PandoraPartyProject

ギルドスレッド

潮騒の従者斡旋所

貴方に数多の驚きを

待ち合わせというには情報が足りぬような。

鉢合わせというには期待をし過ぎているような。

祭りの熱と、夢と希望とその他諸々。

老いも若きも、誰も彼をも巻き込めば今ーー

約束の場所にて、収穫祭の幕が上がる。

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時と場所のみお伝えすれば、巡り会えるが従者のつとめ。

……と、大口を叩いたのは良いですけれど。この人混みは厄介ですね。
「普段」の私であれば、見つけてもらうのにご負担をかけてしまうところでした。
(さて。この日のお姫様は……いえ、「少女」は)
(いつもよりずっと大きな体だというのに……)
(いつもよりずっと、ありふれた姿でしたから)
(人混み、人ならぬもの混みに、手際よく飲み込まれておりました。)

……えっと、ええっと……。

(とはいえ)
(宝石ならずとも、瞳はアメジストの輝き。血色を宿す白い肌には、継ぎ目一つなく)
(「お人形のように」整った目鼻立ちに、薄い桜色の唇)
(それに、さらさらと金糸を風に流す様は)
(ほんとうの姿でなくとも、多少、人目を引くものであったかもしれませんけれど。)
(いち村娘と呼ぶには……彼女の容姿は、お伽話の中の、お姫様にも似ておりました。)
(……が、です。)

……レモラー!
どこにいるの、レモラー!!

(中身はそれ、ちいさな頃のままですので)
(いざ困ってみると、特に慎むことなく……)
(さながら、子供がはぐれた母親を呼ぶように。とても効率的な手段に訴え出るのでした。)
(自身を呼ぶ声に、耳ヒレをーーいつもと違うヒレを動かして)

……姫さま?
(いつもの癖で宙を探すも、そこに主はなく)

姫さま。従者は此処におりますよ、姫さま。
ええ、完璧な従者は此処に立ち、辺りを「見下ろしておりますとも」。
(そう言うと、その場で誇らしげにくるりと回り。スカートの裾も一緒にふわりと返り)
(いつもより高所から、従者は主に応えました)
……まあ!
(声の主を視界に認めると、たいそう驚いて、少女は目をまあるくしました)
(だって、そこにいた彼女は……Remoraの面影を残しながらも)
(長身でグラマラスな、大人の女性の姿をしていたのですから!)
(……いえ。Remoraは事実、もとより大人ではあるのでしょうけれど。)

レモラ、レモラ。いつものように探しても、見つからないわ?
……ね? お互い、とっても大きくなったみたいだもの。
(全長40cmあまりだったお人形は、今や、140cmほどの小柄な少女に)
(人形の頃の面影を残した目鼻立ちでもって歩み寄り、「従者」の顔を見上げるのでした。)
(声をした方を見やれば、目を丸くしたのはこちらも同じです)
(大きい。大きい? ともすれば「平時」の自分より?)
……お互いに、道理で見つからぬわけです。
密かに驚かそうと思えば、これはなかなかに巡り合うのに難儀する試みでした。

ええ、ええ。私もいつものように探したところ、空ばかりを見てしまい。
姫さまが歩いて来られるとは、夢にも思わなかった次第です。
(そっと、周囲の人混みから守るようその肩に触れて)
ふふ、ご立派になられましたね。
ええ、私も少々母の真似事をば。母似であればこういう未来もあったでしょう。
(色の異なる双眸はいつものように……比較すればいつもより柔らかいものに思え)
(見せた歯はいつものように……比較すればいつもよりギザギザと立派なものに思えます)
(中身は変わっていないので、表情はきっといつも通りに読み取れることでしょう)

しかし、ここまでお歩きになってお疲れにはなりませんでしたか?
この人混みです。
普段の私ならさっさとどこかに腰を落ち着けたいと体が文句の一つでも上げるところです。
お腹は空いてませんか? 喉は乾いていませんか?
(いつもより饒舌に、そして過敏なぐらいに言葉を並べながら)
ふふっ。どうやらお互い、サプライズにはなったみたいね?
(スカートの両裾をつまんで、その場でくるり)
(平素にも行ったことのある仕草ですけれど、装いや外見のため)
(まるで、おしゃまに振る舞う普通の村娘のように見えるやもしれません。)

あら……レモラったら。
大きくなって、ことばまで、「お母さん」のようになっているのね?
(何かとお世話を焼こうとする様は、本や街で見た「母」のそれに似ているようで)
(Remora自身の言動と相まって、そんな風に思ってしまうのでした)
(けれども、ええ。肩に添えられた手と、言葉、どちらの温もりも実に素敵です。)

ふふっ。そうね。このからだだと、不思議と、いつもよりお腹が空くみたい。
せっかくだから、どこかで食事やお茶にしてもいいかしら。
けれど……わたしは、今はいち村娘だもの。
そんなに過剰に、従者として振舞わなくたって大丈夫なのよ?
(お母さんという言葉に、目尻を下げて苦笑しながら)
おや、これは失礼。なかなかに性格とは器に左右されるもので。
大きくなったことで少々視野が広がったのやもしれません。
目に入る色んなものが気になってしまって……
その分細やかな精度は失われてしまったかもしれませんけれど。

ふふ、では今日はどう振舞いましょうか。
母親は年齢的には早いものですし……お姉さんぐらいでも?

(背中に回ると、両肩をそっと押して)
村娘なら多少のお行儀の悪さも許されるでしょうし、食べ歩きというのも良いですね。
まずは出店を覗いてみましょうか。
お姉さん。……そうね。じゃあわたし、今日ははぐるま姫=Lockhartだわ?
(苗字、という概念は持っていなかったけれど。名前をくっつけてみると、どこか嬉しい気持ち。)
ええ。お祭りでは、いろんな屋台が出ているみたいだし。
今のわたしなら、どの屋台も、立っているだけでよく見えるわ?
(やっぱり趣旨のためか、あちらこちらから漂う、あまあい匂いが特に目立ちます)

果物の砂糖漬けに、甘いあげもの……?
……さめまんじゅう、というのもあるのね?
(名前のとおり、サメの形をしたおまんじゅうのようです。かわゆくデフォルメされてますが。)
(ビバ、練達技術。)
おやおや、ではいつか両親を紹介せねばなりませんね。
(出て来た調べに、くすくすと)
ええ、それに今日の姫さ……姫ならば、よく食べられることでしょう。
体が大きくなれば、求める燃料も多くなりますからね。

(客寄せの声、飛び交う注文の声に耳をすませば、聞こえ方に若干の違和感)
(代わりに嗅覚を働かせれば、いつも以上に鼻がきいて)

ふーむ、鼻と耳の位置一つとっても。
ああ、ハレの日と言えば甘いものですものね。
さめまんじゅう……恐れを知らぬと言うよりかは、おそらく人気の造形なのでしょうね。
(興味深そうに、遠巻きにまんじゅうの種類を眺めながら)
見える中で何か、召し上がりたいものはおありで?

さめまんじゅうが名前に負けていないか、確かめるのも一興かと。
レモラの両親! ぜひ一度お会いしてみたいわ。今のレモラに似ているのかしら?
(楽しみが増えたことに、また頬を綻ばせるのでした。)

ええ、ええ……なら、さめまんじゅうにしましょう!
(愛らしさ重視ながら、しっかりキバだけは形成しているのは職人の維持でしょうか)
(まだほのかに温かなまんじゅうを二人分、店主のおじさんに頼みました。)
(……二足歩行のサメの姿をしているのは、元々なのか、数日限りの魔法なのか。)

でも、レモラ。
(店主さんに向けていた顔は振り返り、わざとらしく、愛らしいしかめっ面。)
「姫」はだめよ。わたしは今日は、ただの村娘なのだから。
……だから、そう……そうね。
(とはいったものの、はぐるま姫、以外を名乗ったことはないものですから)
(なんと呼んでもらうか迷ったところで、はたと、ひとつ思いつきました。)

――「お嬢」とでも呼んでちょうだい?
少しかしこまってはいるけれど、これなら村娘としてだって、おかしくないわ。
(あまり砕けた呼び方でも、きっとレモラは呼びづらいでしょうから)
(お姫様の配慮もあっての結論でした)
まあ、似ているといえば似ているような。
母は私より幾分凶……目つきが悪いですけれど。
(言葉を一部飲み込めば、目を伏して)
まあ、似てます。きっと。

しかしまあ、二本足ですか。ふうむ……
(懐より財布を取り出す途中で、不意なお叱りに)
おや? おやおや、これはこれは失礼を。
ふふ、そうですね。様を外しただけでは……

お嬢?
(従者は一瞬目を丸くしました)

あの、お嬢というのは普通……いえ、お嬢がそれを望むなら。
……店主、お代はまとめて払いましょう。
おいくらで?
(その笑顔を前に、何も言えないまま)
目つきが鋭いのね。……それはなんだか、ますますサメのようだわ。
(想像してみて、くすり。きっと、さぞ格好いい女性なのでしょうと)

(そして、ええ)
(お姫様もとい少女は……やっぱり、中身はそのままなものですから)

……?

(たまに知識が足りておれず……気づいてはいなかったのですね)
(「お嬢」という言葉が、概してどういう意味を持つのかを……)

(それはさておき、さめまんじゅうも購入した頃。)
そういえば、レモラはずうっと、この世界に住んでいたのよね。
……レモラは毎年、こういう姿になっていたの?
(釣銭をしまい込めば、受け取った鮫まんじゅうをまじまじと見つめながら)
ええ、私よりもずっと鮫らしい方で。
理想……と呼ぶには少々言い過ぎかもしれませんけれど。
(やや頰を染めるように、視線を空に向けて)

そうですね。私はこの世界の住人ですが……変身したのは今宵が初めてです。
私は、自らの姿に強い誇りを持っていまして。
それを、拗らせていたのでしょうね。
(静かに微笑むと、腰を曲げて内緒話をするように)

変身してしまうことは、まるで、元の姿にコンプレックスを抱いているような。
小さいことを気にしていると、自ら認めてしまうことになるのでは……と。
……ふふっ。やっぱりレモラ、お母さんのことが大好きなのね。
(臆面もなく言ってのけるのは、肉の体を持っている、この時だからでしょうか)
(もし自分にお母さんがいたら……なんてことさえ、考えてしまいます。)

あら……それは意外ね。
レモラのことだから、従者としていろんなリクエストに応えてきたと思ってたけど。
……でも、納得したわ。
レモラはいつものレモラのままで、完璧な従者だものね。
(そのことには、一片の疑いもございませんし。それに……)

それに、コンプレックス……のことも、わかる気がするわ。
わたしの場合は、すこし違うけれど。
……人間の姿になったら……おじいさんの最高傑作である、あの身を。
否定してしまうことになるかもと、悩んだこともあったから。
さあ、どうにも今日は普段と比べて素直ですけれど。
ご想像にお任せしますわ。
(わかりきった答えを、視線に乗せて)

ええ、様々なリクエストをいただいたとしても、
今宵姿を変えることができるのは自らが望む姿。
主人が望む姿と私が望む姿とは中々に一致しないもので。
それに……そう、そうですの。
(眼前の主の言葉に、双眸を輝かせ)
ええ、いつもの私が最良だと、そう信じてまいりましたもの。

信じたことは、決して誤りではありませんでしたとも。
こうして、初めて変身したことも。
望む姿があるからこそ、己を磨くことができて。
この姿だからこそ、元の私の価値がわかると。

お嬢の、今の葛藤も……私と同じような。
などと、勝手に答えを出してしまうのは私の悪癖ですね。
……家族って、素敵なものなのね。
(答えを察する言葉のかわりに、たた小さくうなずくばかりにとどめました。)

ええ、ええ。レモラの言う通りね。
今こういう姿になったからこそ、普段のからだの不自由さも。
そして、こういったからだのままならなさもわかる。
あの小さな視点だからこそ見える世界が、わたし、やっぱり愛おしいわ。
自分の目指すべき振る舞いだって、わかるのだものね。
(きりきりと関節の響かないからだ。人間に近づいてゆくお人形なんて、素敵ではありませんか。)
ねえ。レモラは、もしずうっとその姿でいることができるとしたら。
どちらの姿を選ぶ?
(大きくなっても癖はそのまま、親指を口に当てて)
むずかしい質問ですね。この姿のままでいいなら、それもいいとさえ思えて。
ただ、この姿を与えてくれた親の手前もあります。
やはり私は、見返すという本懐を果たすまでは元の姿でしょうね。
(そうじゃないと、私という有能さの証明になりませんもの)
(従者は、お嬢の言葉をひとつひとつ拾うように頷き、そして答えを言いました)

それに……このサイズだと、いろいろと買い替えねばなりませんし。
……ふふっ、道理だわ。
わたしも、おじいさんから与えられた人形のからだは大事だし。
元の姿の服なんて、とうてい合いそうにないし。
人形の姫君、はぐるま姫は、あちらの姿でこそだものね?
(柔らかに微笑むのは、やはり、人間の頬なればこそ……なのでしょうけど)
(でも、いいのです。微笑み方はもう、元の姿でも、覚えたのですから。)

けれども、ええ。
……今せっかくこの姿なのだから。
ふだんは食べられない大きさのものぐらい、買い食いしてもいいわよね?
(だって今はお姫様ならず、平民の少女なのですから!)
それにわたし、家族はいないけれど。
(いまもやっぱり見上げる高さの従者に、視線を向けたなら。)
……似た名前を賜りたいと思ってしまうぐらい、慕っている従者はいるのだもの。
どちらの身であっても、とても、とても幸せなことだわ。
人形の姫君。
そうですね、その言葉の意味するところが……小さくて、可愛らしい、誰かの夢見たお姿であるならば。
そして、それをお嬢が大切に思われているならば、そうでしょう。
(二人の結論が一緒であるならば、目の前の柔らかな微笑みにウインクを返し)

おやおや、そうですね。まんじゅう一つ程度で満足してもいられません。
夜は短く夢に限りあれば、いざや他にも回りましょうか。
……それは、それは本当に幸せなことで。
(まっすぐにその言葉を受け取れば、返すようにその目を覗き)
ならば、その幸せばかりは今宵の夢に溶けることが無いよう、その手をお引きいたしましょう。

お嬢、どうか手を。
この暗闇で迷われることがございませんように。
一夜限りの夢は、一夜限りの幸にあらず。

明日も続く道のりの通過点として――祭りの喧噪はまだ、もう少し。

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