい言葉が続く。総じて集約するのは、暗夜に世界が沈めば全てが満たされる、素晴らしき世界に成る、と)
( 不快な音は次第に止み、女は何事も無かったかの如く立ち上がる。まるで子供のように口周りにベッタリと血で濡らしながら、口を開く。)

 嗚呼、あゝ。
愚生の血肉、精神、存在。未だ渇望する。
何故に、それは不明。されど求む、満足を。終焉を。
 貴様の云う「主」は、愚生。ショゴス・カレン・グラトニーを満たすというのか?
( 女、ショゴス・カレン・グラトニーは問う。悍ましい言動とは似付かわしくない、純粋で率直な問い掛け。その狂信染みた演説に騙された、というよりは興味を持ったようで。)
あはァ……そうでしょう、そうでしょう、仕方なき事なのデス。
(靴底が聖堂の床を小突く。男は黒塗りの聖書を手に、女の周りを語りながら歩き)

貴女の暴力的なまでの渇望はぁ、穴の開いた器の如くぅ、満つ事はありまセン。
(鼠が僅かに残した骨片を拾い上げ、噛み砕き、呑み込む。静かに首を振り)

人、故に。浅黒い罪を孕む人故ニ。異形の姿を成しても、消える事は無ァいのですカラ。
ええ、ええ、で、す、ガー。我らが主は、其の全てを包み、満たして下さいマス!
(聖書の頁全てもまた黒塗りであり、男は延々と其れを捲り続けた)
嗚呼、我らが暗夜よ。ワタクシ、ムドニスカ──此の世でも闇を広げて御覧に入れまショウ!
慈悲で、救済で、貴方様の御力で世界を包む為にィイイ……!!!
(突如叫び出す男。叫びは直ぐに止み)
シツレイ♪ 兎角、先立つ物が無ければ布教は始まりませンネ。
ローレット様の動きを待たねばなりまセン。
(聖書を閉じ、笑みを浮かべた)
 ーーーー。
( 朱い瞳は大きく見開かれ、捕食と口数少ない会話の為だけに動く口は、徐々に少しずつ、されど確実にーーー口角を吊り上げた。 )

 成程、なるほど、戯言である。
確証のない虚言、脳髄が半分程度溶けた愚生でも理解するーーーが、しかし。貴様の説く言葉に愛を視た。

  与えるならば、応じよう。
 否定すれば、総てを喰らい尽くす迄。

( 口を大きく開き、警告を成す女のような何か。歯並びは良くも悪くもなく、喰らった牛の血が唾液と混ざり、粘性が増している。
 しかし、最も異常なるは喉の奥。暗く、昏く、そして深い。何も視認できないハズなのに嫌な雰囲気のみが感じ取れる。見てはならない、「理解」してはならない。常人ならば直感するだろう。)

 ロー、レット?
( 口を閉じると、ソレは首を傾けた。知識が乏しい故に、その名を知らず。)
待つのか。そうか、待つのか。
( ショゴスは残念そうに息を漏らし、牛の死骸の捕食に戻る。)
( ぶちり、ぐちゃり。血肉を貪る音は、何の前触れもなく止まる。)

 なんだ、それは。
貴様、貴様。その腕はなんだ。その脚はなんだ。
海洋生物に呪われたか。祟り神に見初められたか。

( 微塵も興味を示さなかった男の容姿。しかし、今となってはその淀んだ紅の瞳を動かして観察する。僅かな残滓となった人間としての表現から示すは恐怖、そして劣等感。冒涜的に蠢くソレは少し羨ましかった。)
(あれから数日経つ。男の“布教”は実を結んだのか、足繁く通う信者も見掛けるようになり)

 おヤ、如何されマシタカ、欠如の少女よ。
 ──ああ、嗚呼、我が主の祝福の事デスカ?

(肉裂け血滴る音が止むのも久しい。虚ろな瞳の信者を前に、その触腕を晒していた時だ)

 ワタクシ、かつては神などという甘言遣いに仕えていた事もありマシタ。
 まやかしに祈りを捧げていた方が如何程マシだったか、悪辣の神デス。
 ンっふふ……失礼、老いると長話をしかねない。
(人のナリをした異形手が目元を大袈裟に覆い、男は滂沱の涙を流す)

 悪辣の神は必要悪たる存在として、ワタクシから四肢と心臓を奪いとり、晒し者とした。

(肉が爆ぜる音と同時に四肢が根元から弾け飛び、男は床に転げた。洗脳の弱い信者は戸惑う)

 その時、その時デス。脳を焼き尽くす熱と共に、天啓が!
 『犠牲無くして安寧を紡げない光を、暗夜で包み込め』と!!
 気付けば我が四肢と心臓は、何者にも屈しない強靭なものにィ……!!!

(根元から形容し難い音を立て生える黒い触腕は、男を再び立ち上がらせ)

 ──其れが我が主との出逢いだったのデショウ♪
 然し、あの日から夢の中でしか交信できまセン。信仰がまだまだ足りまセン。
 教団の深仰者の方ならば、祝福を理解されているのデショウが、ワタクシは未だ未熟なので。
 欠如の少女も何れは得る機会を得ましょう。
 主の、祝福を。ンっふふ。

(語り終え、男は空を仰ぐ。見えぬ主を追うように)
 そうか、そうなのかーーー分からん。
「主」に貰ったという面白い体躯、興味がある。
( 考える素振りすら見せず、女のようなソレは断言した。知性が低下している故か、入れ物の女が男の話を拒絶している故か。ただ、断片的な内容は理解したようだ。)

 彼奴等も貴様と共に「主」を信仰する輩であるか。ふむ、ふむ。
( 信仰者に近付くと、くんくんとニオイを嗅ぐ。まるで品定めをするような、そんな視線。)
 純然たる興味こそが、アナタという存在を動かす暴食の一つなのデス♪
 抗う事はありまセン、否定する事もありまセン。
 喰らい続ければ何時の日か、我らが主の祝福が与えられマショウ。
(一頻り紡いだ後、ふむ、と顎に手を当てながら女を観察し、思慮する。あれ程の物を受け入れようと、未だに壊れ切る事のない器、素晴らしい。きっと、『主』の力となる。故に、下手に壊すわけにもいかず、維持する何かしらの術も必要だと)

 未だに暗夜を恐れる方は居られマスガ、仕方の無い事デス。
 人故に、人故に、未知を恐れるは栓無き事なのですカラ♪
(虚ろな瞳をした者は反応を示さない。心中の気を察する事が出来るならば、或いは悲しみ、或いは怒り、負を強く漂わせている。幻想北の領地から来た民が大半だ。……喰らう姿を見続けていた男が一人、品定めを受けて後退りをした。負の中でも後悔という、酷く自分勝手な物を気取らせる)
 否定されど、愚生は食事を止めず。
拒絶されど、愚生は暴食は止まず。
ならば愚生を使え、利用するのだ。さすれば貴様の「主」は雲の上に非ず。
( 女のようなソレは、信仰者集団から目を離してムドニスカに紅く濁った瞳を向けて告げる。ソレは喰らい、啜り、貪る。そうしなければ気が狂い、死を迎える脆い存在。男の云う「主」で総てが満たされる、その言葉に釣られて協力しているだけ。万が一にも男が「背いた」場合は、躊躇もなく牙を剥くに違いない。男には毒にも薬にも見えるだろうか。)

 街で視た存在よりも、脆弱である。
尾も無く、殺気も無ーー
( バッと手を広げて首を傾げる、まるでオーバーリアクション。どうやら街角のホワイトボード付近に姿を現したようで、その時に観察していた旅人の事を指しているのだろう。)

   (ジャリッーー)

 …………。
( 話の最中、聞こえた後ずさりの音。
会話を急に遮り、ゆっくりと後ろを振り向く。)
 ンっふふ……我らが主は未だ、座し黙していらっしゃいマス。
 雲の彼方、千古不易の暗中より天啓が至るその時まで、今しばらく。

(昂然として空を見上げる男。今は私の耳底にしか響かない、主の御言葉。故に導かねばならない、幻想の民を、無辜なる混沌の民を。その行為たるや何と素晴らしき事か。彼女も宿る暴食もまた、今や世界の一部であり、喰らい付く牙ですら愛おしいと感じる事であろう、男の笑みは歪なものであった)


 其処にはイレギュラーズの方は居ませんカラネ。
 ただ──

(言葉を紡ぐよりも先に、それは背後の信徒を払い除け、駆け始めた)

 聖教国の方が時々、お顔を見せて下さるようデス♪
 聞く話によれば、抗う者全てを排除する、何とも眩い方々だとか。
 世界が変われど、存在するものデスネ。
 心中の神に飼い殺される、邪なる太陽というものは。

(去る背姿を指して、ただ教えるように口にする。それ自体に興味は無さそうだ)
「手紙を貰った数刻後に現れ、暗夜云々を覗く我等『物語』の登場だ。贋物に満ちた世界に半端物を置き、恐怖――最も神に相応しい感情――を造るのだ。改めて。我等『物語』こそが冒涜者だ。信者……他我等『物語』に近い存在も発見した。オラボナ。オラボナ=ヒールド=テゴス。ラーン=テゴスと呼んでも構わない」
 ……理解した。
( 女の形を為したソレは歪んだ表情から何も感じ取ることなく、首を縦に振って頷いた。本当に理解しているかは、彼女のみが知る。)

 なるほど、成る程。
貴様の云う信仰者では無いと、貴様を妬む邪教徒だと。ならばーーー「餌」か?
( 実に安直且つ大雑把な思考、続く問いも実に理解が容易で考えが非人道的であった。痩せ細った右腕からはドロリと虹の色彩をした粘液が溢れさせ、まるで「待て」を指示された犬の如く目付きで逃げる男を眺めていた、がーーー)

 貴様は求む者か?
貴様も喰われるモノか?
( 見知らぬ男の登場によって追跡は中断した。其れは知っている、この存在感。圧迫感。彼奴はこの場に集った信仰者とは違う、別次元の存在だと云うことを。
 粘液滴る右指をオラボナに向け、其れは問う。貴様は「捕食者」か「餌」か、と。)
 粘液が向けられた。酷い既知『物語』だ。
 故に。恐怖からは。神からは。程遠い。
「ならば答えるべき。ならば応えるべき。我等『物語』は餌だ。貴様も我等『物語』に含まれる、読者への供物だ。恐怖を造る。神を造る結果は『娯楽』に陥り、残酷な世を創り成した。何よりも重要なのは『神を造る素』だと思考すべき……勿論、貴様と我等『物語』は同等だ。今現在は捕食関係も為せず『1』の状態に嵌まった。兎角『Shoggoth Lord』よ。総ては物語の内に留まる。如何せ。召喚云々も都合主義の賜物だ。餌は餌らしく。抗って魅せるべき」
 餌。餌だと?
愚生を餌と云うか、愚生を同等と謳うか。
( 粘々と、泥々と。腕は腐食した朽木の如く崩壊を始める。狩人が銃を構えるように、獣が捕食対象を捉えるように。)

 一理ある。
貴様の言葉は容易に理解し難く。されど、同等は肯定せざる得ず。肉体は脆く、理性は脆弱。
抗うも、魅せるも。貴様の謳う「物語」次第。
( しかし粘液は男を襲う事はなく、思考に耽る素振り。既に腕は元の形を為す、細く青白い女の手)
「貴様の場合は『The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket』を捲るのが最適。狂気の山脈を登るのは少々『捻り』が足りぬ。既知の物語を解くならば『源』を選ぶべき……失礼。話が逸れた。抗うのも。魅せるのも。確かに登場人物次第だが、我等『物語』の役割は鍵だ。鍵=感情を擽る『もの』『行為』を示す。即ち、舞台装置とも説ける」
 自身の左手に石の塊。右手の道具で削り始め――数分後。黒に輝く多面体。宙に浮かぶ羽……燃える――石を地に落とす。三日月口は怒りを覚え。
「糞が。酷く既知『物語』に影響した。半端物以下の煎じ物だ!」
 貴様、貴様。何を言っている?
その言の葉は妄言か、それとも「体験談」か。愚生には理解に届かず。
( 頭痛がする、吐き気もだ。まるで肉体の内側から「何か」が嗤っているような。眼前の男の言葉は呪詛か、詠唱か。)

 何だ、これは。
( 落ちた彫刻。手に取り、臭いを嗅ぎ、徐に口を大きく裂いて呑み込む。まるで知識を取り込むように。)
「妄言。体験談……貴様も面白い言葉を吐く。総てが違うとは。物語なのだ」
 呑み込んだ。嗤いが漏れる。
「酷い恐怖だ。娯楽に陥った恐怖が生したものは『我々』なのだ。無定形だった物語は不定形に堕落し、波を打って現に佇む――答える必要は在るのか。此処は混沌だぞ」
 面白い言葉を吐くのは、貴様も同等である。
(脅しだろうか、拗ねたのだろうか。はたまた気まぐれか。男に対する罵倒に圧をかける。呑み込んだ彫刻は既に口の中に存在せず。)

 一理ある。
盤面は駒が立つがルールは無く、更地には肥やしが在るが緑は芽吹かず。酷く、酷く静寂ーー
( 天を仰ぐ。広く、拡く、細腕を開け。されど朱き双眸は見下す。)

 退屈と空腹で死にそうだ。
(ソレは告げる。)
「ならば死に縋るが好い。退屈と飢餓は我等『物語』を蝕む日常だ。忌避の筆に支配された、娯楽の代償は無間に拡がる。正しく文字の連鎖だ。違う意味も同じ意味も派生に吊られ――何。一理も一利も皆無だ。総ては覆されるべき、拙い『法』だと思考せねば」
 粘土を床に投げ棄てる。屈み。蠢くのは芸術家の手先。
 うごうご。うぞうぞ。ねちゃにちゃ。
 子供が玩具を弄ぶように。
 粘土が貌を成し始めた。
 膨らんで。円筒。
 伸びて。海星。
 付属する目玉。
 管組織……以下略……折り畳み可能な翼。
 動く気配は無いが。粘土が『もの』と成った。
「ああ。此処には。餌だけが在るのだ。貪るならば過去を。舐るならば現状を。嗤うならば未来を。諦めるならば虚空の門を。貴様の好きなものを咀嚼するが好い。勿論、我も含まれる。局外者も含まれる。貴様自身も含まれる」
 ……法だと?
制約で愚生は満たされず。不要だ。
( 落ちた粘土を像が成すまで、舐めまわすような視線で観察を行う。創られる造型は冒涜的且つ精神を削られるようで、既知感を覚える姿体。嗚呼、気味が悪い。されどソレは地に跪き、粘土の造型を舌で味わう。)

 選ぶまでも無く。
総てだ、過去だ未来だ煩わしい。いずれ身を亡ぼす事なぞ知り得ている、それまでに貴様の脳髄を喰い散らすだろう。
( 言い終えた刹那。貪るように造型を噛み千切る。聞き慣れない咀嚼音、幾度か終えて喉に通る。)

 この場に居たとして、愚生は満たされず。
見失った男を食す。必要ならば喚ぶのだ。
( 狂信者の群れに肩をぶつけながら、女の形をしたソレは闇へと消えた。)
「満たされるが好い。我等『物語』は不満足だがな……兎角。此処の主に挨拶せねば。否。挨拶は不要か。暗黒云々と説かれるべきだ。我等『物語』は神を欲して在る。恐怖そのものを愛して在る。さあ。さあ。愉快で滑稽な神々に、真の神とやらを『魅せて』嗤おうか。力の漲る心地は不快だ。我等『物語』は成長を求める、醜き人間で在った」
 咀嚼音は普遍の美。影は去って往く不定を眺め。
 目的の人物に視線――目は無いが――を投げる。
 すぶぅらわしぃい……演目でした、焔のデッセェール!!
 ワタクシ、とてもとても感動しておりますゥ!!!
 嗚呼、アア、ああ、何すっばっらしいぃ……。おォオンッ!!!
(男の感動が溢れ出ては号泣に次ぐ号泣、滂沱の涙は枯れ知らずに落ち続け……暫くの後に、栓を閉めたかのようにピタリと止む)

 皆サマ暗夜の子らにも見せたかったぐらいデスヨ、ンッフフフ。
 あ、ただいま戻りマシタヨ、皆様方。良い子にしていらっしゃいまシタネ?
 我らが大いなる暗夜が見付かる日も、そう遠くない事でショウ、ワタクシ確信しました♪
(一様に黒いローブを纏った信者たちは、或いは感激に打ち震え、或いは戸惑いざわめき立つ。何かを掬うように手を広げた男は、その腕を上げて声高々に、祈りの言葉を口にした)
 さあ、我らが大いなる暗夜に、感謝を!
 アッレェェーーーィアッ!!!
(未だ罅割れた空から覗く主に、彼らは祈る。混沌に暗夜を齎さんと)
 信者の一団に融け込む無貌。感動を晒した司教を覗き込む――遠方からの観察だが、言葉『覗き込む』が相応だ――羨ましい。彼方まで悦びを表現する貌を久方振りに視たのだ。己では成せぬ『感情』の叫び。芸術家は三日月口を輝かせ、腕を揮い始め――金属音。混ざる音。拉げ――半端物の現れ。其処に在るのは蠢く炎。金属で倣った『演目』の一部で。
 不気味な彫像を背に。芸術家は場を離れ。

キャラクターを選択してください。


PAGETOPPAGEBOTTOM