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ギルドスレッド

刺繍の絨毯

【RP】少女、狩りをする

混沌肯定、レベル1というものがある。
これはそれまでどのような人生を歩み、学び、鍛えていようと
すべて混沌によって能力を再定義されるという現象だ。

そのため、少女が混沌の世界へ呼ばれる前に扱っていた魔術は
ほとんど使えない状態になっていた。

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(少女は草原に立っていた。幻想レガド・イルシオンの王都から離れて徒歩1時間のところ)
(ここに馬があればもっと遠くまで行けたのだろうが贅沢は言えない)
(風が吹くと草は波打ち、少女は懐かしさに目を細める)
(彼女の故郷はこのような土地だった。草原に囲まれた、小高い丘に木で作られた家を建て、一族で暮らしていた)
(朝起きて一番最初にすることは水汲みで、それは女の仕事。少女はよく義母の馬を狩りて井戸と集落を往復したものだ)
(水が手に入れば男衆の起こした火で炊事を始める。近所の女衆で集まり、義母や義妹、姪たちと共に語らいながら小麦粉を捏ねて焼いた。日々の愚痴とか、欲しいものとか、噂話とか)
(少女の一族は軍を相手に玉砕したのだ)
(少女は混沌の世界へ呼び込まれたのだ)
(細めていた目を開ける。 風で波打つ草の、その動きに一点、風によるものではない違和感を見つけた)
(草の動きから判断して体躯は小さい。小動物だろう、兎かもしれない)
(すうっと鼻から息を吸って、ゆっくり吐く。気持ちを落ち着けながら左手で背の弓を引き抜き、右手は矢を摘まむ)
(幾千幾万と繰り返した動作に淀みはなく、ほんの数秒前まで郷愁にふけっていたとは思えない手際だ)
(草の一点に視線を注いだままゆっくりと風下になる方向へ回り込んでいき距離を詰める)

(一歩、二歩、三歩)
(もし、少女がレベル1でなかったら。混沌によって再定義される以前だったなら)
(距離を詰めるまでもなかっただろう。
獲物を囲む草など意に介さず、たとえ障害物の先にいようと位置を見抜けた。そういった魔術を持っていた)
(だが今はない。レベル1だ)
(十一歩、十二歩、十三歩)

(少女はしばらく歩いたのち、足を止めて弓を構える。 見据えるのは一点、これまで一度も目を離していない)
(草が揺れる。獲物の位置は変わっていない)
(少女は一秒、目を閉じた)
(行使するのは彼女がいま操れる数少ない魔術。これまで取り込んできた動物の霊を纏うというもの。 獲物の正体を兎だと推測した少女は、頭の上に二つの耳を立てる。白い兎の耳だ。それはかつて少女が故郷で狩ったものだった)
(この魔術が狩りへ及ぼす効果はない)
(長い耳が足音を拾うだとか、動物の脚で脚力を高めるだとか、そういったものを目的としていない。 獲物への礼儀、ないし宗教的儀式である)
(かくして、兎の霊を降ろした少女は弓を引き絞る)
(やがて草陰から兎が頭をのぞかせたとき、鋭い矢はその小さな目標へと吸い込まれていった)

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