PandoraPartyProject

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森の洋館

【RP】パンドラの夜

「明けない夜はない」と人は言う。
ならば、各々の胸を覆う暗雲もいつか晴れる日が来るのだろうか。

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………。
(星の見えない静かな夜。
人気の無い廃墟の屋上で、今にも崩れ落ちそうな錆びついた柵に寄りかかって夜空に浮かぶ月を眺めている)
(金の髪に青の薔薇。
御伽の国から抜け出た様な少女が黒のグローブを嵌めた手を握り、廃墟の階段を登っていく)

…大丈夫よ、大丈夫。
白亜の星、泣かないで?
もう少しよ。もう少し。

(少し背伸びして、お姉さんぶって、繋いだ手を揺らしながら屋上へ歩を進めようと)
……あぁ、ごめん、な。ルミエール……。

(少女に手を引かれて階段を登るその姿は、惨憺たるものだ)
(骨だけの身体の、その背中から、腕から、足から、腰から、頭から、色んな箇所から緑色の羽が不格好に生えている)
(まるで合成獣キメラ)のような出で立ちで、スケルトンの男は一歩ずつ歩を進めた)
(身体から溢れる魔力は赤、青、緑、黄と、もはや絵の具を混ぜたような不思議な色で揺らめいている)
…あ?
(二人分の声と足音が空虚な廃墟に響き、屋上に佇むクウハの耳へと届く)

(口慰みの煙草に火をつけようとしたその格好のまま振り返り、同じ主人を持つ愛らしい少女と異形と化した恋人の姿を認めると僅かに目を見開いて)

……オマエらなんでこんなトコに。
ファニー、オマエ……。
そりゃ一体どうしたんだよ?
(屋上へ辿り着き、足を止める。
驚いた様子のクウハをじっと見つめ、僅かに小首を傾げてみせて)

……ご機嫌よう、紫苑の月。
だけど今夜はいい夜じゃないわ。
貴方の星が泣いてるわ。
誰のせいかしら。貴方のせいよ。
駄目じゃない、勝手に迷子になっちゃ。

(責めるように、憐れむように、静かな声で言葉を紡ぎ、ファニーと繋いだ手を離してクウハの方へ優しく背を押そうと)
(ルミエールにそっと背を押され、焦点が合っているのか怪しい瞳で愛しい恋人を見つめる)
(そこにいる彼はまだ生きている。動いている。喋っている。けれどいつのようになってしまうか分からない)

(いやだ)
(いやだ)
(そんなのは、いやだ)

(引き摺るように床を滑るその足元から、薔薇の香りと赤い魔力が立ち昇る)

クウハ……行くなよ………どこにも……
……オレを……置いて、行くな…………!!

(悲痛な叫びと共鳴するように、真っ赤なイバラのツルが出現する)
(それは寸分の迷いなく、クウハの身体へ巻き付こうと一直線に伸びていった)
………!

(迫り来るイバラに一瞬身構える。
けれど逃げる素振りはなく、大人しく拘束を受け入れて)
…俺がオマエを置いて行くって?
そりゃ困ったな。そんな予定はないんだが。
悪い夢でもみちまったか?

(安心させる様に微笑みかけ、優しい声で)
(イバラの拘束を緩めないまま、おぼつかない足取りでよろよろとクウハに近付く)

heh、heh……まさかおまえがFunnyオレ以上の道化だったとはな……
……オレを、置いていかない?
……オレを、幸せにしたい?
馬鹿言うなよ…………自分てめぇの幸せすら考えられないくせに。

(微笑みが目障りだというように)
(優しい声が耳障りだというように)
(伽藍の奥に宿る灯は怒りを孕んで煌々と燃えている)
(茨に囚われる彼を見る。
脳裏に浮かぶのはいつかの夢。
溢れる黒。一面に咲き誇る黒い薔薇。
永遠の愛と約束の呪い………)

……何処にも行かない?本当に?
死んでしまいたいって、思っているのに?
今のまま生きている限りずっと貴方は苦しいのに……?

(迷いと哀しみに少女の青い瞳が揺れる。
クウハはまだ、此処に存在してくれている。
今も生きてくれている。
けれどそれは本当に、彼にとって幸福な事なのだろうか)
あー………。
(ファニーとルミエールを交互に見て、酷く困った顔をする。
どうやら心配されているらしいと、困惑した頭で理解して)

いや……。まぁ、確かにな?
苦しみがないとは言わないが、俺は充分幸せな環境にいると思うぜ?
夜中に出歩くのもいつもの事なんだが……。
それで不安にさせたんなら、次から書き置きなり残すようにすっからよ……。
(返ってきた言葉に、ぎり、と奥歯を噛み締める)
(重たい足でクウハに駆け寄り、その胸ぐらに掴み掛かった)

……もういっぺん言ってみろよ。
『俺はいま幸せです』って。
『何の不満もありません』って。
『優しい主人に愛されて、恋人二人に囲まれて、俺は幸せです』って。
…………オレの目を見て、そう言ってみろよ。

(爛、と光る赤い灯が、責め立てるように恋人を射貫く)
(その眼差しは魔力めいて、視線を通じて本心を覗き見ようとするかのようだ)
そりゃ多少の不満はあるが、ンなもん皆々そうだろうが。
愛してくれる主人も恋人も家族もいて、食うに困る状況でもない癖に不幸だなんだと喚く方がおかしな話だと思わねェか?
取り敢えず落ち着けって。どうしたんだよ……。

(胸倉を掴まれ、「何を大袈裟に」と言いたげに呆れた様子で溜息を吐く。
その本心の奥底では淀んだ黒い感情が静かに沸々と煮えていた)
……言えねぇか? ……言えねぇよな?
そうやって自分をんだもんな?
現実から目を逸らして、心の声から耳を塞いで、 そうやって逃げてりゃ楽に生きられるんだもんな?


……………………臆病者。


(一度も聞かせたことのない、恋人に向けられるべきではないはずの、低く唸るような声だ)
(口元は嘲笑するように笑んでいるが、目元はいまにも泣きそうに歪んでいる)
オマエ、なぁ………………。
(息を深く深く吸い、緩慢な動作で呼吸をする。
傲慢と強欲と憤怒と嫉妬を綯交ぜにして煮詰めた様な、ドス黒く暴力的な感情を内へ内へと沈め、目を逸らし)

……じゃあ聞くが、俺がその心の声とやらをブチ撒けた所で一体何が変わるんだ?
何も変わらないどころか、面倒な事になりかねないとしたら?
なら、にする方がマシだろ……。

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