冒険
闘技場設定は『練習場』から!
にゃんだふるらいふ
●
様々なの人々が行き交う交差点。
人々はみな忙しく、手元の小さな端末を見ながら、または目的地を目指して素早く足を動かし、沢山の大きなハコに囲まれた街を通り過ぎていく。
――ここは、再現性東京。
大きなハコには、沢山の人や店、会社が詰まっている。所謂雑居ビルというやつだ。宿泊施設の場合もある。
それらが立ち並ぶ中に、可愛らしい看板のついたひとつの店があった。
『癒やしの空間、「にゃんだふるらいふ」
あなたの日々の疲れを、可愛い猫たちが癒やします♡
一時間 ¥1000(にゃんとドリンクバー飲み放題)
ご宿泊 ――………… 』
猫カフェかぁ。今度行ってみようかな。
なんて通り過ぎようとした支佐手は、二度見した。
(『宿泊』って書いてなかった!? 猫ちゃんと一緒に一夜を過ごせるの!?)
そうなんです。(迫真)
このレンタルキャットサービス店は、事情があって猫ちゃんをお家にお迎えできない人々の願望を叶えてくれるお店なのだ。
因みに看板には『会員になると、予約制で意中の猫ちゃんの指名も出来ます(猫ちゃんに嫌われると断られる場合も御座います)』とも書いてあった。マンチカンでもラグドールでもノルウェージャンフォレストキャットでもスコティッシュフォールドでもサイベリアンでもラガマフィンでも……お好みの猫ちゃんと一夜を過ごせちゃう訳である。しかし、会員になるには猫ちゃんに認められなくてはいけない。猫ちゃんからの許可が降りないと、会員にはなれないのだ。
猫好きのあなたは、すぐさま踵を返して帰宅した。
何故かって? 猫ちゃんに合うための身なりを整えるためです。
そうしてしっかりと準備を整えて来店した支佐手は、お店の注意事項にしっかりと目を通すのだった。
【ご来店のお客様へ】
・猫ちゃんたちは気まぐれです
・無理強いをしてはいけません
・つれなくてもご褒美です
(※意訳:全て猫ちゃんの気まぐれによる確率判定です)
シナリオ:壱花
参加者一覧 | |
---|---|
物部 支佐手(p3p009422) 黒蛇 |
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劉・雨泽(p3n000218) 浮草 |
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唯月 清舟(p3p010224) 天を見上げる無頼 |
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リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236) 花でいっぱいの |
探索記録
●ご来店
どんな猫ちゃんでも愛せるし、まだ会員証もない支佐手は『お試しトライアル』(会員証のないお客様のコース)をすることにした。
宿泊準備もばっちりだし、身なりも整えてある。バッチリだ。
好かれるかどうかの不安があるが、つれなくったって勿論ご褒美。同じ空間に存在することが許される幸せに浸れば良いだけである。
「じゃぁ、また明日会おうね」
「えっ、どこへ行くの?」
一緒に来ていた雨泽(p3n000218)は『さも当然』な顔をして、支佐手とは別の部屋へと向かおうとしている。驚いた支佐手は笠の薄布を揺らして背を向けた雨泽へ慌てて声を掛けたのだが――。
「え? 一緒に居るつもりだったの? 嫌だよ」
猫ちゃんとのふたりっきりの時間を邪魔しないでほしい。
雨泽はきっぱりと支佐手にそう告げ、それじゃあまた明日と手を振って去っていった。
何とも言えない気持ちになった支佐手だが、まあ大の猫好きである雨泽ならば仕方がないことだ。
でも大丈夫。支佐手にはまだ仲間たちがいるのだから。
――なんて思っていた時期もありました。
既に仲間たちも居なかった。それぞれ個室で受付を済ませ、支佐手が雨泽の背中を見送っている間に姿を消していたのだった。
そうだよね、皆、猫ちゃんタイムを邪魔されたくないよね。
理解のある支佐手は気持ちを切り替え、指定された部屋へと向かうのだった。
>>だって部屋に行けば猫ちゃんがいる! 其れ以外は些事だよね!<<
●猫ちゃんがいる!
ノックをしたら驚かせてしまうだろうか。
そんな不安を覚えながら、極力ゆっくり静かに扉を開けた。
室内は少し広めのビジネスホテルのようだった。
ビジネスホテルと違う点は、壁にキャットウォークが着いていたり、キャットタワーがあったり、猫ちゃんが遊ぶためのおもちゃが用意され、一人用の部屋でも猫ちゃんが一緒に横になっても余裕のあるダブルベッドになっているところだろうか。
(猫ちゃん、大抵ベッドのど真ん中で寝るもんね)
人は、猫ちゃんの邪魔をしないように身体をくの字にしたり隅っこでIの字になって寝るのだ。
そして、一角には、猫用のドアがある。
(……あ、これ、猫ちゃんに嫌われたら帰られるやつだ……)
猫ちゃんに無理強いは出来ない。猫ちゃんに嫌われたら、ひとり寂しく寝るしかないだろう。
――さて、肝心の猫ちゃんは……。
きょろきょろと探してみれば、キャットタワーの一番上から尾が垂れていた。
支佐手が来たことに気がついたのだろう。寛いでいたところから立ち上がり、んんんっと伸びをする。
美しい毛並みを持つ体は少し大きめで、森の妖精と呼ばれるのが理解できてしまう気品のある顔立ちを有する猫ちゃんは――。
(ノルウェージャンフォレストキャットだ! かわいい!)
●己との戦い
猫ちゃんはいと尊き至高の座(キャットタワー)で可愛いクリームパン(我々の業界では前脚のことを指す)をペロペロしている。支佐手のことなど眼中にない様子だ。
猫ちゃんに触りたい。
猫ちゃんを愛でたい。
すぅはぁすぅはぁと猫ちゃんを吸いたい。
頬ずりして顔中に植毛される喜びに浸りたい。
しかし、駄目だ。それはいけない。
猫ちゃんから距離を詰めてくれている訳ではないのに、そんな愚行を犯してはいけない。猫ちゃんに嫌われてしまう。
倒すべきは己の煩悩である。
支佐手は目を閉じて、己の欲望との長い戦いを始めた――。
――ふう。
大丈夫だ。荒ぶる心は静まった。
●チャンスタイム
これならば猫ちゃんとの正しい付き合いが――んんんん猫ちゃんんんん!?
えっ、どうしたの? スリスリしてくれるの?
ここ何、にゃばくら? いきなりそんなサービスしてくれちゃうの?
幾ら高級猫缶を詰めばいいの?
お触りは大丈夫ですか、猫ちゃん!!!!!!!
「……ふにゃ」
どうやら、性急な支佐手が気に入らなかったようだ。
●ばいばい
猫ちゃんはツンとそっぽを向くと、尻尾をゆらゆらと揺らして歩き出す。
そしてその姿は、猫用のドアの向こうへと消えていった……。
支佐手は一人寂しく、ベッドで丸くなる。
今夜は本当は、このベッドは一人きりじゃなかったはずなんだけどなぁ。
ぐすん。
挑戦結果
●いつかは好かれたい
今回は猫ちゃんに好かれなかった。
けれど猫ちゃんは気まぐれだ。ただ何となく気に入らなかっただけだったり、いつもお世話をしてくれる店員さんの方が好きだったり、今日はそこで寝る気分ではなかったのだろう。何せ猫ちゃんは一週間くらいで寝る場所もコロコロ変えるくらいには気まぐれなのだから。
――けれど、次回こそは。
(猫ちゃんのハートを掴んでみせる!)
支佐手は密やかにぐっと拳を握りしめると再現性東京の雑踏の中へと足を踏み入れた。
待ってて、猫ちゃん! また来るからね!
またのご来店を心よりお待ちしております。
にゃんだふるらいふ
戦績
攻略状況:攻略失敗…(撤退)