冒険
闘技場設定は『練習場』から!
山梔子館の秘密
生真面目なイレギュラーズであれば、冒険者ギルド『ローレット』の依頼書が並ぶ掲示板へ足繁く通うだろう。さてサルヴェナーズ・ザラスシュティの場合はどうか。
ともあれ、集まった一行は飲み物を前に卓を囲み、幻想にある小さな町『アーテル』からの依頼書について、情報屋から話を聞いていた。
なんでも町近くの森に、かつて魔法使いが住んでいたという館があるのだという。
名は大層にも山梔子館と呼ばれている。いま無人の廃墟だという話だ。
依頼内容自体は、この森の館を調査し、危険があれば排除してほしいというものらしい。
なぜそんな依頼が必要になったのか。
まず特筆すべき情報として、町では最近、三名の住人が行方不明になっているそうだ。
初めの一人は薬草売りの男。
お次の一人は狩人の男。
最後の一人は真相を確かめると意気込んで、館に向かった若者。
この三名の消息が知れない。
地元の衛視が調査中だというが、未だ真相は分からない。
なんらかの事故か、あるいは近隣に出没した魔物の仕業か何かという線で調査を進めているようだ。
そちらの話は一端脇へ置いて、本題の続きといこう。
最後の一名は明確に館へ向かっており、町ではこれはいよいよ本物だという話になった。
町の人々は、おそらく館に悪い物が住み着き、三人は犠牲になったのではないかと考えているようだ。
もしも生きていれば、そして発見出来たならば救出すべきだが、そんな話であるならば残念ながら望みは薄いだろう。それに本件と、本当に関連があるかどうかはまだ分からない。
さて、踏み込むことになるのは仮にも魔法使いの館である。
情報屋の言う通り、なんらかの準備をしておいたほうが良いだろう。
たとえば罠があれば対処出来るような。
それと、他にも頼ることの出来るものがあるかもしれない。
捜索を確実にするなら、たとえば嗅覚だとか。いやなんとなくそう思っただけなのだが。それとも、さすがに考えすぎだろうか。
ともあれ、あらかたの情報を聞いた一行は、アーテルの町へと向かったのである。
参加者一覧 | |
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サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720) 砂漠の蛇 |
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アクア・サンシャイン(p3p000041) トキシック・スパイクス |
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アムル・ウル・アラム(p3p009613) 夜を歩む |
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袋小路・窮鼠(p3p009397) 座右の銘は下克上 |
探索記録
町に到着した一行は、町長からもう一度、事件についての説明を受けた。
そして館までの案内役は一人の老人が買って出てくれた。
「へっへっへ。ワシはドゲスと申します」
背の低い老人で、どこか卑屈そうな笑みを浮かべている。
あまり人好きのするタイプではないが、ずいぶんおしゃべりだ。
道中、森の中でもずいぶんと賑やかだった。
「館には霊が出るという噂もありましてな」
廃墟に亡霊というのは、おおかた壊れた屋根あたりを風が吹き抜け、なんだか可笑しな音を奏でるといった話に落ち着くのが相場である。
とはいえ実害らしきが出ている以上は、実際に何か居るとみるのが妥当だろう。
仮に賊のアジトであれば、町への影響はもう少し変わった形になるに違いない。
ならば魔獣が人里近くに住み着いたとか、あるいは本当に霊――アンデッドモンスターという線もある。
「あの日はちょうど雨でした。それで狩人のジェムソンは、雨宿りでもしようと思ったんでしょうな」
それにしても、やけに饒舌な老人だ。
ずいぶん、見てきたように言うではないか。
そもそも町の人が行方不明になっているというのに、おびえのようなものをまるで感じない。
それに、『ジェムソン』だとか。名前も知る間柄であろうに、なんだか薄情ではないか。
ただのほら吹き屋か、あるいは……
「見えましたぞ。あちらが例の館になります」
一行の眼前に姿を見せたのは、薄汚れた屋敷であった。
かつては山梔子の木も見事な、美しい館だったというが、今ではご覧の有り様だ。
みすぼらしく蔦が絡まり、見るからにそれらしい。
「例の。霊だけに」
下らないジョークは聞かなかったことにして、イレギュラーズは館の入り口を探した。
古びた扉を開けると、そこは意外にも小綺麗な空間だった。
人工的な明かり――魔法の光が灯った室内には、埃一つ落ちていない。
振り返れば、朽ちたように見えていた扉も、ずいぶん綺麗なものだった。
「いやあ、綺麗なものですな」
ついてきたのか、爺さん。
とはいえ外で待たせるのも危険かもしれない。
足手まといになってもらっては厄介だが。ひとまず後ろをついてくるように促した。
しかしなるほど、魔法使いの館らしい。
警護用の怪物が動き出したではないか。
危険物の排除も依頼内容の内だった。ひとまず片付けるとしよう。
中々の相手ではあったが、ざっとこんなものだ。
だが行方不明者の痕跡は発見出来なかった。
「食われてしまったのではないでしょうかな?」
壊れるまで動くような、人工の魔法生物が?
掃除されたという線も捨てがたいとはいえ。
戦闘に勝利した一行は、手始めに館の一階を探索開始した。
そこは食堂や炊事場に応接室など、意外にも生活感のある空間だった。
ここは嗅覚に頼ってみるか。
けれどおかしい。やけに新しい飲食物の気配がある。
ほんの微かだが、なんというか。残り香を感じるのだ。
水だって妙に新鮮だと思える。まるで昨日今日、井戸から汲み上げたような。
ここは長らく無人の館ではなかったのか。
「どうかされましたかな?」
思えばこの老人も、怪しいものである。
疑い始めればきりがないが、さて。
今は調査を継続しよう。
一階の調査をあらかた終えた一行は、続いて二階の調査を開始した。
再び頼りになりそうなのは、意外にも嗅覚だった。
気付いた。違和感の正体に。
寝具などから微かに感じる『におい』は、この老人――ドゲスと同じものだ。
毎日という訳ではない。おそらく『たまに』だろう。
この老人は、ここで寝泊まりすることがあるのは確実そうなのだ。
「ここには、もうなにもないのでは?」
ドゲスがどこか落ち着かない様子で問うてくる。
ここまできて、とぼける気か。
だがいいだろう。今は泳がせておくべきだ。
最後は大本命、地下室である。
魔術師の館というからには、こうした場所に秘密があるに決まっているものだ。
一行は最後に、地下室へと足を踏み入れた。
そこはたしかに、研究室のようだった。
いくらかの魔道書や魔道具、魔方陣を描くためのスペースなどが存在している。
書籍を手に取りパラパラとめくれば、なるほど。不老の研究か。よくあるものだ。
なんでも人の命を犠牲にするとか、たちのわるい呪術の類いであろう。
――だが、それだけだ。
何の変哲もない『魔法使いの部屋』としか思えない。
ドゲス老人はというと、なにやら壁を背に落ち着かない様子ではあった。
しかしそれ以上の手がかりは見当たらない。
手がかりは見当たらないと、そう思えた。
思えはしたのだが。
老人に、壁の所から退いてもらう。
手をあてると、微かな隙間風を感じるではないか。
「な、なにもないように見えますがな」
ドゲスはそう言うが、丹念に調べていくと――見つけた。
壁に隠れたスイッチを押すと、石壁が開き隠し通路が現れたではないか。
「ちょ、ちょっと。こういう先は危ないのではありませんかな」
慌てた様子でしきりに危険を訴える老人だったが、「それを排除するのが仕事だ」と告げる。
そろそろ良い頃合いだろうか。
いい加減に吐いて貰おう。この老人が何をしているのかを。
イレギュラーズは老人に詰め寄ると、問いただす。
この隠し扉の奥に、今回の行方不明者が居るのではないかと。
「クッ、かくなる上は!」
ドゲスの行動は唐突だった。
なにやら小瓶をつかみ取り、魔方陣に叩き付けようとするが――
しかし老人を疑い、油断なく構えていた一行にあえなく捕縛されてしまう。
「ぐっ、離せ、離さんか! そうだここで引き返せば金をやろう。どうだ!」
そうまでして見られたくないものが、あの奥にあるということか。
喚き続けるドゲスを縛り上げた一行は、あれこれ尋ねながら、隠し通路の奥にある小部屋へと進んだ。
するとそこには牢があり、三名の人々が憔悴しきった表情でうな垂れているではないか。
「な、なんだお前等は」
「た、たすけてくれ」
力なく訴える人々へ、館にあった『なぜか新鮮な水』などを手渡す。
こうして一行は行方不明者を無事に連れ帰り、ドゲスを町の衛兵に突き出した。
今頃は衛視の元で、もう一度、洗いざらいを吐かされているに違いない。
――顛末はこうだ。
忍び込んだ老人ドゲスは、魔術をかじっていた。
偶然にもこの古い館へ忍び込んだ老人は、不老の研究とやらを読んだ。
そして試してみたくなったのだろう。
館の魔物をあやつり、近くを訪れた人を連れ込んだのだ。
だが町からローレットへ依頼が出されてしまった。
有名な冒険者ギルドである。真相を暴かれてしまうかもしれない。
そこでドゲスは、証拠隠滅のために案内人を買って出たという訳である。
なんともお粗末な話だが、ドゲスは収監されることになった。
これにて一件落着だ。行方不明になった者達も、無事で良かった。
町を発つ時、救出した人達と町長には丁寧にお礼をされたのだった。
挑戦結果
こうして一つの冒険が幕を下ろしたのであった。
戦績
攻略状況:攻略成功!