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ギルドスレッド

廃墟

序章

 樹木に侵食された廃墟。
 かつては誰かの館だったのであろうそこは、古ぼけ、ひび割れ、大きな樹木に侵食されていた。
 一部の天井は崩落し、代わりに、天然の緑の傘が雨風を遮っていた。
 晴れれば、きらきらと木漏れ日が降り注ぐその真下に、壊れたソファーに身を丸めるようにして眠る男の姿が見られることだろう。

「……雨風は、凌げる」

 あなたに気づいた男は、どこか虚ろなオッドアイであなたを見つめた。じっと。虚空を見つめる猫のような瞳は、あなたから逸らされない。

「水は裏手に井戸があるし、暖炉も竃もあるから火も入れられる」

 囁くような、呟くような、平淡で小さな声。
 張る気もなさそうな不親切なその声をよく聞けば、それはどうやら、この廃墟についての事柄を羅列しているようだった。
 気怠そうに持ち上がった白く細い指が、窓の向こうと、まだ屋根の残る部屋の隅と、そのさらに奥の部屋へ続く扉を指差した。

「煮炊きも、出来る。風呂も、水を入れて沸かせば、入れなくはない」

 訥々と、ただこの廃墟についてを語った男は、ぱたりと力尽きたようにその腕を自分の薄い胸の上に落とした。
 くあ、と眠そうな大きなあくびをひとつ。壊れて軋むソファーの上でまた身体を丸め、目立つ瞳を閉じた。

「……居心地は、それなり、かな」

 あなたは、踵を返して出て行ってもいい。
 この野良猫のような男と、会話を試みてもいい。


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