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ギルドスレッド

商人ギルド・サヨナキドリ

【1:1】サヨナキドリ・秘密の応接室

此処サヨナキドリギルドの主ソレにとっては"領域"であり、"工房"であり、"神殿"である。

気の遠くなるほどの数の魔術を組み込んであり、またそれらを稼働させることによって建物内では外界より多くの権能を振るうことができる。

よって、サヨナキドリの内部にある一室……応接室にキッチンが付いた様なその部屋に『招いた』人物以外は来れない様にすることも、場所を特定されない様にすることも容易なのである。

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──ふむ。こんな感じか。
(中の設備を見て、ひとつ頷く)
(コン、コン、コン、コン、と規則的なノックが4回)
(そのあとは静まり返り、部屋の主の返答を待っているようだった)
(ノックの音に気がつくと、特に確認する様子もなく扉を開ける。此処に来ることを許可しているニンゲンは現在のところ彼だけだ)

──やァ、いらっしゃい。
……Howdy.
お招きいただいて光栄だ。
(と言いつつ、手土産の紙袋を差し出して)
菓子折りにしようとも思ったんだが、野暮かとも思ってな。

趣向を変えて調味料にしてみたぜ。
ピンク岩塩、トリュフ塩、エキストラヴァージンオリーブオイル、ジンジャーシロップ……etc。
オレにはよく分からんが、これでより一層美味いモン作ってくれよ。(からからと笑って)
いや、ホントに来るとはね。
そんなに気になっていたとは思わなんだ。
わざわざ手土産まで用意してくれるとは律儀だね、キミも。
んー、口で話すより実際見る方が面白いかな。
ココア。作ってるところ、見るかい?
(おやまァ、お洒落だこと。と紙袋を覗き込んで)
こっちだってまさか本当に呼んでもらえるとは思ってなかったさ。
heh、先行投資ってやつだ。またお裾分けでもよろしく頼むぜ。
お、種明かしを間近で見させてもらえるのか?
それじゃあお言葉に甘えるとしよう。
(言って、部屋の中へ歩を進める)
(キッチンの方に手招きして、ついでに踏み台も用意しつつ)
種明かしというほどの種明かしでもなくて実に恐縮なんだけどね。
ちなみに、鍋で作ることはある?

(手、洗ってね。と息子に対する調子で言うと、小型の鍋を取り出し)
……鍋で? いや、ないな。
(遠慮なく踏み台に上がりながら、どこからともなく取り出したキッチングローブをいつもの黒いグローブの上から装着して、その手を洗う)
(どうしてもグローブを外せない理由があるらしい)
(その様子を横目で見つつ、しかし特に触れはせず。手袋を外したくない手合いなど、人間にもいくらでもいる)

マグカップで作る方が手軽ではあるのだけどね。
鍋も風情があって悪くない。
(ココアパウダーを鍋の中に落とすと、火をつけて弱火で軽く煎る)
(その様子をそっと覗き込みながら)
……粉だけ先に? 焦げたりしないもんなのか?
こうやってヘラでかき混ぜてれば大丈夫。
水分が飛ぶからダマになりにくくなるし、カカオの風味が強くなる。
(手慣れた様子で鍋の中身を片付けて)
ダマになりにくくなる……ふむ……
(感心しながらまじまじと見つめている)
…で、軽く煎ったらきび砂糖を入れて…、眷属達や息子ウチは甘党が多いからね、甘めに。それからせっかくだし…。
(きび砂糖を多めに入れた後に手土産の調味料の紙袋からピンク岩塩を取り出して、ざり、と少量入れる)
…………!!
甘くしたいのに、塩入れるのか……?
(驚いて身を乗り出し)
これが小細工の正体ね。
ほんの少量の塩を混ぜると甘みにコクが出る。
当然、入れ過ぎればしょっぱくなってしまうがね。
代わりに有塩バターを入れてもいいけど……アタシはスッキリするから塩の方が好きかな。
(水を少しずつ加えながら混ぜて、しっかりとココアを練る)
(ほわ……、とどこかきらきらした眼差しで見ている)
……練るのはどうしてだ?
少しずつ練ればダマにならないのと、ココアパウダーをなめらかにして口当たりをよくするためだね。
…で、ココアに艶が出てきたらしっかり練れたから、牛乳も少しずつ入れて延ばす。
(冷蔵庫からビン入りの新鮮な牛乳を出してきて、少しずつココアと混ぜて)
練るのも少しずつ……伸ばすのも少しずつ……
(小さく頷きながら様子を見守っている)
牛乳は絶対に沸騰させないこと。
口当たりが悪くなるし、匂いも変質するからね。
細かい泡が出てきたら火を止める。
このままマグカップに注いでもいいが……、

(それは密やかに、神秘の秘術を唱える様に。見守る彼の頭を撫でようとしつつ)
……? ……なんで撫でる?
(突然意識をこちらに向けられて困惑しつつ)
?…キミが隣に居たからだが、嫌だったらすまんね。
(質問の意味がよく分かってなさそうな目をして、茶漉しを出すと2つのマグカップに茶漉しで漉しながら半量ずつ入れて)
……いや、別にいい。
……ココアを、漉す、のか?
これは余裕があればでいいがね。
牛乳ってのは温めると膜が張るものだから、その膜や泡を取り除くためにする。
口当たり重視の手順だが、当然それらの膜や泡を好むのであればやらずともいい。
──はい、完成。
(器具を流しに全て置いてから、マグカップ2つを持ってソファーの方へ向かう)
……ああ、なるほど。
(踏み台から下りて、同じくソファーの方へと後を追う)
というわけで、召し上がれ?
口に合うかはわからんがね。
(ローテーブルにココアを置くと自分の分を取ってゆっくりと飲み始め)
ん、いただきます。
(マグカップを取ってふーふーと息を吹き掛けた後、ちびちびと飲んで)
…………!
うん……美味いよ、すごく。
当然だけど、自分で作ったのと全然違う……。
そぉかい。それならよかった。
(両手でマグカップを持つとゆっくりココアを飲みながら微笑み)
……隠し味はともかく、こんなにたくさんの手間を掛けてるとは思わなかった。
それを『手間』と思わないことが……『愛情』ってことなんだろうか。
(マグカップの中でゆらゆら揺れる水面を見つめながら)
さぁねぇ。
性分もあるだろうし、一概に手間をかけることが最良とも言えない。

(キッチンの流しを指差すと、ちょうど流しに置かれた鍋や茶漉しに対して複雑で精妙な『洗浄の魔術』が自動で発動しているところだった)

あれがあれば、キミとのんびり語らう時間が増える。それもまた『愛情』だろう?
(『洗浄の魔術』をしばし見つめ、マグカップへと視線を戻し)
目に見えないものを推し量るのは難しい。
価値観はひとによって異なる。
なにをそう定義していいのか…………オレにはまだよく分からない。
(そう呟いて、こくりこくりとココアを飲む)
それを個々人の間で定義するために、こういう時間があるんじゃないのかい?
(緩く首を傾げて訊ね)
…………heh、流石、人生経験長いだけある。
そうだな、オレは……そういう時間の積み重ねが少なすぎるんだよな。(苦そうに笑って)
…ま。ニンゲンの心だし、そう簡単に上手くいかないのもしょっちゅうだけどね。
アタシだって最初からこうというわけでなく、ここ五十年ほどさいきんの学びで少しずつやり方を身に付けたし。
ましてや、料理に愛情を込めるなんて最近も最近さ。
──美味しいと言ってくれて、心底嬉しいよ。
(甘く微笑みかけると、自分も温かなココアを少しずつ飲んで)
……うん、……うん。
最初から上手くいくことなんてないよな。
失敗して、傷付けて、傷付いて……そうしないと学べないことは、きっと多いんだよな……。

……こっちこそ、いつも色々作ってもらって……
アンタやクウハのおかげで、食事をすることが楽しいって思えるようになったんだ。
――――ありがとうな。オレもすごく嬉しいよ。
(目元が甘く緩んで、とろけるように微笑みを返す)

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