何はともあれ、まずは荒れ地を開墾せねば始まるまい。

石をどかし、草を抜き、木の根を掘って、土を混ぜる。

気の遠くなる様な作業だが、爺やと仲間達の手伝いがあれば不可能ではないだろう。
さあ、頼んだぞ皆の者！

え、僕もやるの？
ウッソ、王子だよ……？

ハッハッハ、何が試される大地か！
この僕が試してやろうと言うのだ！
ガイアとやらが僕にもっと耕せと囁いている事だしな！
む、何だ爺や。それは朝食べたキノコによる幻聴、だと？

オエー！！（吐き戻して迅速に爺やに担がれてフェードアウトする）

昨日は少々アクシデントがあったが気を取り直していこうではないか！
ところで爺や、何故一から十まで全て人力なのだ？
どうにかして牛とか馬とか借りて来られぬのか？
え、ウッソ。一日借りるだけでそんなに高いの……？

さあ、キリキリ働こうではないか！
労働の汗とは尊いものであるからな！！

うわー爺やー！
石をひっくり返したら何か見たこともない様な気色の悪い虫が出てきたぞ爺やー！！

これも貴重なタンパク源ですって正気か爺やー！！

もう嫌だ爺やー！ 終わりが見えない、というかチチトシテ進まぬではないかー！
そもそも何で農業なのだ！
僕達は農耕のノウハウも知らぬし、そもそも農業なんて天候とか獣とかその他諸々で全くダメになる事も多いと聞くし、博打の様ではないかー！
計画が杜撰というか、見切り発車ではないのか爺やー！！

そうやってゴネていれば作業が進むのか、だと？
ええい、うるさい！
少し弱音を吐きたくなっただけではないか！
正論で叩きのめすのではなく、励まさぬか爺やー！

ふむ、実際に足を運んでみれば完全なる荒れ地だな。
土地が痩せている訳ではないようだがここまで手つかずというのも珍しい。
そして土地だけということは……レオナルド君、農具は何処に？

おお、早速やってきたな！
その勤労意欲、称賛に値する！
む、農具だと？ それならほら、そこらに転がっていよう。
クワだか熊手だか鎌だか知らぬが、好きに使うが良い。
まあ、錆びが酷くてどうにもならぬがな！
ハッハッハ！！

爺やー！！
手の豆が潰れてしまったぞ、爺やーー！！

唾でも付けとけば治るでしょうって、順応の速度が異常すぎるのではないか爺やーーー！？

ふふ、ここまで典型的な荒れ地を見たのは始めてだな。
農業をするにしても、もう少しやりやすそうな土地がありそうな物だけど……突っ込んだら駄目な所かな？
（いつからそこにいたのか、適当に拾ったであろう木の枝で足元に転がる塊状の土をぺしぺし叩いて崩している。遊んでいるのだろうか）
これは……耕す以前にゴミ拾いから始めた方が良いのかな。
主に石とか、かろうじて生えてる枯れ木とか。流石にちょっと邪魔だよね。……頑張ろうか。
（立ち上がって大きく伸びをすると、脱いだ白衣をその辺の木に引っ掛けて作業を始め）

（野晒しの農具を手に取って確かめる）
前の所有者が残した物、にしては随分と古い。
形がしっかり残っているのは良い品の証拠だが、肝心の刃がダメでは持ち腐れだ。
……王子陛下、これらを一度持ち帰らせてもらって構わないかね？
私の領にある鍛冶屋へ依頼して、刃を研いでもらおうと思うのだが。

む、研ぎか？
確かに道具が使えなければ開墾など夢のまた夢であるからな！
弘法、筆を選ばずという言葉が異国にはあると聞くが、残念ながら我等は弘法ではない故な。
頼んだぞ、メニア！
……む、どうした爺や？
何？ 新しく買った方が早い？
爺や、お前という奴は………

一理ある！！！！！

確かに、必要数を揃える上でも購入する方が手早いな。
自分で選んだ道具ともなれば愛着などもあるか。

……して王子陛下、現在の総資産は如何ほどかな？

総資産？
はっはっは、異な事を言う。
そんなものが潤沢にあれば初めからこの様な事になっとらんわ！
まあ、雀の涙程ではあるが爺やが行っているアルバイトの賃金があるのでこれでどうにかやりくりするしかあるまい。

やったぞ、爺やー！
我が物顔で群生しておった雑草共をあらかた抜き終わったぞー！
褒めるがよい！！

え？ これ爺やが育てていた食せる野草なのか？

なあ爺や、草や石はあらかたどけたが本格的に耕すにはやはり馬か牛が必要だと思うのだ。
わかっておる、皆まで言うな！
そんな経済的余裕など僕らにはない！
しかしだな爺や、もしも野生の馬を捕まえてこれれば素晴らしいと思わんか？
元手はほぼ0のまま作業が進み、終わったのなら売ってしまえば金も手に入る！
まさにパーフェクトプラン！
ああ、自分の頭脳が怖い……。
という訳で早速捕獲に行くぞ爺や！

（数刻後……）
いや～、中々酷い目にあったな爺や！
まさか捕らえようと飛びかかったところで爺やの顎が蹴り抜かれ、更に追い討ちと言わんばかりに牽かれるとは夢にも思わなかったぞ！
うむ、やはり開墾は己の手で成してこそだな！
動物をいじめるのは良くないと母上も仰っていたしな！
そういう訳で暫くは養生しておるのだな、爺や。奇跡的に打撲だけで済んだのだから

爺やのなけなしの賃金を使って鍬を手に入れたぞ！
これで効率も2倍！ いや10倍であるな！
早速使おうではないか、ふん！

（ザクッ）

………………あ、これ木の根に刺さって。

抜けないので今日はここまで！
いや～、やはり労働とは尊いものだな爺や！