クエスト
闘技場設定は『練習場』から!
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想起セシ熱砂ノ恋心現在報酬:基礎EXP24%、最新闇市アイテム×1
●それは、きっと『貴方』がいたならの物語
夢だ。
きっと夢なのだろう。
今もって叶わぬ夢。遠い過去に定まってしまった結末。
起きれば消える泡沫は、目覚めれば解けて消えてしまう蜃気楼のようなものに違いあるまい。
それでも、貴方は夢を見る。
僅かばかりのまどろみの中、不具合だらけの世界の片隅で。
有り得たかも知れない物語の一ページをめくるのは、特異運命座標(イレギュラーズ)のみに許された特権だから。
――ノイズが満ちる。そう、貴方は今、遥かな過去さえ追憶するのだ――
走っていた。
夜の砂漠。晴れ晴れとし灼熱が支配する昼と一転して、極寒へと変貌するのが砂漠の気候だ。
星は見えども月は雲に隠れている薄暗き中で『彼女』は脇目も振らずソコを駆ける。
息が白い。胸が苦しい。だがそれは――周囲の冷気が原因ではなく――
「――ッ!」
瞬間。足が砂に取られて思わずその身を滑らせる。
粒子の波に頭から。軽い砂煙が立ちて……しかし柔らかであったために痛みはない。
ただしそれは外傷的な意味では、であって。
「はぁ、はぁ……ッ」
彼女は深緑の幻想種――その名を、カノン・フル・フォーレ。
『ファルカウの巫女』の妹であり、自身も優秀な魔道の才を持つ者である。
しかし深緑で『とある場面』を目撃してしまい……思わずファルカウを跳び出してしまった次第だ。
ここまで無我夢中で駆けて来た。今己がどこにいるか――分かっていない。
分かるのは深緑の外であるという事。今まで碌に出た事無かった外であり、つまり。
「……あの人の、故郷の近く……」
上半身だけを起こす。立つ気力が湧かないのだ。
ああ冷静になれば知識としては分かる。この視界の端まで広がっている砂漠地帯は……深緑に紛れ込んだ『旅の者』が語った外の世界だ。殺風景で、生命の気配を感じないつまらない土地――
しかし深緑とマトモに繋がる土地はここぐらいであり、跳び出すならここしかなく。
「う……ぐっ……」
胸が痛い。胸が痛い――それは先程転んだ影響ではなく。
深緑で見た光景が脳内で何度も再生されるからだ。
疲れる程に駆けた身ですら、あの光景だけは焼き付いている。
いやだ――やめて――なんで――どうして――
「……!!」
頭を振り、なんとか思考を消そうとする。考えれば考える程に己を蝕んで。
……とにかく移動しよう。どこへ、などと考えてはいないがどこでもいい。
深緑から離れよう――でなければ――私は――
「ンッふっふ――これは可愛らしいお嬢さんだ」
と、瞬間。カノンへと降り注がれる言葉があった。
砂漠用の馬車だ。いつの間に近くに――と思ったが、自身の注意が散漫になっていただけか。
馬車から一人、何者かが言葉と共に現れて。
「……誰? なんの用ですか?」
「幻想種とは珍しい。こんな砂漠の地をしかも一人でとは……家出ですかなぁ悪い子だ」
「――貴方には関係ないでしょう」
背筋を撫でるような、どことなく『気持ちが悪い』その声色に。
カノンは吐き捨てる様に言い放つ。
……だが、なんだ? なんだろうかこの感覚は。息が荒れる、呼吸が乱れる。何かが『重い』
「ッ、貴方何者……!?」
即座。立ち上がり姿勢を整え、警戒の色をカノンは目に灯した。
分からない。分からないが、なぜか不安だけが増していく。心に広がるその感情は淀んでいて。
この『男』に近寄ってはならないと。今すぐ離れろと己の本能が叫んでいる……!
「ンッふっふ。勘も宜しい、しかしまぁ……すぐに逃げなかった時点でもう駄目ですなぁ」
瞬間。動く男、魔術を高速で紡ぎ上げたカノン。
それらはほぼ同時にして、されど。
ほんの微か。開いていた距離の有利でカノンの魔術の刃が――男の首を抉るに一手早く――
「んっ――ぐッ!?」
だが。
「んむむ~素早い上に大した魔道だ……
だがしかしなんとまぁ、あまりにも若い! 私の様なモノとの戦いは経験がないかな?」
男は。首の右筋を半分抉られても尚――何のことも無さげの様に生きていた。
締められるカノンの首。呪文が紡げず、更には驚異的な力で締め上げられれば窒息状態に陥って。
(そんな……事が……!?)
思考する。視線を奴の首元に向ければ、確かに抉っているのに。確実な致命傷なのに。
何の痛みも無さそうに振舞っている。
あり得ない――人の形なのに生物とは思えない――いやまさかコレは『人間では』――ッ!!
「あっ!?」
直後。地に叩きつけられ、間髪入れずに首に何か冷たい感触が走る。それは。
「ンッふっふ。そろそろ『砂の都』を離れて世界を股に遊び惚けようとでも思っていた所だったのですよ。
いやぁこれはいい戦利品が手に入った。最後の商売で一際大儲け出来そうだ」
首輪。カノンは知らなかったがそれは『グリムルート』なる奴隷用の首輪で。
対象の意思を奪い、主人の命令に絶対服従をさせる支配の権化。
「あ、ゃ、いや……!」
外れない。外れない。術は紡げず、素手では壊せず。
自らの内にある魔力を溢れさせる形でなんとか支配に抗う、が。
「おぉ? 先の魔道から只者ではないと思っていましたがそこまで抗えるのですか。
これは血統宜しい良い所のお嬢さんですな? さぁでは頑張ってごらんなさい!」
所詮只の時間稼ぎにしかなっていなかった。
段々と『逆らおう』という気概が失われていく。焦っているのに力が出せない。
「やだ……やだ……ッ!」
首輪を揺らす。金属音を響かせて、しかし無意味だ。
どうして。どうしてこんな事に、どうして?
あの人は、外の世界を楽し気に語ってくれたのに。
嘘だったのか? もしかして私を騙す為に――あの人は――
「――!!」
涙が溢れる。我慢したくても、目の奥の熱が取れなくて。
「……けてっ」
だから。
「助けて、誰か……!」
目を閉じて求めるのだ。もし嘘をついていないのなら――
お願い。
誰か、助けて――と。
『だから』
「――ぬっ!?」
瞬間。視界を閉じたカノンが感じたのは『何』だったのか。
気持ちの悪い気配がほんの少し遠のく。飛び跳ねる様な、音と共に。
「えっ……?」
人だ。人がいる。己の前面に。『男』が近寄れぬ様に立ち塞がる形で。
嘘だ。さっきまで周囲には馬車ぐらいしかなかったのに、一体どこから。
「……ンッふっふ。誰ですかな貴方達は? 気配を感じませんでしたが……さて?」
そう感じたのは『男』もそうだったようで、尋ねたが。
「――――」
声が聞こえない。掠れる様な程度にしか『この世、この時間に響かず』
しかし意思は確かに感じた。
この人は。
「助けて――くれるの?」
ほんの微か、涙ぐんだ声。
返事は、やっぱり聞こえなかったが。
武器を構える音が全ての答えを示していた。
クエスト詳細
このクエストは『高難易度クエスト』です。
『死牡丹遊戯・再』よりは組みしやすい難易度と想定していますが
ご参加の際は予めご了承くださいませ。
■???
――正体不明――
幻想種を売り捌く者。その名は……
■幻想種狩り×3人
奴隷売買専門の傭兵。
全員近接型。それなり程度の攻撃力を持つ。
■カノン・フル・フォーレ(味方NPC)
とある幻想種。
奴隷用の首輪『グリムルート』を装着され、能力や動きに大幅な制限が掛かっている。
それでも30%の確率で場にいる味方陣営に対し治癒魔法による支援を行う。