本に入り込んでストーリーを追体験しながら出てきた夜妖を消しゴムで消す、ですか。手間のかかる方法ですね。
手間のかかる方法ですが、本に込められた想いを考えれば、安易に本ごと処分というのも難しいのでしょう。
それで、私はこの薄い……小説ですか？
こちらに入ればよろしいのですね。


同人誌
『かつての勇者が魔王になるまでの反英雄譚。
勇者の快進撃をよく思わない別の勇者が周囲を扇動して暴徒と化し、勇者が育った村を蹂躙するシーン。勇者の育った家を守るために両親と幼馴染の少女が戦い、そして死ぬ』


なるほど、私はモブの村人となっているわけですね。この地で抗い、倒れ、勇者の心に影を落とす引き金となれ、と。
そういう事では仕方がありませんね。モブの役割を得た以上は、全力で抵抗しましょう。話が進めば夜妖は出てくるはずですので、登場人物に攻撃して勇者の家や両親、幼馴染を守りましょうか。
彼らを守ることでの悪影響などは聞いておりませんでしたし――虚構とはいえこの悪意を、見過ごして帰れるほどには人間ができていませんので。

集まっている有象無象の敵は【眩術紫雲】にて薙ぎ払い、扇動していたロクデナシの勇者は【瞳法毒眼竜】と【檻術空棺】で討ち果たしましょう。
夜妖を消してもしばらくは滞在できるようですから、本物の勇者がここに来るまで持ちこたえたいですね。来るかどうかは分かりませんが。

ああ、夜妖ですか。さっき消しゴムをかけておきました。

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