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公認設定一覧

イサベル・セペダが公開している公認設定の一覧です。


見出したるは(全員に公開)
元はヴィーザル地方との境に領土を持つ良家の出。
しかし己の身体的特徴及び戦闘能力の低さ(様々な戦術を習ってはいたが、どれも非常に伸び悩んでいた)から、彼女の扱いは決してよいものではなかった。

「強くなければ物を言う資格はない。楽しみに興じることも、喜びの享受も許されない。弱いお前は生きるに値しない」

両親は揃ってそう言った。長い小競り合いへの鬱憤、帝都への不満や劣等感、強さを誇りに思う鉄騎の血が彼らにそう言わせたのかもしれなかったが、彼女には関係のないことだった。

雪の降る実家の鍛錬場で、ただ彼女は痛みに耐えて考えた。
生きる価値がないならば、死なせて欲しい。
彼女にとっては、死さえも施されるものだった。
(300文字)
見出したるは-2(全員に公開)
一つ目の罅が入ったのは、機を見誤った両親が徒に兵站線を伸ばした挙句、峡湾の程近くで戦死したと聞かされた、その日であった。

彼女にその報を齎したのは、入れ違いに両親の領地を蹂躙せしめた者たちであった。

功を焦った両親の命で、守備の兵までも減らされていた。
兵の指揮権など元より与えられていなかった彼女は、その日も独り、歯車の如き鍛錬を続けていた。他にやれることがなかった。

彼らが何者であったか、彼女はよく知らない。どうでもよいことだった。
漂う血脂の匂いに、彼女が思ったことは一つだ。

これで漸く死ねる。

だが戦わぬ彼女に、敵であるはずの彼らが投げたのは侮蔑だった。
「己の強さに誇りのない者など、殺す価値さえない」
(300文字)
見出したるは-3(全員に公開)
強さ?
自分にそんなものがあったことなど一度もない。
誰もがそう言った。自分自身でさえもそう思っていた。
ならば己に誇りなどあるはずがない。

『それ』がなければ、自分は死ぬことさえも許されぬのか。

そうは思えども、形にはならなかった。思考から言葉を紡ぐ方法を既に忘れていた。
いずれにせよ、弱い彼女は彼らに無視された。とは言え城は追い出された。当たり前だったので文句はなかった。
使用人や兵、街の者たちはとっくに死んでいた。転がる骸が、ただ漠然と、羨ましかった。

生きる価値もない。
死ぬ価値もない。

では、自分はどうしたらいい?
どう生きて死ねばいい?
わからないのだ――本当に。

頭の奥で、何かの軋むような音が響いていた。
(300文字)
見出したるは-4(全員に公開)
第二の罅が入ったのは、それから少し後になる。

追い出されたからという理由だけで歩き始めた彼女が行き倒れるのに、そう時間はかからなかった。
行くあてなどあるはずがない。探せば縁戚の者を頼れたのかもしれないが、生憎そういった知恵を彼女は持ち合わせていなかった。

彼女はただ、一見自由と称せ得る、無意味で不要な何かを手に入れたに過ぎなかった。

尤も、頼ったところで、様々な理由により門前払いではあったのだが。

簡素な鍛錬着に、安い片手剣と長銃。
それだけが彼女の手に残ったものだった。

雪降る道に倒れ伏し、指先さえも動かせなくなって初めて、「こういう死に方もあったのか」と知った。
感じたのは安堵だった。彼女は目を閉じた。
(300文字)
見出したるは-5(全員に公開)
結論から言えば、彼女は死に損なった。通りがかった女に助けられたのだった。
女は屈強な男たちを連れており、ラサの商人だと名乗った。
どうやら、女は人間種で、男たちは獣種であるようだった。

母や城の者とは違う類の女だった。獅子のような女だ、というのが彼女の抱いた印象だったし、その印象は、今でもおそらく変わってはいない。
名を訊かれたので、答えた。女商人は、ふうん、と言って目を細めただけだった。

「この先の街はどうなってる?」という質問には、皆死んだと答えた。女商人はため息を吐いて、無駄足だった、と、夜闇に赤々と燃える野営の焚火を前に渋面を作った。
その日はそれで終わり、冬の夜は長く、眠りは死には遠く短かった。
(300文字)
見出したるは-6(全員に公開)
明くる日、女商人は、武器を持っている以上戦いの心得があるのだろうと問うた。

これには、些か曖昧な返事をする他なかった。

戦力が欲しいのかと思い、己の弱さは伝えたものの無視され、男たちの一人と戦ってみろと命じられた。拒否など思いもつかず、大人しく従い、案の定負けた。

恐ろしく無様な負け方だった。
どんな戦法で何戦しても変わりはなかった。

疲れ果てて地に倒れ、頭を垂れたまま彼女は痛罵を待っていた。それが両親や師の常だったからだ。
だが、投げられたのは、「お前、狙いをつけるのが人より苦手なんだな」という言葉だけだった。

「どんな凡才だろうが、一捻り加えればそれなりにはなるさ」

そうして女商人は、彼女を商隊へ加えた。
(300文字)
見出したるは-7(全員に公開)
狙えないなら当たる距離まで意地でも近付いて殴れ。
無理そうなら味方を巻き込んでもいいから掃射しろ。
お前程度の弾を避けられないトロいやつのこたぁ考えるな。

そんなことを、彼女は復路にて執拗に教えられた。確かに、手の届く距離に敵がいるのも、敵味方を考えず撃つのも、ひどく楽だった。だからと言って、突然見違えるほど強くなる、などということは決してなかったが。

やがて女商人が戻ったのは、モリブデンの片隅に作られた、小さな娼館だった。「用心棒がてらここに住んでろ」と言いつけられたので彼女は諾々と従った。

女商人はどこかへ行ってしまった。暫く帰らないということだった。それについて、彼女が何かを考えることはなかった。
(300文字)
設定中鉄帝嫌い(全員に公開)
鉄帝出身だが、鉄帝の気風を好かない。というよりも最早憎んでさえいる。己に流れるそれも好いてはいない。が、『それが私の魂なのだ』と、頭のどこかが叫び続ける。

弱きを捨てて強きを目指すはそれほどよいものなのでしょうか。かつて私は弱かった。そのために耐えて耐えて耐えて――踏み躙られました。だから踏み躙りました。笑顔は強者の特権なのだとかつて誰かが言いました。あるいは狂者の。

だから――私は今やただ、己の死を望むだけの、狂った犬です。
何も見ない。聞かない。言わない。笑い狂う犬なのです。
狂っていれば、笑うことを許されるのならば。
私もそれに為ればいい。

「うふふ、私、あの国がとても好きではないのですよ。実はね」
(300文字)

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