ギルドスレッド
森の洋館
(草木が歌い、砂糖菓子の蝶が舞い踊る、不思議な不思議な森の奥。
幾重もの茨に護られて、二人の少女が眠っている。)
幾重もの茨に護られて、二人の少女が眠っている。)
作り物よりも作り物らしい赤い少女の贋作は、さも最初からそうあるのが自然だったかのように動かない。縋るように永遠の娘に抱きついたまま。一足先に、異なる終幕へとその視点 を封じてしまっている。
故にここにあるのは亡骸、というよりは……抜け殻、だろうか。本来コレに身体は不要であり、用途も亡くなってしまった今、ここにある"赤いもの"は、少なくとも卮濘と呼ばれていた原子と魔力の集合体の名残である。
故にここにあるのは亡骸、というよりは……抜け殻、だろうか。本来コレに身体は不要であり、用途も亡くなってしまった今、ここにある"赤いもの"は、少なくとも卮濘と呼ばれていた原子と魔力の集合体の名残である。
(コツコツと、敢えて足音を響かせて石畳を歩く。
妹分の庭に訪れた際、茨が茂っている事はこれ迄にもあった。
…棘のある茨を張り巡らせ、来訪を拒んでいるようで、実のところは違う。
以前まではそうだった。
だが今は…どうだろうか。
胸中を騒つかせる躊躇いごと切り伏せるように、道を阻む茨へ向けて、手にした大鎌を振り下ろそうと)
妹分の庭に訪れた際、茨が茂っている事はこれ迄にもあった。
…棘のある茨を張り巡らせ、来訪を拒んでいるようで、実のところは違う。
以前まではそうだった。
だが今は…どうだろうか。
胸中を騒つかせる躊躇いごと切り伏せるように、道を阻む茨へ向けて、手にした大鎌を振り下ろそうと)
『……起こすのかい?』
(クウハが茨を切り払らわんとするその間際、穏やかな声が静かに響く。
声の方角へ視線を向ければ、四肢と尾に焔を宿した白狼がそこにいる事に気がつくだろう。
白狼は僅かに頭を傾げ、穏やかな瞳であなたを見ている)
(クウハが茨を切り払らわんとするその間際、穏やかな声が静かに響く。
声の方角へ視線を向ければ、四肢と尾に焔を宿した白狼がそこにいる事に気がつくだろう。
白狼は僅かに頭を傾げ、穏やかな瞳であなたを見ている)
…ルクスか。
(何処かで声を掛けてくるだろうと予想はしていた。
だから驚く事はない。
振りかぶった鎌を静かに下ろし、白狼に向き直って)
……アイツらにとっちゃ迷惑かもしれねェが。
起こしたいと、そう思ってる。
駄目か?
(何処かで声を掛けてくるだろうと予想はしていた。
だから驚く事はない。
振りかぶった鎌を静かに下ろし、白狼に向き直って)
……アイツらにとっちゃ迷惑かもしれねェが。
起こしたいと、そう思ってる。
駄目か?
『起こせばきっと、ルミエールは怒るだろうね。
もしかすると、泣き喚いて君を詰るかもしれない。
もう一人の彼女は目覚めるかどうか』
(茨の向こう側で眠る二人の少女。
夢に堕ちた二人に視線をやって、白狼は青い瞳を細める)
『でもさ。おかしいよね。
こんな場所で眠るなんて。
誰にも邪魔されたくないのなら、他の場所で眠るべきなのにさ』
(おかしいよね。
もう一度そう繰り返し、白狼はあなたの顔を見上げる。
青い焔が静かに揺れた)
もしかすると、泣き喚いて君を詰るかもしれない。
もう一人の彼女は目覚めるかどうか』
(茨の向こう側で眠る二人の少女。
夢に堕ちた二人に視線をやって、白狼は青い瞳を細める)
『でもさ。おかしいよね。
こんな場所で眠るなんて。
誰にも邪魔されたくないのなら、他の場所で眠るべきなのにさ』
(おかしいよね。
もう一度そう繰り返し、白狼はあなたの顔を見上げる。
青い焔が静かに揺れた)
………、
(茨の檻に護られて眠る少女の呼吸が僅かに乱れる。
白狼は少女の眷属 で、不思議の森は少女の庭だ。
此処は少女の胎の中。
自身の胎の中で起きている事など、手に取るように解る。
酷く疎ましく憎らしく妬ましく。
それ以上に愛おしい存在の気配。
腕の中で眠る少女にも其れは共有されている。
――私の可愛い願望器。貴女はどうしたい?
微睡みの中問いかけて、自身に縋る彼女を抱く力を強める。
……彼女の手を引いた時から決めていた。
自分は。自分だけは。
この子の味方でいてあげようと)
(茨の檻に護られて眠る少女の呼吸が僅かに乱れる。
白狼は少女の
此処は少女の胎の中。
自身の胎の中で起きている事など、手に取るように解る。
酷く疎ましく憎らしく妬ましく。
それ以上に愛おしい存在の気配。
腕の中で眠る少女にも其れは共有されている。
――私の可愛い願望器。貴女はどうしたい?
微睡みの中問いかけて、自身に縋る彼女を抱く力を強める。
……彼女の手を引いた時から決めていた。
自分は。自分だけは。
この子の味方でいてあげようと)
…………ぴくり。
永く、眠っていた殻が抱かれて動く。
夢から覚めなければならないのか。
現廃なる世にもう未練はないのに。
……ないのに。
(もう、何もしたくない。何も願いたくない。何も必要ない。私は死んだの。死者は眠り無へと帰すのが摂理。一つの堕落者が独りよがりの恋をして破れただけ。だから、もう、いいの)
代わりにと虚なる竜の死神の空想が近くに現れ、何もせずただ現実を歪ませている。
永く、眠っていた殻が抱かれて動く。
夢から覚めなければならないのか。
現廃なる世にもう未練はないのに。
……ないのに。
(もう、何もしたくない。何も願いたくない。何も必要ない。私は死んだの。死者は眠り無へと帰すのが摂理。一つの堕落者が独りよがりの恋をして破れただけ。だから、もう、いいの)
代わりにと虚なる竜の死神の空想が近くに現れ、何もせずただ現実を歪ませている。
……そうだな。
(ルクスの視線を受けて苦笑する。
確かに、見付かりづらい場所ではあるかもしれない。
だがそれは、ルミエールを識る者が誰 も 探 そ う と し な け れ ば という前提に基づく。
そもそもの話、その気さえあれば己 を締め出す手段など幾らでもある筈だ。
だが二人は今、姿を隠すことすらせずそこで眠っている。
まるで、見つけ出してくれる誰かを待ち望んでいるかの様に)
ありがとな。
お陰で吹っ切れたよ。
(再び鎌を振り上げて、今度は一切の迷いなくその刃を茨に振り下ろす)
(ルクスの視線を受けて苦笑する。
確かに、見付かりづらい場所ではあるかもしれない。
だがそれは、ルミエールを識る者が
そもそもの話、その気さえあれば
だが二人は今、姿を隠すことすらせずそこで眠っている。
まるで、見つけ出してくれる誰かを待ち望んでいるかの様に)
ありがとな。
お陰で吹っ切れたよ。
(再び鎌を振り上げて、今度は一切の迷いなくその刃を茨に振り下ろす)
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二人きりのエンドロール。
例えそれが
悲しむことにも、痛むことにも、虚しさに溺れることにさえも、もう疲れてしまったから。
だからこれでいい。これがいい。
現実はとても残酷だから。
……けれど現実は。
二人が思うより、きっと、ずっと。