ギルドスレッド 即席事務所と喫煙所 PPP一周年記念『仲がクソ悪い二人の話』 【モノクローム・ウィスパー】 アリスター=F=ナーサシス (p3p002118) [2018-07-29 21:45:26] 初めて会ったその日から馬が合わないとアリスターは思う。感傷なんてものに溺れこんで足踏みを続ける見苦しさを正すことさえできない、この世の終わりみたいにシケたツラした、誰ひとり幸せにしようという気のない負け犬。アルク・ロードとしても馬が合わぬという点において全く同感だと思っている。こちらの意図を汲む気すらなく勝手な口を利いてこちらの精神を逆撫でしておきながら、ヘラヘラと気の入らぬ薄っぺらい笑い方とともに好き勝手に場をかき乱す傲慢極まる男。互いにこの一年で様々な出来事を経験し、或いは互いに全く知らない話も山のようにある。アルク・ロードが憎しみだけを最後の縁とする日々も今では過去であり、その成長をアリスターという男も認めている。それでも尚「こいつとは心底合わない」という直感だけは未だに根深く残り続けているし、恐らく変わらない。この二人はそういった間柄の同僚である。-「――で、だ。」特段前置きなく白面の男は口を開き、すぐそこにいる黒い雪豹の獣種に視線を向けた。「一周年記念を真面目にやるとでも思ったか。わたしだぞ。」わけの分からぬことを言う。たまにそうなる。何か相談があるのだと言うから『こいつがお願いする時は十中八九厄物件』という直感をねじ伏せ、お使いなどと言いながら美少女《ばんぞく》の巣穴に放り込まれた時の話もひとまず腹に仕舞って来てやったのにと、雪豹は己の判断を後悔する。このポンコツはもう二度と信用しない。「お腹痛い顔なってるよアルク君、もうちょっと笑ってたほうがいい」「この状態でどう笑えるってんだ……!」呼び出された部屋一つを丸ごと、卒倒できる酸素レベルまで下げた上で呼吸を要さない当人は何食わぬ顔して出迎えるのだから始末が悪い。よっぽど後ろから殴りかかってくれたほうがやりようはあったろう。今何処かといえば、海の上である。もっと言えば、船上だ。海種が地引網を海へ落とし、岸へと戻る途上の。「君魚好きだろ。わたしは魚のしんだのに興味はないが」「そりゃあ好きだが……そういう問題じゃないだろうがッ!」雪豹としては食い気はある。ただこのような騙し討ちで好き勝手にされるのは気に入らない。このペラペラと回る口を黙らせてやりたいが上手く言葉に出来ないところに白面がまだ口を利く「まあサプライズプレゼントだと思っておくれな。丁度君の誕生日も近かろう。まあ……ひと仕事あるけど」一応己の誕生日についてこの男は覚えていたらしいと雪豹は多少評価を上向きにしようか考えた矢先『仕事』などというご存じないワードが真横からカッ飛んでくる。「いいから、全部、説明しろ……ッ!!」襟首を掴んで、船の縁に叩きつける。「あっおちちゃうおちちゃう」などと緊張感のない顔ながらも一応慌てるだけの精神はこの白面にもあった。何故ロケットスタートかって前置きが長いのは好みじゃないしこの方が面白いからであって他意はない。もっと言えばたまたまとあるツテで手に入れたドライアイスを冷房代わりにしていただけであり気絶させる為に呼んだつもりはなかった今は反省している、等と嘯き、その都度襟首を揺するだとか、こいつはそういうやつだと諦めて死んだ目をする等のやり取りがあったが何やかんやで仕事の話に移る。「ミッションの概要を説明しましょう。依頼主はこの船の船長。目標は大型の鮫、網食いの撤退です……なんて。まあ撃破じゃなくて撤退なんだ。追っ払えればいいって。ヘタに殺すと別の奴来るからめんどくさいらしい」先程の狼藉でコートの衿がぐちゃぐちゃになっているのを気にしながら淀みなく、何かの引き写しめいた口調で語って、それでいて最後までやりきらずに砕けた調子に戻る。この無駄にフレンドリーで雑な感じがまた癪であると雪豹は思う。好かれてもないくせに、よくやると。無論それを糾せば「真面目にやったって退屈なだけだから」などとのらりくらりと言うのだ。人をなんだとおもっているのか。街角の悪い大人などという評価の最たるところはこの面の皮の厚さに由来するのか。「網食い、ね」「わたしが拾える中でも一際器用で腕が立って、一番魚好きそうなの君なんだよな。お土産も出るし悪い仕事ではないと思うが……さて」視線が船尾の方を向く。数百メートル先が不自然に波立ち彼我の差が縮まりゆく中、雪豹に向けてライフルが放られた。「お出ましのようだ」「おう」短い応答。慣れた得物ではないが引き金を引けば弾が出る。当座はあれをどうにかしてから考える。「鼻っ面とヒレを狙う。合わせろ。」「了解、ファーストアタックは譲ってやるよお。ぐっらっく。」仕事となれば一切の禍根は後回し。当意即妙小気味よし。魚ごときで許されるとも思っては居ないがしおらしく責められる気もない白面が緩く口元に弧を描き、雪豹の射線を追った。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
感傷なんてものに溺れこんで足踏みを続ける見苦しさを正すことさえできない、この世の終わりみたいにシケたツラした、誰ひとり幸せにしようという気のない負け犬。
アルク・ロードとしても馬が合わぬという点において全く同感だと思っている。
こちらの意図を汲む気すらなく勝手な口を利いてこちらの精神を逆撫でしておきながら、ヘラヘラと気の入らぬ薄っぺらい笑い方とともに好き勝手に場をかき乱す傲慢極まる男。
互いにこの一年で様々な出来事を経験し、或いは互いに全く知らない話も山のようにある。
アルク・ロードが憎しみだけを最後の縁とする日々も今では過去であり、その成長をアリスターという男も認めている。
それでも尚「こいつとは心底合わない」という直感だけは未だに根深く残り続けているし、恐らく変わらない。
この二人はそういった間柄の同僚である。
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「――で、だ。」
特段前置きなく白面の男は口を開き、すぐそこにいる黒い雪豹の獣種に視線を向けた。
「一周年記念を真面目にやるとでも思ったか。わたしだぞ。」
わけの分からぬことを言う。たまにそうなる。
何か相談があるのだと言うから『こいつがお願いする時は十中八九厄物件』という直感をねじ伏せ、お使いなどと言いながら美少女《ばんぞく》の巣穴に放り込まれた時の話もひとまず腹に仕舞って来てやったのにと、雪豹は己の判断を後悔する。このポンコツはもう二度と信用しない。
「お腹痛い顔なってるよアルク君、もうちょっと笑ってたほうがいい」
「この状態でどう笑えるってんだ……!」
呼び出された部屋一つを丸ごと、卒倒できる酸素レベルまで下げた上で呼吸を要さない当人は何食わぬ顔して出迎えるのだから始末が悪い。よっぽど後ろから殴りかかってくれたほうがやりようはあったろう。
今何処かといえば、海の上である。
もっと言えば、船上だ。
海種が地引網を海へ落とし、岸へと戻る途上の。
「君魚好きだろ。わたしは魚のしんだのに興味はないが」
「そりゃあ好きだが……そういう問題じゃないだろうがッ!」
雪豹としては食い気はある。ただこのような騙し討ちで好き勝手にされるのは気に入らない。このペラペラと回る口を黙らせてやりたいが上手く言葉に出来ないところに白面がまだ口を利く
「まあサプライズプレゼントだと思っておくれな。丁度君の誕生日も近かろう。まあ……ひと仕事あるけど」
一応己の誕生日についてこの男は覚えていたらしいと雪豹は多少評価を上向きにしようか考えた矢先『仕事』などというご存じないワードが真横からカッ飛んでくる。
「いいから、全部、説明しろ……ッ!!」
襟首を掴んで、船の縁に叩きつける。
「あっおちちゃうおちちゃう」などと緊張感のない顔ながらも一応慌てるだけの精神はこの白面にもあった。
何故ロケットスタートかって前置きが長いのは好みじゃないしこの方が面白いからであって他意はない。
もっと言えばたまたまとあるツテで手に入れたドライアイスを冷房代わりにしていただけであり気絶させる為に呼んだつもりはなかった今は反省している、等と嘯き、その都度襟首を揺するだとか、こいつはそういうやつだと諦めて死んだ目をする等のやり取りがあったが何やかんやで仕事の話に移る。
「ミッションの概要を説明しましょう。依頼主はこの船の船長。目標は大型の鮫、網食いの撤退です……なんて。まあ撃破じゃなくて撤退なんだ。追っ払えればいいって。ヘタに殺すと別の奴来るからめんどくさいらしい」
先程の狼藉でコートの衿がぐちゃぐちゃになっているのを気にしながら淀みなく、何かの引き写しめいた口調で語って、それでいて最後までやりきらずに砕けた調子に戻る。
この無駄にフレンドリーで雑な感じがまた癪であると雪豹は思う。好かれてもないくせに、よくやると。
無論それを糾せば「真面目にやったって退屈なだけだから」などとのらりくらりと言うのだ。人をなんだとおもっているのか。街角の悪い大人などという評価の最たるところはこの面の皮の厚さに由来するのか。
「網食い、ね」
「わたしが拾える中でも一際器用で腕が立って、一番魚好きそうなの君なんだよな。お土産も出るし悪い仕事ではないと思うが……さて」
視線が船尾の方を向く。
数百メートル先が不自然に波立ち彼我の差が縮まりゆく中、雪豹に向けてライフルが放られた。
「お出ましのようだ」
「おう」
短い応答。慣れた得物ではないが引き金を引けば弾が出る。当座はあれをどうにかしてから考える。
「鼻っ面とヒレを狙う。合わせろ。」
「了解、ファーストアタックは譲ってやるよお。ぐっらっく。」
仕事となれば一切の禍根は後回し。当意即妙小気味よし。
魚ごときで許されるとも思っては居ないがしおらしく責められる気もない白面が緩く口元に弧を描き、雪豹の射線を追った。