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【一周年記念SS】ジュノー・マカロフの書記、7/29

『一周年、ってか』
「んんー? 一周年って、なんの?」
『……あぁ、ロアンは知らねぇのか』
 傭兵、ラサへ向かう馬車の中でマイペースな黒猫が俺の顔を覗き込んでくる。 手綱を握っている俺はその頭を軽く払いながら、そちらに鼻先を向けた。
『特異運命座標ーーイレギュラーズ。 そいつらが大量に召喚された日を、知る人は“大規模召喚”って呼んでんだ。 そして今日は、その一周年って話だよ。 知らねぇのか?』
「へぇー、知らなかったなぁ。 ジョゼは知ってたのかい?」
『おいロアン……?』
 くるんと振り返った黒猫、ロアンはよりにもよって、まさにそのイレギュラーズの一員であるそいつにそう尋ねるもんだから、俺もつい呆れてしまう。 けどま、尋ねられた本人はそんなこと気にしない気質だ。
「ま、そりゃー俺もそーやって召喚されたからな! ロアンも召喚されたらきっと驚くぜ? なんせいきなり地に足がついてねぇ大地に立たされてるんだからな!」
『ったく、驚いたのは俺たちもだよ。 いきなり姿を消しやがって、柄久多屋は大騒ぎだったんだからな?』
「あーもーわかってるって、悪かったと思ってるよ。 けどこいつばっかは仕方ねぇだろ……って何度も言ったろ?」
 向けた鼻の先、活気よく笑ってから身体をぐーっと伸ばしている山猫の獣種はジョゼ・マルドゥ。 彼は俺やロアンのダチコーであり、三年前に空中庭園へと召喚されたイレギュラーズであり、ギルド・ローレットに属する傭兵であり……元、柄久多屋だ。 そして俺は、そんな元柄久多屋の男に依頼を受けて、こうして馬車をラサに向かわせている。
『お前が何度言おうと、俺が何度聞こうと、俺はしばらくこう言い続けるぞ? “柄久多屋は大騒ぎだった”ってな』
「もう、カンベンしてくれって……ジュノー、お前にまで連絡を寄越さなかったのはさすがに反省してるんだぜ? けどそう出来なかったワケだって話しただろ?」
『“手紙の出し方がわからなかった”ってか?』
「お前の実家の住所がわからなかったんだよ」
 だんだん苦虫を噛んだみたいな顔つきになっていくダチコーは少し面白かったが、これ以上は止めておく。 ロアンは「なになにー?」と聞きたがっているが、そいつはジョゼが聞いてないときに話してやるとしよう。
『さて、そろそろ降りる支度しろよ。 もうじきだ』
 そう、いよいよ感動の親子対面だ。 俺ーージュノー・マカロフは、その様を最前列で見届けてやろう。

ーーーーーーーーーー

「…………で、ちょいと前に幻想風の羽ペンと酒で安否確認させやがったうちのガキはどこほっつき歩いてんだ?」
『今はロアン・クオンの入団試験に付き添ってますよ。 ま、時間稼ぎってやつじゃないですか』
「ったく、やっとこさ帰ってくる算段立てたっつうから待っててやったが……マルドゥの獣だってのにいちいちメンドクセェガキだな」
 所変わってここは“柄久多屋”の団長室。大半の場合、書類に混じって平らげた後の皿とか酒瓶が乗っかっているデスクの先にいる大山猫こそが、この柄久多屋のボスだ。 ダチコーに似てピンと立った黒い耳、それより立派に生やした茶色の鬣。顔つきは猫と言うより虎に近いのでは、と思わせる風格を持っていて、腕の太さなんか丸太みたいだ。 うんざりしているような口ぶりだが、牙を見せて獰猛に笑う様は、本当にジョゼに似ていると思う。
「んで……ロアン、だったか? そいつのことはどう思う」
『薬の調合に関する知識、治癒魔法の腕前は確かなもんですよ。加えて霊体疎通……ネクロマンサーの素質があります、薬の知識は主にそっちから、らしいです。 ……ただまぁ、マイペースすぎるのが気になりますね』
 ふにゃりと笑った黒猫の表情が描かれたべら紙をデスクに置いた団長は、そのべら紙の黒猫について説明を加える俺にくいっと手招きをした。俺の頭なんか軽く握れそうなほどデカい手だといつも思う。
「……あー、今は他の面子もいねぇんだ、かたっ苦しい喋りは止せ」
『そうはいきませんってば、柄久多屋の獣は耳も鼻も利くでしょうに。 つか、これでも十分崩してますぜ、ジョニーおじさん』
「ちっ、ジャコモんとこのガキも一丁前にデカくなりやがったな……まぁいい。 この黒いのは合格だ」
 少しだけ中身が残ってた瓶の口を噛み、ぐいっと全てを飲み干した後に団長こと、ジョニー・マルドゥは立ち上がる。 ぎしりと軋む木の床の音、俺はそれを追いかけて部屋を出た。

「ようやく帰って来やがったなァ『黒耳の』ジョゼェ! 盃を出せ、積もる話はその後だ!」
「あー、あぁ……。 ただいま、親父」
「そこの黒いのも……ロアンだったな! 一緒に座れ、丁度いい酒が入ってなぁ、入団祝いだ飲め飲め!」
「んふふ、僕、お酒飲めないんだー」
「……そうか、ミルクの方がいいか?」

 ……さて、“積もる話”とやらはいつ始まるのやら。ま、少なくとも感動の親子対面は思いの外、無事平穏に済みそうだ。

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