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March Hareの庭園

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<災い転じて福となす……?>

アリス(迷い子)が不思議の国で出会ったイカレ帽子屋がお茶会をしていたのは、同じく狂った三月うさぎの庭だったという。
「それなら三月うさぎてゃんのとこにも、愛しの彼の方が来ないとおかしくないですか?! 」
情報収集用の端末を手にしながらそんな妄言を吐くのは、マッドハッターの同担拒否リアコ枠三月うさぎてゃんこと『お茶会は毎日終わらない』有栖川 卯月(p3p008551)。
この女、先ほど愛しの彼の方こと『Dr.』マッドハッター(p3n000088)が主催する十数名限定お茶会(実質のファンミとは卯月談)の当落結果が出たばかりなのだ。厳選なる抽選の結果、お席がご用意されなかった彼女は、どうあがいてもどん底な気持ちを、少しでも上げるために持っている服の中でも一等お気に入りの服を着て、めったに使わない最高に可愛いがお値段は可愛くないティーセットに、最近通っている隠れ家カフェのオーナーに特別にもらった茶葉、手作りしたスコーンとジャムで一人のお茶会を開いていた。
「本来なら勝利の美酒ならぬ、当選の美茶に酔いしれるはずだったのになぁ。」
三度の飯よりもお茶とお茶会が好きなお茶狂い、かつマッドハッターの愛人枠を自称する彼女からしたら喉から手が出るほど欲しかったチケットなのだ。少しくらいぼやいたって誰も文句は言わないだろう。
それはそうとして一人しかいないのだから気にする必要はないのだが、端末を持ったままではお行儀が悪い。それに私的マナー的にも、よろしくないので、端末を置いて一人きりのお茶会を楽しもうとしたその時。ピロン、と聞きなれた通知音が響く。固定枠の子からの慰め返信でも来たかなと、SNSを立ち上げ、通知を見る。その瞬間彼女の脳内は真っ白になった。
「はっ? えっまってほしい。顔面がいい。」
彼女の目に飛び込んできたのは、新グッズであろうティーセットを使い、お茶会をしている愛しき人の姿。それも【1人でお茶会をしているアリスたちへ】という文。いや彼女はアリスではないと自認しているが、大事なのはそこではない。その文が今の彼女と状況がまったく同じなことが問題なのだ。
これで沸かないオタクがいるだろうか、いやいない。
あぁ、なんということだろう。彼がいまお茶会をしているのかはこの際どうでもいい。間違いなく私信だと惚気鍵アカウントでつぶやく。同じく惚気垢でつながってる固定枠の子たちからの祝福の声に一つ一つありがとうと返信していると、今度は運営のアカウントからのアナウンスがある。やはりティーセットは新グッズで、とあるブランドとコラボする受注生産品なのだという。
こうしてはいられない。すっかり冷めてしまった紅茶も飲み干して、彼女はギルド・ローレットに急ぐ。
不本意な臨時収入もあったことだし、それにプラスしてなんかいい感じの依頼でも受けて、もっと稼いで貢がなきゃ。恋するオタク(乙女)にはお金がかかるのだ!

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