ギルドスレッド 商人ギルド・サヨナキドリ 希望ヶ浜怪異譚 断章編綴 【闇之雲】 武器商人 (p3p001107) [2021-04-30 12:57:07] [1] 葛籠 神璽と言う名前は本来の名ではない。不躾ではあるが神という字を名に入れ込むことで自身の存在を高位存在だと見なさせて貰った。 その理由というモノも、私が真性怪異という存在を追いかける上で命を落としをしない保証はないからだ。寧ろ、限りなく死に近いと考えた方が良いだろう。[2] 私が死を免れるために取った行動は自身の存在を何処かに残すことである。まず、私は幾つもの場所に書物との己の名を残した。 神という字を名に入れ込むことにより、神格として見なした己の存在を真性怪異の中に一つずつ組み込んだのだ。 [3] 故に、私は真性怪異と共に存在するだろう。もしも死したとしても葛籠 神璽と言う名前は語り継がれるのだ。 擬似的に神格に至った私は希望ヶ浜怪異譚の取っかかりを作る事とした。まず、それを確認するモノを準備するのだ。[4] 器が必要である。怪異を追い求めるモノ。それは、何時の日かこの場所に訪れる外を許容する者であろう。 音呂木の神職では駄目だ。そもそも、音呂木とは『御路木』『御途木』。神を支える者だ。希望ヶ浜という『幻想』を支えるためだけに存在しているのである。[5] ならば全く別の存在が良い。澄原家は混沌に染まりすぎている。その家からも真性怪異を追い求める者は居るだろう。 真性怪異は圧倒的に夜妖憑きに近い存在であるのは確かだ。 だが、彼女たちでは手に負えないだろう。無残に殺されて終いだ。全く外の、希望ヶ浜に関係の無い存在がいい。[6] 希望ヶ浜に関係の無い存在の何が良いのか。私はソレを此処で記しておこうと思う。それらは再現性東京希望ヶ浜という土地に結びついては居ないのだ。希望ヶ浜で生まれようとも、混沌世界という別の神と縁を結ぶ者たちも居るだろう。 彼らは私達に与えられた真性怪異への『しきたり』には結ばれていない。[7] 真性怪異という存在は『しきたり』の元で生まれ落ちている。希望ヶ浜に縁が結ばれた存在はそれらの生まれに深く根付いているのだ。 真性怪異は『信仰』から生み出される。元来、神格というのは『解することの出来ない超常存在』(※)なのだ。 神様を殺した事があるとは言うなかれ。それを、現実的に『ファンタジーなど否定するこの場所』で有り得るだろうか。(※)原文は『買いすることの出来ない超常存在』[8] つまり、神様を殺せない事が魂に刻まれている『ファンタジーも魔法も何もかもがない』再現性東京希望ヶ浜の人間は真性怪異には太刀打ちできないのだ。 だが、心霊的存在(怪異が此れに当たる)は神職やソレに類するモノ、霊媒師が祓うのがお決まりだ。故に、ある程度の対抗能力を巫女などが持っているのは可笑しな事ではない。[9] だが、巫女が真性怪異を害することはできない。真性怪異とて、巫女を害することはない。互いに別のテリトリーの存在だからだ。 恐ろしい目に合ったならば巫女を頼りなさい。巫女は道だ。……そうは言いながらもこの書物を読んでいるのならば君たちは逢坂の真性怪異に呪われたことになる。どうして呪われたかを次項で語ろう。[10] 逢坂に存在する真性怪異は『蛇』だ。そう言うしか有り得ない。『蛇神』信仰は様々なパターンが存在して居る。 あの島に存在する住民達は『アリエ(アマビエ)』が占った吉凶で凶たる長持を開けてしまった愚か者だ。 蛇に呪われ、地(血)に縛り付けられているのである。[11] 縛り付けられた彼等の中で時折、血が薄れた者達は真性怪異たる神に許されて外へと出る。 それが逢坂に嫁ぐ者である。だが、その子の血が薄れているとは限らない。嫁ぎ先である逢坂の住民が『御島の住民』であった過去があれば、巡り巡って血は蛇を求めるだろう。[12] 蜷局を巻いた山を見ただろう。それは彼女そのものだ。 ああ、彼女と言ったが、君たちが呪われた理由を語るのが先立ったね。 彼女の体の中を不躾に歩き回ったからだ。しかも、夜だ。逢った者も居るだろう?[13] 日中は護島(後藤)が確りと君たちの行く手を遮って『目』の役割を果たしていただろう。 彼等は皆、彼女の子だ。彼女に呪われ彼女に憑かれた存在だ。彼女はずっと君達を見て居たのだ。 淑女の懐に入り込まないようにと彼等は逐一気を配っていたのだろう。[14] 最初に言われただろうが、この島は帰るならば易い。気をつけるだけで良いのだ。 気をつけて居れば、調査を無事に終えて帰る事もできたろう。だが、余りに首を突っ込めば簡単に彼女が会いに来て呉れる。[15] 勿論だが、私も彼女には会ったさ。黒い髪の、美しい(此処から文字が乱れている) 何の話だったか……ああ、そうだ。君たちが呪われた理由だった。 そう、君たちは彼女を怒らせたんだ。簡単だろう。[16] だが、一命を取り留め、『軽い呪い』で済んだから帰れたのだろう。 地に縛られなかったのは島民のお陰だろうか。 厄除け人形は使ったかい? 手にしていた者も居るだろう。それは彼女の食事だよ。[17] 彼女はそうしたモノを喰らって生きている。永らえるためにね。 そうして、ソレを喰らってから吉兆を占うのだ。海の底から、厄を集めて吉と成すように。 海は母だ。母なる大海に抱かれていた蛇のその御身は洞に頭を垂れていることだろうね。[18] まさか洞に入った者は居ないだろうか。 居たならば傑作だ! 彼女の頭を思う存分踏み倒してきたのだね。 嗚呼、私もソレはしてみたかった! 怪異の頭を踏んだことは真性怪異と出会ってきたが、そうそう無い。[19] 頭を不躾に踏まれ、淑女の体を荒らし回って怒らせた君たちはもう気付いているだろうが、彼女は怒っている。 怒っている代わりに護島の住民が幾人か減っただろうね。 何せ、彼等の管理不足だ。彼等は目であったはずなのに、その目の役目を全うしなかったのだから。[20] 神域には踏み入れることは叶っていないだろうが。見ない方が良い。 其処は唯の食事処だ。蛇で有ることを感謝しよう。丸呑みで済むのだから。 そもそも、有柄の島自体が彼女の体だろうって?[21] ああ、それも確かなことだ。そもそも、彼女の首が一つだとは誰も言っては居ない。 信仰が混ざったこの場所で、彼女は三つの首を持っているのだ。[22] 美しい彼女は無数の女神が混ざった存在だと言えるだろうね。アリエとしての能力を所有し、神としての能力を有する。 元はと言えば、この島は沖の御島と呼ばれている。つまり、彼女は治水のために山を穿って水を流してこの島を作ったのだ。[23] だが、その伝承がもとで彼女は囚われることとなった。島そのものが彼女の体となった。一つの首は逢坂(あふさか)へ繋がった。 もう一つは、島の山頂に座した。そして、あと一つが君たちが踏み付けたものだ。[24] 所で、蛇の体の中を歩き回るのはどんな感覚であったかい? 私は楽しかったさ。 怪異を研究してきて良かったとも思う。木偶……石神の少女と再会の約束をした事を思い出したのは偶然だと思いたいが。[25] もう二度とは会えない相手を思い出すというのは、その相手が私を呼んでいると言うことだろうか。 いけないね。神という存在はどうにも境界を曖昧にする。山そのものが彼女の体であった事を念頭に、私はこの結論をおいておこうと思う。[26] 彼女は自身のテリトリーに入った存在を全て最初から認識していた。 そして、彼女のテリトリーは『異界』だ。海で隔てて隔絶されていたる。だが、其処に存在して居た『人々の営み』がソレを中和していたのだろう。 一番上の首は神域であり、其れ等全てを喰らう機会を待っていた。君たちが呪われたのであれば、君達は食べ頃であったのだ。[27] だが、食べられなかったのは島を守る人々のお陰だ。改めて感謝して置くが良い。 君たちが帰宅してから幾人食べられただろうか。彼女は暫くはそれで満足するだろうね。[28] もう一つ。私から重要な情報を与えておこう。彼女は非常に『扱いやすい』怪異だ。 踏み入れなければ影響はない。中に居れば何時食われるか分からないという恐怖が『憑いて』くるだろうがね。 恐怖で人々を支配している。それがこの怪異の正体だ。[29] 故に、恐れなければ君たちは彼女に勝ることも出来る。 私はソレに来してこの項を残すことにした。全項で30に分割されているがね。[30] 最期となったが、私が生きている保証は何処にもない。 だが、私を追えば真性怪異と出会えるだろう。いつか、君たちが真性怪異全てを殺し尽くすときに。 信仰を失った者達がどうなるかを。 私は、見てみたいと思う。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
葛籠 神璽と言う名前は本来の名ではない。不躾ではあるが神という字を名に入れ込むことで自身の存在を高位存在だと見なさせて貰った。
その理由というモノも、私が真性怪異という存在を追いかける上で命を落としをしない保証はないからだ。寧ろ、限りなく死に近いと考えた方が良いだろう。
[2]
私が死を免れるために取った行動は自身の存在を何処かに残すことである。まず、私は幾つもの場所に書物との己の名を残した。
神という字を名に入れ込むことにより、神格として見なした己の存在を真性怪異の中に一つずつ組み込んだのだ。
[3]
故に、私は真性怪異と共に存在するだろう。もしも死したとしても葛籠 神璽と言う名前は語り継がれるのだ。
擬似的に神格に至った私は希望ヶ浜怪異譚の取っかかりを作る事とした。まず、それを確認するモノを準備するのだ。
[4]
器が必要である。怪異を追い求めるモノ。それは、何時の日かこの場所に訪れる外を許容する者であろう。
音呂木の神職では駄目だ。そもそも、音呂木とは『御路木』『御途木』。神を支える者だ。希望ヶ浜という『幻想』を支えるためだけに存在しているのである。
[5]
ならば全く別の存在が良い。澄原家は混沌に染まりすぎている。その家からも真性怪異を追い求める者は居るだろう。
真性怪異は圧倒的に夜妖憑きに近い存在であるのは確かだ。
だが、彼女たちでは手に負えないだろう。無残に殺されて終いだ。全く外の、希望ヶ浜に関係の無い存在がいい。
[6]
希望ヶ浜に関係の無い存在の何が良いのか。私はソレを此処で記しておこうと思う。
それらは再現性東京希望ヶ浜という土地に結びついては居ないのだ。希望ヶ浜で生まれようとも、混沌世界という別の神と縁を結ぶ者たちも居るだろう。
彼らは私達に与えられた真性怪異への『しきたり』には結ばれていない。
[7]
真性怪異という存在は『しきたり』の元で生まれ落ちている。希望ヶ浜に縁が結ばれた存在はそれらの生まれに深く根付いているのだ。
真性怪異は『信仰』から生み出される。元来、神格というのは『解することの出来ない超常存在』(※)なのだ。
神様を殺した事があるとは言うなかれ。それを、現実的に『ファンタジーなど否定するこの場所』で有り得るだろうか。
(※)原文は『買いすることの出来ない超常存在』
[8]
つまり、神様を殺せない事が魂に刻まれている『ファンタジーも魔法も何もかもがない』再現性東京希望ヶ浜の人間は真性怪異には太刀打ちできないのだ。
だが、心霊的存在(怪異が此れに当たる)は神職やソレに類するモノ、霊媒師が祓うのがお決まりだ。故に、ある程度の対抗能力を巫女などが持っているのは可笑しな事ではない。
[9]
だが、巫女が真性怪異を害することはできない。真性怪異とて、巫女を害することはない。互いに別のテリトリーの存在だからだ。
恐ろしい目に合ったならば巫女を頼りなさい。巫女は道だ。……そうは言いながらもこの書物を読んでいるのならば君たちは逢坂の真性怪異に呪われたことになる。どうして呪われたかを次項で語ろう。
[10]
逢坂に存在する真性怪異は『蛇』だ。そう言うしか有り得ない。『蛇神』信仰は様々なパターンが存在して居る。
あの島に存在する住民達は『アリエ(アマビエ)』が占った吉凶で凶たる長持を開けてしまった愚か者だ。
蛇に呪われ、地(血)に縛り付けられているのである。
[11]
縛り付けられた彼等の中で時折、血が薄れた者達は真性怪異たる神に許されて外へと出る。
それが逢坂に嫁ぐ者である。だが、その子の血が薄れているとは限らない。嫁ぎ先である逢坂の住民が『御島の住民』であった過去があれば、巡り巡って血は蛇を求めるだろう。
[12]
蜷局を巻いた山を見ただろう。それは彼女そのものだ。
ああ、彼女と言ったが、君たちが呪われた理由を語るのが先立ったね。
彼女の体の中を不躾に歩き回ったからだ。しかも、夜だ。逢った者も居るだろう?
[13]
日中は護島(後藤)が確りと君たちの行く手を遮って『目』の役割を果たしていただろう。
彼等は皆、彼女の子だ。彼女に呪われ彼女に憑かれた存在だ。彼女はずっと君達を見て居たのだ。
淑女の懐に入り込まないようにと彼等は逐一気を配っていたのだろう。
[14]
最初に言われただろうが、この島は帰るならば易い。気をつけるだけで良いのだ。
気をつけて居れば、調査を無事に終えて帰る事もできたろう。だが、余りに首を突っ込めば簡単に彼女が会いに来て呉れる。
[15]
勿論だが、私も彼女には会ったさ。黒い髪の、美しい(此処から文字が乱れている)
何の話だったか……ああ、そうだ。君たちが呪われた理由だった。
そう、君たちは彼女を怒らせたんだ。簡単だろう。
[16]
だが、一命を取り留め、『軽い呪い』で済んだから帰れたのだろう。
地に縛られなかったのは島民のお陰だろうか。
厄除け人形は使ったかい? 手にしていた者も居るだろう。それは彼女の食事だよ。
[17]
彼女はそうしたモノを喰らって生きている。永らえるためにね。
そうして、ソレを喰らってから吉兆を占うのだ。海の底から、厄を集めて吉と成すように。
海は母だ。母なる大海に抱かれていた蛇のその御身は洞に頭を垂れていることだろうね。
[18]
まさか洞に入った者は居ないだろうか。
居たならば傑作だ! 彼女の頭を思う存分踏み倒してきたのだね。
嗚呼、私もソレはしてみたかった! 怪異の頭を踏んだことは真性怪異と出会ってきたが、そうそう無い。
[19]
頭を不躾に踏まれ、淑女の体を荒らし回って怒らせた君たちはもう気付いているだろうが、彼女は怒っている。
怒っている代わりに護島の住民が幾人か減っただろうね。
何せ、彼等の管理不足だ。彼等は目であったはずなのに、その目の役目を全うしなかったのだから。
[20]
神域には踏み入れることは叶っていないだろうが。見ない方が良い。
其処は唯の食事処だ。蛇で有ることを感謝しよう。丸呑みで済むのだから。
そもそも、有柄の島自体が彼女の体だろうって?
[21]
ああ、それも確かなことだ。そもそも、彼女の首が一つだとは誰も言っては居ない。
信仰が混ざったこの場所で、彼女は三つの首を持っているのだ。
[22]
美しい彼女は無数の女神が混ざった存在だと言えるだろうね。アリエとしての能力を所有し、神としての能力を有する。
元はと言えば、この島は沖の御島と呼ばれている。つまり、彼女は治水のために山を穿って水を流してこの島を作ったのだ。
[23]
だが、その伝承がもとで彼女は囚われることとなった。島そのものが彼女の体となった。一つの首は逢坂(あふさか)へ繋がった。
もう一つは、島の山頂に座した。そして、あと一つが君たちが踏み付けたものだ。
[24]
所で、蛇の体の中を歩き回るのはどんな感覚であったかい? 私は楽しかったさ。
怪異を研究してきて良かったとも思う。木偶……石神の少女と再会の約束をした事を思い出したのは偶然だと思いたいが。
[25]
もう二度とは会えない相手を思い出すというのは、その相手が私を呼んでいると言うことだろうか。
いけないね。神という存在はどうにも境界を曖昧にする。山そのものが彼女の体であった事を念頭に、私はこの結論をおいておこうと思う。
[26]
彼女は自身のテリトリーに入った存在を全て最初から認識していた。
そして、彼女のテリトリーは『異界』だ。海で隔てて隔絶されていたる。だが、其処に存在して居た『人々の営み』がソレを中和していたのだろう。
一番上の首は神域であり、其れ等全てを喰らう機会を待っていた。君たちが呪われたのであれば、君達は食べ頃であったのだ。
[27]
だが、食べられなかったのは島を守る人々のお陰だ。改めて感謝して置くが良い。
君たちが帰宅してから幾人食べられただろうか。彼女は暫くはそれで満足するだろうね。
[28]
もう一つ。私から重要な情報を与えておこう。彼女は非常に『扱いやすい』怪異だ。
踏み入れなければ影響はない。中に居れば何時食われるか分からないという恐怖が『憑いて』くるだろうがね。
恐怖で人々を支配している。それがこの怪異の正体だ。
[29]
故に、恐れなければ君たちは彼女に勝ることも出来る。
私はソレに来してこの項を残すことにした。全項で30に分割されているがね。
[30]
最期となったが、私が生きている保証は何処にもない。
だが、私を追えば真性怪異と出会えるだろう。いつか、君たちが真性怪異全てを殺し尽くすときに。
信仰を失った者達がどうなるかを。
私は、見てみたいと思う。