無人のカウンターの上に宝箱が一つ。
そしてメモが一枚。

【ハロウィンの合言葉をどうぞ！】

T&Tなあの言葉を言えば鍵は呆気なく開くのだろう。


1-10【ユニコーンの角】
森に住むユニコーンの角。
正体はねじった乳白色の棒飴。薄荷味。
危ないので尖ってはいないが鈍器として通用してしまう。してしまった。

11-20【ゾンビパウダー】
どこかの呪術師が使用していたとも屍術師が作り上げたとも言われる魔法の粉。
粉末状の緑茶だが色が鮮やかすぎて高確率で信じてもらえない。

21-30【王女のリボン】
お菓子好きな王女が作らせた橙と茶の縞リボン。
オレンジ皮の砂糖漬けにチョコをつけたもの。オレンジとは香り高き金色の果物の意。溢れるカリスマパワー。

31-40【死者の腕】
白い腕から流れ落ちる新鮮な赤い血。
苺ジャムがたっぷりと詰まった白いパン。
味はともかく食べにくい。すっごく食べにくい。ジャムとの健闘を祈る。

41-50【黒斑点病の皮膚】
見るもおぞましい被験者の一部だったもの。
正体はレーズン入りのバーンブレッド。名前で損している。どこかの世界では正式なハロウィンの菓子だが地味過ぎてまったく普及していない。
【50】おもちゃのコイン入り。金持ちになれるかも？

51-60【聖人節のクッキー】
聖人に捧げる贈り物。
さつまいもとアーモンドの粉を混ぜて焼き上げたクッキー。真名はパナジェッツ。聖人節前日(ハロウィン)に食べてもいいんじゃね？という理由でハロウィンでも食べられる。

61-70【菊の雫】
飲めば長生きができるという菊の葉にたまった朝露に朝陽を混ぜ固めたもの。
べっこう飴だと分かっていても口にしてはいけない。蓮葉売りさんとの約束だ。

71-80【バジリスクの目玉】
真紅に染まる宝玉は禁断の知恵の実。不老の実。
りんご飴ともアップルローリーとも言う。トッピングにカラーチョコレート。見目は愛らしい。前歯の限界に挑戦する時が来た。

81-90【七色真珠の貝殻】
優しい乳白色の貝殻に包まれた美しい真珠。
果汁と牛乳を混ぜあわせた飴を貝殻の中に流し込んだもの。
深夜、海洋の浜辺で不審なスーツ姿の男が目撃された件とは関係がないと信じたい。

91-94【焼きメレンゲのキノコ】
森の奥深く。雨後に時々はえてる不思議なマッシュルーム。

95-99【焼きメレンゲのタケノコ】
森の奥深く。雨後に時々生えてる不思議なバンブーシュート。


【100 EAT ME!】
トランプの型抜きクッキー。チェリーとパイ生地、カスタードまでは良かったがパイナップルと七面鳥の出汁を入れカラメルソースを投入した時点で我に返り、お蔵入りとなった一品。

そのはずであったが――……

（びくっ）宝箱あいた。…もらっていいんだよなコレ（匂い嗅ぎ、ぱくり）
クッキー香ばしくて美味い。サツマイモもいいよな秋だな～（もぐもぐ）

ふむ……。
……………。
………………。

(箱の中のジャムパンを前に、どう取り出したものか長考した後……尻尾、と言っていいのだろうか。
蛇の形をしたその器官が、ぐるりとパンに絡みつく)

ふふふ。
いつもの尻尾はここまで器用ではないからね。
便利なものだ。
ご馳走様。

開いた～♪（宝箱を覗き込むと眼前に白い腕）
ひょわっ！？うぅぅでぇぇぇ！？……の形をした、パン？
おぉ……赤いのジャムなんだ……わぁ……（奇妙なパンをマジマジと見つめ）
え、と。あっありがとね！！がんばっ、じゃなくて大切にた、たべる、ね！
（手に入った物のインパクトに動揺している）

白く優しいあなたには季節の祝福が

ふだんと違う素敵な尻尾の紳士には貴重な助力が

驚く淑女には幸運の女神の手が

これからの一年、訪れますように
お三方に感謝を！

ハッピーハロウィン！