PandoraPartyProject

ギルドスレッド

練達の一軒家

室内

外観は少々古めかしい一軒家。
玄関を開けると部屋も廊下もないぶち抜きの空間が広がっている。
大部分は板敷きの道場スペース。
壁際にベッドとキッチン、シャワーに洗濯機など最低限の生活インフラがある。
別の一角には今までに行った依頼で貰ったのだろう様々な品が置かれていた。

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――。
(板敷の間。平服。ただの丸木がエーレンの前、おおよそ10mほどの所に固定も何もされずに立てられている。一足一刀の間合いにはあまりにも遠かったが、男は腰を落とした抜刀の構えを取っている)
ぴんぽーん(チャイム)
ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽん(連打)

エーレンさん!
いますか!!
その声は……ユーフォニーか。
(扉を開ける。いつもどおりの男の顔。というより男が表情を乱すところをユーフォニーはほとんど見たことがないはずだ)

どうしたユーフォニー、そんなに急いで。何か困りごとか?
喜んで運んでいくぞ。
あ、良かったいました
困りごと…?
そうですね、困りごとです。

エーレンさん。妹分として兄貴分に聞きます。
なんで咲良さんを泣かせたんですか!
……。そうだな。俺とも交友のあるユーフォニーが咲良の相談相手としては最適だな。
(眉根を寄せて口元を歪める。ユーフォニーがついぞ見たことのない苦悩の表情)

……立ち話もなんだから、とりあえず入るといい。
あと、多分あまり気分のいい話ができないことだけ承知しておいてくれ。
……わかりました。お邪魔します。
(エーレンさんのあとに続き部屋へ入る)

それで……何があったんですか?
(招かれるとその中は一軒家……というより、「道場に最低限の生活施設がくっついている」と言った方が適切な佇まい)
(机といすも小さなものが一つずつしかないので、それをユーフォニーに勧めて自分はベッドに腰かけた)

……何があったと聞かれたら「咲良から告白されたが俺が手酷く振った」だ。
いや、正確には断りの返事もできていないが。結局告白されたことに拒否反応が出て、汚い話で申し訳ないが食べていたものが全部上から出てきてしまったから。
(勧められた通り椅子に座る)

「手酷く振った」? 自覚あるんですね?
…………恋愛に、何かトラウマでもあるんですか。
(手酷く振った、の言葉に一瞬怒ったような表情をするが、拒否反応のことを聞き心配が混じった複雑な表情をしている)
……彼女には申し訳ないことをした。
(眉根を寄せて唇を一文字にした深刻な表情は嘘ではなさそうだ)

恋愛にトラウマがあるわけではないんだ。
ただ……俺の育った世界では、俺が誰かと結ばれることはその誰かが得るはずだった幸せな人生を台無しにしてしまうのと同義。

混沌世界では事情が違うと分かっていても、体の反応は止められなかった。
エーレンさんが結ばれることが、誰かの人生を…?
それってどういう…呪い、みたいな…?
(初めて聞く内容に驚くとともに、さっきまでの勢いが弱まる)

……ごめんなさい。
勢いでつい、責めてしまって。
まずは……今は、体調は大丈夫ですか?(心配そうに)
ああ、ありがとう。そして気にするな。ユーフォニーの怒りは当然だ。
いつも通りに動けるから問題ない。技の精度も見ての通りだ。
(ただ立てられているだけの丸太を示す。根本に埃のようなものが積もっている)

……それを説明するにはまず俺の出身世界の説明をせねばならん。
ユーフォニーの世界はどんなだった?
それなら、良いんですけど…。(少し安堵した表情を見せる)

……私の世界はわかりません。
召喚前のことは何も覚えてないんです。目を閉じれば、微かに聴こえる音と淡く感じる色があって、それが鍵だとは思うんですけど…。
でも、今の世界が大好きだから。わからないことはわかる時が来るまで、気にしなくていいかなって。

……エーレンさんの世界は?
(じっとその瞳を覗くように。でも、急かすような素振りはなく)
なるほどな。
それにユーフォニーにはムサシがいるんだろ?
どんな世界であれ、幸せな人生のパートナーがいるのは素晴らしいことだ。
(元の真顔に戻って頷く。他人の幸せを喜ぶのはこの男には本当にいつものこと)

……さて、俺の世界だが。
練達のアニメなどで「剣と魔法のファンタジー」という言葉を聞いたことはあるか? あれが近い。神がいて魔王がいて、魔王が暴れると勇者が現れて神の加護を得てこれを打ち倒す。
大昔に変わり者の勇者がいてな。打ち倒すべき魔物とも共存したいと願った。
これも変わり者だった人間が好きなサキュバスと意気投合し、協力して魔王を討った。
その結果……どうなったと思う?
……そうですね。


……ハッピーエンド、じゃないんですか。
(そうあってほしいと思いつつも、違うのだろうなという気持ちが混ざりつつ)
概ねハッピーエンドだ。
新たな魔王となったサキュバスの影響で、その世界の魔物は全て一夜にして美少女になった。
それも人間の男性が恋愛的な意味でも性愛的な意味でも大好きな、な。
(ユーフォニーの表情に暗いものが混ざってきたのを見て取って少し声を明るくする)
そういった経緯で、俺の元の世界では男はほとんど全員魔物娘と結ばれている。
それも生涯たった一人の男と結ばれて色々な意味で愛し合う、な。
あ、男が人間の女性と結ばれるのもそれはそれで彼女らは歓迎だそうだ。

これは新魔王の第104王女から聞いた話なんだが、魔物娘たちが愛し合うことで魔王の力も増していって、やがては神の定めに逆らってもっと世界中が自由でハッピーに生きられる世界になるらしいぞ。

長くなったので纏めると、俺の世界では結婚相手の女性は『愛』と『性』の両輪でもって伴侶と幸せな人生を進んでいくんだ。
だからこそ……俺が女性と結ばれるというのは、その女性が得られるはずだった幸せな人生を台なしにしてしまう最悪の事態なんだよ。だからそのショックで醜態を晒した。
それ、は…………。
(しばし俯き考える。初めて知る兄貴分の過去に、驚きとショックと、何と言葉をかけるべきなのか迷う)

………………。
なんて言っていいのか、ごめんなさい。いい言葉が見つからなくて。

だけど。……だけど、咲良さんは強いです。
もし混沌の世界においても、エーレンさんが相手の幸せな人生を台無しにしてしまう、というのが続いていたとして……咲良さんとなら、そんな事態だって乗り越えられるんじゃないでしょうか。
覇竜が大変な時。私、2人にすごく助けてもらいました。
もちろんそれ以外の依頼でだって。
2人の強さは一緒にいたからこそ知ってるつもりです。
2人でなら…エーレンさんと咲良さんなら、ううん、だからこそ。そんな最悪の事態さえ何とかできるんじゃないかって、思いました。

……つらくて苦しいことだとしても。エーレンさん自身が、咲良さんを嫌いでないのなら。
原因が、元の世界のことであるのなら。
もう一度、咲良さんとしっかり話してみてもらえないでしょうか…!
……。
(真顔を保ったままユーフォニーの訴えを時折頷きながら聞いている)
……何か誤解が生じている。
俺と二人なら、じゃないんだよ。
咲良のような、初夏の太陽みたいな魅力的な女性に俺のような人間の出来損ないは相応しくない。

……事情を隠したまま分かってもらおうというのが無理筋だな。
あまり言いたくはないが、この際だ。
(ふっ、と短く息をついた)

話に関係はあるから素直に答えてくれ。
ユーフォニーは俺のことをどう思っている。
頼りになる兄貴分、です。
私が初めて、混沌での依頼に参加した時からずっと。

エーレンさんが自分のことを出来損ないと思うのは自由です。
だけど、咲良さんに相応しい相応しくないを自分だけで決めるのは違うと思います。
……事情って、どういうことですか。
そんなはずはない。俺にそんな価値があるはずはない。
この少女の発言には何か裏があるはずだ。罰ゲームか何かだろうか。それとも美人局の類か。
あるいは本気で言っているならこの少女の人を見る目は大丈夫なのだろうか。
(「頼りになる兄貴分」と聞いて能面めいた無表情な唇から出てきたのはその信頼を全否定する言葉)

……というようなことを俺は反射的にいつも思っていた。
ユーフォニーに限らず咲良の好意もムサシの信頼も依頼人からの感謝の言葉も全て。すべてだ。
一応頭ではそんなことはないと分かっているんだが、頭で考える前にそういうのが出てくる。
これを明かすと絶対相手はいい気分がしないから隠してたんだがな。
分かるか、俺の人からの好意や信頼を受け取れない性質。
俺は人から愛されても愛せないし、信じられても信じられないんだよ。

これが他人のことであれば自分だけで決めるのは違うと俺も思うが。
モノには限度というものがある。
それ、は……。
(初めて直接聞いた言葉に、しばし愕然とする)

(このひとは、この考えが染み付くまでの間、どれほどのことを……どれほどの思いをしてきたんだろう。
きっと、苦しいとかつらいとかには収まりきらなくて……どれほどの、思いを……)

(しばし俯き考え、それでも、とまっすぐエーレンさんの顔を見る)
エーレンさんは、自分が誰かを愛せることを……信じることができることを……そういう"可能性"を掴もうとは、もう、しないんですか。
できるできないじゃなくて、したく……ないんですか。
イレギュラーズに可能性で論じるのは若干卑怯な気がするぞ、ユーフォニー。
(苦笑交じりに感想を零す。それでも返答を探して考えるあたり、男の善性自体は根っからのものなのだろう。自分が苦しいことを厭わない)

このたとえが適切なのかはわからないが……海種でもない魚は、空気を呼吸するように生まれついていないだろう?
それと同じように、多分俺は「そういうもの」として生まれてきてしまったんだろう。
この上なく偉大な父と母のもとに生まれて、その血を継いで優秀な兄と姉を見て育って……どうして俺ひとりだけ身体も、頭も、魔力も、人格さえも。

……なぜ『エレ』になってしまったんだろうな、本当に。
「そういうもの」として生まれてきてしまったかどうかは、私にはこの場ではっきり言えません。
エーレンさんの生まれ育った世界をこの目で見たわけじゃないから。
だけど、エーレンさんがそう考えるのは……生まれた場所や周りのせい、なんじゃないでしょうか。

繰り返しますが、私が知っているエーレンさんは頼りになる兄貴分です。
初めて依頼に参加した時からずっと。
もし、生まれた場所や育ってきた場所が違えば…私がこう思うことも、まっすぐ受け取ってくれたのでしょうか…。
生まれた場所や周りの生活……。
(ユーフォニーの言葉を舌の上で転がしてみる。瞳から焦点が消えて顔色が一段階悪くなったことに本人は気づいていない。ユーフォニーはどうだろうか)

その発想はなかったが……どうだろうな、それは。
ただ衣食住に困ることはなかったし、教育も修行もできた。……親と家臣たちの期待した、兄姉たちに比肩する水準に到達することはただの一度もなかったがな。
………………。(顔色の変化に気づく。)

……やっぱり周りの環境のせい、なのでは?
エーレンさん、気づいてないかもしれませんが……私がそう言った途端、顔色、悪いです。
……大丈夫ですか?
……。
(二、三度目をしばたかせ、腕や体幹の動きを確かめる)
いや、大丈夫だ。

ちなみにこれは非難否定の文脈ではなく、純粋な疑問として捉えてほしいんだが。
俺のこれが生まれと環境のせいだったとして……何かが変わるのか?
結局ユーフォニーに手間をかけて、咲良を傷つけるあまり性質の良くない男だということは変わらない気がするんだ。

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