●特異運命座標と不思議な絵
「わりぃ、ちょっと出がけにトラブルがあってな」
護衛の依頼主であるベルナルド=ヴァレンティーノが待ち合わせの場所に現れたのは、約束の時間から20分も後の事だった。ここへ来る前に描いていた絵画のラフが上手く仕上がらず、煮詰まっていたのだという。
「ローレットの依頼を引き受ける時は、真面目にやってるんだがな。
自分が依頼する側だと、つい気が緩んじまう」
ガジガジと頭を掻く中年男性ーーベルナルドは、画家であると同時に、ローレット所属の特異運命座標である。
そんな彼が貴方に護衛を依頼したのは、幻想国のとある街から画家づたいに広がった、妙な噂を確認するためだ。
ーーコバルト美術館には"未来が見える絵画"があるというーー
眉唾な話ではあるが、今までローレットが受けた依頼の中には『魔物になった絵画』だの『呪いを振り撒く絵画』だの、厄介な絵にまつわる依頼が舞い込んできた事もあった。
大事にならない代物なら構わないが、危険な物なら対処したい……というのがベルナルドの要望である。
「絵の調査は俺がやる。お前さんにはその間、厄介な事が起こらないか見張ってて欲しいんだ」
調査に向いたスキルがあるなら手伝ってくれてもいいが、と笑いながらベルナルドは貴方と共に美術館の入口を潜るーー