PandoraPartyProject

冒険

闘技場設定は『練習場』から!


永遠の町へようこそ。

 ――永遠の町へようこそ。
 この町を訪れた者が、衛視に聞く言葉がそれだ。

 小さな、そして辺鄙な町である。
 一行はまず、石造りの門をくぐり抜けると、大通りへ足を踏み入れた。
 石畳の両端に並ぶのは様々な商店であり、ほどなく中央のマーケットへたどり着く。
 何の変哲もない、ただの田舎町である。
 街道に沿っている訳でもない。近隣の村落から特産品が集まるでもない。
 ならばこの町は、いかにして成立しているのか。
 それも、こんな大仰な名前をして。

 話を続ける前に、まずは依頼内容についておさらいせねばなるまい。
 一行が受けた依頼は、あろうことか『永遠を終わらせること』であった。

 町は小さいながらも、活気に満ちて見える。
 例えば――あちらでおしゃべりしながら歩く若者達は、その手に肉を挟んだパンを持っていた。
 そっちのご婦人は、店内で美しく織られた布を品定めしている。
 聞こえてくる怒鳴り声ほども大きな声は、八百屋の店主が値引きを始めた合図だ。

参加者一覧
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌

探索記録

 どこもかしこも盛況だ。

 そう見える。

 そうあれかし。

 ――そうであるならば、本当に良かった。

 実のところ、町の全ては、まやかしだ。
 手を触れると、するりとすり抜けてしまう。
 夢か、幻か。
 情報屋の調査によれば、この町は――とっくの昔に滅びているらしい。

 声は聞こえる。姿は見える。
 しかし触れることも出来ず、においも感じない。
 旅の武芸者が語るように『見えるものが全てではない』などとも言うが。
 いや、今回の場合は少し違うか。
 この町の特色とは、一体何であるのか――
 幻想(この国)に詳しい者ならば気付くかもしれない。鉄材を加工する工場(こうば)が散見される。
 鉄資源にあまり恵まれない幻想にあって、近くの村で多少の屑鉄が採れたのが、この町の強みだった。

 ともかく一行は、目的地へと足を進めた。
 案の定と言うべきか、情報屋の言葉通りと言うべきか。
 姿を見せたのは魔物だ。
 手早く打破し、浄化してやろう。


 短い祈りを終えた一行は、町の中央へと向かう。
 そこは商工ギルドであった。
 難しい表情で会議する老人達――その幻影を一瞥して、一行は二階のギルド長室へ踏み入った。
 そこでは一人の老婆――ギルド長ミグラ・マーティスが、一枚の紙を眺めて涙を流しているではないか。
 内容は王都に居る孫娘が勉学に励むだけの、非常に日常的で他愛もないものだ。


 最後の仕事を始める前に、依頼主について語ろう。
 メリエル・マーティスはギルド長の孫娘である。
 この町は二十年ほど前に滅びている。
 原因は鉱山から噴出した毒ガスだ。
 当時メリエルは王都の学院におり、難を逃れた。
 そして幼い頃から親しんだ、何もかも全てを失ったのを知ったのである。

 原因が原因であるゆえに、長らく立ち入ることも出来なかった地域だが、最近の調査でようやく空気に問題がなくなったことが分かったらしい。
 ところが、だ。
 調査隊が町へ踏み入った際に見た者が、この光景だ。
 町がそのまま、幻のようになっていたのである。
 ただ一つ違っていたのは、カルサスの町という名が、永遠の町という名に変わっていたことだった。

 当時、町にもたらされる鉄資源は徐々に底をついていた。
 近い将来、町が衰退することは誰の目にも明らかだったのだ。
 そして――勉学に勤しむ町一番の秀才メリエルの肩に、町の存亡がかかっていたのである。
 残念ながらメリエルは天才に及ばなかった。
 生真面目が取り柄の彼女は、それでも懸命に食いついていた。
 けれど町の将来を担う社会研究は、遅々として進んでいなかったのだ。

 ならば『せめて今のままで』。
 願い叶うまで永遠に――
 メリエルのために。

 それが町の人達の願いだったという訳だ。
 一瞬にして失われた命の輝きが、この幻を形作ったのだろう。
 けれど弔わることの無かった魂達は、この幸せな幻影の中で彷徨い続けているという訳だ。

挑戦結果

 だめだ。思いの外、敵が強力だ。
 出直す他ないだろう。撤退するしかない。
 一行は無念の思いで町を後にした。

戦績

攻略状況:攻略失敗…(撤退)

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