とある区画でぷかぷかと煙草を燻らせている男が1人。

(店の見回りの合間に一服しているようだ)

ここが噂の支店か。なるほどしっかりサヨナキドリの看板背負ってやがる。
たのもーーー！！

ん……客か…？(自分の担当区画から声がした為、のんびりした様子で向かい)

……。（ゆっくりと商品を見て回る赤毛の男。相手の煙草の匂いで霞まない程度に、スパイシーな香水の香りを漂わせている）

うん…？あの男、なんか見た事ある様な。(どこで見たんだったか、と頭を掻きつつも特にアポイントメントは無かったため赤毛の男は一般客と判断して) いらっしゃい、何かお探しで？

どーも。（返事をしたはいいが、客扱いされれば目を見開く。顎髭をさすり、少しばかり思案した後）結構色々売ってるみたいだが、アトマイザーはあるか？香水を入れて持ち歩きたいんだが。

アトマイザー？(緩く首を傾げたが、直後に耳元でぽそりと男とも女ともつかぬ声が聴こえて) …ああ、でしたらパーリッシュフェアリーで取り扱いがありますね。ご案内しますぜ。(こっちにどーぞ、と赤毛の男を先導しようと)

……あぁ。（相手に促されるがままに、ゆっくりと歩きながら）それにしても立派な店だな。海洋には暫く振りに来たんだが、周りの景観もだいぶ変わってて驚きだ。馴染みだった飲食店も、この調子じゃなくなってそうだなぁ。

外から見るよりずっと広く見えるでしょう？それに見合って品物も豊富なんでぜひご贔屓に。他国の珍しい品もありますぜ。

景観に関しちゃまぁ、無理もねぇ。絶望の青を踏破して、豊穣へと続く航路が拓かれてから更に海洋は活発になりましたからね。日々海洋で仕事していますが、目まぐるしいモンで。

(階段を上り、扉をいくつか潜ると女性向けの内装の店が見える)

ああ、あそこがパーリッシュフェアリーなんですが……店員のねーちゃんに商品持って来させましょうか？

ふぅん。商魂逞しい、という程じゃねぇが悪くない。世間話も上々……。
（店が見えて来れば、にっこりと愛想よく笑い）
サンキューな。後でじっくり見させて貰うわ。……試すようで悪かったが、どんな接客するか気になったもんでねぇ。

俺は朝長晴明。サヨナキドリ本店で働いてる商人だ。

…あ？同業者？あー……なんか見た事ある顔してると思ったら、あの人の拾い物かアンタ。

なんだよ人が悪りぃなあ。わざわざ海洋側の入口を使わねぇで、サヨナキドリの中を通ってくりゃいいだろうに。あの人も教えてくれねぇし…愛想分の給料を別で請求したいくらいだぜ。

(赤毛の男が同業者どころかこのギルドの所属とわかると一気に人のよさそうな印象に気怠げなものが混じる)

そういうアンタも旦那の拾いモンか何かだろう？自分の物にはとことん甘いからな、旦那は。

俺だって元々、支店が出来てるなんて知らなかったんだよ。里の墓参りでふらっと立ち寄った先に見慣れた看板があるもんだから、これはどういう事だと思ってな。なるほど、本店に繋がってんのかここ。道理でひろい訳だ。

(ニッ、と人懐っこい笑みを見せて笑いかけ)愛想ってお前、今の方がよっぽどいい印象だぜ。緊張しすぎなんじゃねぇの？

ご明察の通り、俺もあの人の拾い物さ。此処で住み込みで働かせてもらってる。

店…っていうか入り口自体は元からあったんだがな、最近は綺麗に入り口を整えて宣伝してんのさ。あの人は空間を弄る魔術を使えるらしくてな。学の無い俺にはとんと見当がつかんが曰く、混沌に目を付けられない様に調整と制限をしてるらしい。

こう見えて支部長の肩書きがあるんでね、多少の取り繕いは必要なのさ。(肩を竦める)

まぁ、自ら望んで飼い慣らされそうなタイプじゃなさそうだと思ったからな。

いかにもあの人らしいが、そうか。根元は同じ店……。道理で既視感のある通りもあった訳だ。全部じゃねぇあたり、俺もまだまだ店の全貌がわかってねぇって事だけどな。

何だ俺よりお偉いさんかよ。商人の旦那に世話んなり始めて何年だ？

そこまででも無ぇぜ？少なくとも、ここで働いてりゃ生活に困ることは無いし美味しい思いもできるからな。……イレギュラーズなんてもんになったせいで、最近はあの人から依頼に行くように命じられるようになったが。

お偉いさんっつっても、要はあの人の使いっ走りには変わりないがね。何年だったか……10年まではいかねえが2、3年では無いくらいだな。

まーな。これほどの高待遇な職場はそうそうねぇしなぁ。同僚が海に沈められる光景が無いってだけで最高だ(割とマジ顔)波はあるが、武器商人の旦那が命がけで挑んでる依頼もあるからな。大規模な奴は俺も参加してる。いずれ俺達に降りかかる火の粉だ、一人でも多く、同時に解決しに向かった方がいい。

俺より長そうだなー。初めて見た顔だが。まぁ旦那ほどの人となるとよく分からん人脈を沢山持ってそうだが。

そりゃ同感。同僚の眉間に風穴が空かないのもな。

あー、まあ思ったよりデカいからなあのギルド。俺は俺でここ数年、勉強と称してあちこち走らされてたからよ。

お前さんも拾われる前は随分やばいヤマに関わってたんだな……。

そうか。通りで見覚えがあるような無いようなってあやふやな記憶しか無かった訳だ。
何はともあれ、気張れよ。こっから特異運命座標が海を越えて色んな国に通じるほど、海洋は賑やかになんだろ。

スラム出身のガキが就ける仕事なんざタカが知れてるからな。なぁに、給料分の働きはするさ。

貴族生まれのガキも同じ職場だったりするけどな。……さて、やる気の以蔵支部長の気合いを削いじまう前に、俺は大人しく退散するか。
オープンの時期に祝いそびれちまったし、次来る時は祝い花代わりに何か用意しとく。リクエストはあるか？

だいたいそういうのは訳ありのガキか…家ごとやばいかだな。お、なんかくれるのか？だったらその金をたっぷりギルドに落としてってくれ。

どっちも正解だったりするんだよなぁ。（予想外のリクエストにきょとんとして）商売上手だなー。自分の店で買うのも不思議な話だが、たまにはいいか。（ちょいちょいと商品を集めて手に取りお会計）

へへ、ありがとさん。売り上げが伸びりゃ支部長の面目も保てるってもんだ。
(ギルドメンバーの商人が会計するのを眺めながら、ニッと笑って煙草の箱を弄る)

こっちの方での売り上げはどうだ？（会計を済ませた後、ふと思い出したように問いかけて）俺の実家は一応、商売もやってたから、少し古いが羽振りの良さそうな顧客のリストなんかも渡せるぜ。

悪くはねーが本店ほどじゃねーかもな。ミモザの姉さんのパーリッシュフェアリーが主戦力だが何分まだまだ新規のブランドだからな。顧客のリストがあるなら助かる。